#395【ゲスト/心理】うつ症状を改善する「音楽」の力
このnoteは2022年5月17日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日は編集部の寺崎さんと共に「音楽がうつに効く」をテーマにお伝えしていきます。寺崎さん、よろしくお願いいたします。
寺崎:よろしくお願いします。
YouTuberとして人気上昇中の公認心理師
今井:今日もまた素晴らしいゲストに来ていただいているということなんですけれども。
寺崎:はい。公認心理師、音楽療法家の“はもしょう”こと、橋本翔太さんです。
今井:それでは本日のゲストは橋本翔太さんです。橋本さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
橋本:はい。よろしくお願いいたします。皆さん、こんにちは、橋本翔太と申します。
寺崎:ありがとうございます。橋本さんはフォレスト出版から2冊、本を出版されていまして、今回取り上げる本が『聴くだけうつぬけ』っていう本なんですけども、もう1つは『すべてが楽になるピアノレイキ』という、この2冊を出されていまして、最近ではYouTuberとして人気急上昇中ですよね。
橋本:はい。ありがたいことに。
今井:チャンネルの登録者数もぐんぐんと右肩上がりで、コメントの方もすごくたくさんついていらっしゃって、本当に大人気なんだなあと、私もよく拝見させていただいているんですけれども。本日のゲストの橋本翔太さんなんですけれども、まず簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか?
橋本:はい。まず私は公認心理師として心理学とか心理療法をお伝えしたり、そこに加えて音楽を使った音楽療法、それから食事と栄養のアプローチで心のコンディションの改善をしてくっていう栄養療法というのがあるんですけど、その3つの柱を使って皆さんの人生をよくしていくお手伝いをしております。
今井:ありがとうございます。そして今、YouTuberとして人気急上昇中ということなんですけれども、こちらはどのようなチャンネルなんでしょうか?
橋本:はい。こちらは、テーマが「人生リノベーション」ということになっていまして、今お話した心理療法を使って心の色んなことを皆さんに知ってもらう心理学の話、そこに加えて音楽療法ですね。私はピアノを弾くんですけれども、ピアノを使ったワークなんかもあったりとか。そこに加えて栄養療法ですね。食事と栄養によって、具体的に自分自身の心のコンディションをよくしていくために、どんなことをしていったらいいのかっていうのを動画の中でお話しています。3つの柱を使って、皆さんの人生をリノベーションして、人生をよりよくしていきましょうというのが動画のテーマになっております。
寺崎:このチャンネルなんですけども、ある時から登録者数がグーっと伸びた印象なんですけれども、何か工夫されたことってあるんですか?
橋本:いや、これは正直、心当たりがなくてですね。1年前にアップした「受動攻撃(意地悪な人の心理)」というのが、急に再生回数がどんどん増えていったんですよ。で、そこに加えて、「回避性パーソナリティ障害」っていう、傷つくことが怖くて行動できなくなってしまう人たちのお話をアップしたんですが、それも割とバーッと再生回数が上がってバズりまして。何本かの動画がバズったのが1つの原因であるなあっていうことと、あとコメントとかで、なぜこのチャンネルを知ったかっていう話を聞くと、Googleの検索でYouTubeの中で上位にお勧めで挙げてくれたっていうのもあったみたいですし、そこに加えて私の見た目が髭ヅラで腕が太くて、だけどピアノを弾くみたいな。それで突然心理の話を始めるみたいな。「情報量が多いな。このチャンネルは」みたいな。
今井:(笑)。
橋本:そういうのがあって(笑)、「こいつは何なの?」みたいな感じで、気になる人が増えたみたいなんですよ。そういうのもあって、一気に増えてくださったんですかね。
寺崎:なるほど。リスナーの皆さんは音だけなのでわからないと思うんですけど、橋本さんはものすごいマッチョです。
今井:そうですね。ぶら下がることができそうなぐらいの太い腕を持っていらっしゃいます(笑)。
橋本:「筋トレチャンネルかと思って開いたら、心理学の話だった」って言われたり。
寺崎・今井:(笑)。
橋本:でも、それが気になったみたいですよ。心理のお話をする人って、こういうイメージじゃなかったみたいで。そういうのもあるかもしれないですね(笑)。
今井:すごい肉体で繊細なピアノ弾くっていうところにもまた素敵だったりするのかななんて思っております。
橋本:それも言われました。動画を見ていて「お前が弾くんかい!ってツッコミました」って言われたことがあります(笑)。
うつ病と音楽療法
今井:ありがとうございます(笑)。ところで、今回は「音楽がうつに効く」というテーマなんですけど、音楽療法家で見た目とはギャップがあるなんていうお話が先ほどあったんですけれども、こちらの音楽療法というご職業はうつとどう関係されるのでしょうか?
橋本:後半の質問にも関係してくると思うんですけども、音楽が鬱をよくしてくれるサポートにはなるとは思うんですよね。ただ、鬱っていうのは、本当に色んなアプローチをして、心理面のアプローチもそうだし、栄養面のアプローチもそうだし、必要によっては医療機関で投薬を受けなきゃいけない場合もあるし、そういう色んなアプローチをしていく中で、音楽というのも鬱を改善していく上での1つの道具として役に立ちますよというのを実際、私自身が音楽療法やっていく中で感じまして、そういうこともテーマとして扱っているっていうことですね。
寺崎:そうなんですよね。だから橋本さんのメソッドって音楽がベースなんですけど、先ほどご自身でおっしゃっていましたけど、心理と栄養を加えた3要素っていうのを総合したアプローチなんですよね。それをまとめたのが『聴くだけうつぬけ』っていう本になります。
橋本:そうですね。『聴くだけうつぬけ』の中ではこの3つの話をしていますね。
うつ病は「心の病気」ではない
今井:ちなみに私たちの周りにも、リスナーの皆さんの周りにも、身近にいらっしゃるかもしれないんですけれども、そもそも鬱病の原因というのは何になるんでしょうか?
橋本:はい。まず鬱病の原因なんですが、これって実は分かっていないっていうのが現状なんですね。だから、鬱病の原因がズバリこれですよって分かっていれば、現代でこんなに鬱病に苦しんでいる方はいらっしゃらないのかなと。ズバリこれが原因ですよっていうのが分かっていないのが現状ではあります。
ただ、皆さんに知っていただきたいのは、鬱病というのは心の病気とか、心の風邪とか、心の骨折とかって、色んな表現をされるんですけど、心ではなくて、身体面の病気っていう面が強いんですよ。もっと言うと、脳のコンディション、脳の病気といいますか、脳機能の不具合が起きている。脳と心って同じですからね。つまり、体の症状、体の病気っていうイメージが強いんだってことをまず皆さんに知ってほしいんですよね。
どうしても心っていうと、根性、気合が足りないからだみたいなふうに思ってしまいがちなんですけど、心の病気というよりは、もう脳機能、脳のコンディションに問題が起きているんだというふうにして知って欲しいなあと思います。
それ以外にも脳っていうのは神経伝達物質に影響を受けていますから、色んなホルモンバランス、神経伝達物質のバランスが崩れることによって、鬱の症状が出てくるってことがわかっています。ですので、代表的なわかりやすいものがセロトニンですよね。セロトニンを体の中でうまく作れなくなってしまうというのが鬱の症状の1つであろうということで、今処方される抗鬱剤、SSRIとかSNRIっていうのはセロトニンというホルモンをもう1回再利用しましょうというお薬になってるんですけれども、こういうものを摂取したりとか、あとは甲状腺ホルモンが低下するだけでも鬱症状が出てくるんですよ。それ以外にも当然肝機能ですよね。肝機能が落ちるだけでも体がだるくなったり、鬱っぽい症状が出てきたりしますし、あとはこれは神経伝達物質の生成に関わってくるんですが、鉄分、フェリチン、特に貯蔵鉄フェリチンの数値なんですけど、この数値が下がってくると、やっぱり鬱っぽい症状とかパニック的な症状が出てくることがわかっているので、心の方に目が行きがちなんですけど、体の面での検査とか、体へのアプローチで鬱っぽい状態がよくなる方はすごく多いので、気になる方はまずは体の面を第一に考えてほしいです。
なので、質問にお答えしますと、鬱病の原因ははっきり分かっていないんだけども、心の原因を探る前に、まずは体のことを皆さんに1回チェックしてほしいなあと思います。
今井:そうなんですね。てっきり私は鬱病って、先ほど橋本先生がおっしゃった通り、根性論じゃないですけど、精神的なものかと思っていたんですけど、もっとホルモンだったり、肝臓だったり、そういうフィジカルな、肉体的な方だったんだなって驚きました。
橋本:そうなんですよ。なので、これを多くの人に知ってもらえたら、鬱病とか、心の病気に対する偏見みたいなものがだいぶ減るんじゃないかなって思っているんですよね。決して根性論とか、甘えであるとか、そういうのは昭和の発想であって、今はもうだいぶ医療が進んで、脳機能の問題、体の問題が鬱には大きく関係しているってことが分かってきていますね。
今井:そうすると、解決には色んな方法があるというところで、希望が見出せますよね。
橋本:そうですね。色んな方法を試していくのがすごく大事になってきますね。
音楽がうつ病に効く理由
今井:ところで、今は栄養のお話をしていただいたんですけれども、「音楽も鬱に効くのでは?」ということでお話を伺っているんですけれども、この音楽が鬱に効く理由っていうのは何でしょうか?
橋本:はい。鬱というのは気分障害と言われるものの1つとして扱われています。つまり、気分に障害が出ている。気分っていうのはなんとなく曖昧ですけれども、いい気分、悪い気分だったりって、私たちは使いますよね。その気分の状態にアップダウンがあったり、安定しない気分障害の1つとして扱われるんですね。で、音楽っていうのは今更、音楽療法って言わなくても、音楽で救われたり、音楽を聴くことによって元気になったり、心が慰められたリという経験は誰でもあると思うんですよ。音楽療法っていうのは、音楽で心を癒したり、悲しみを癒したり、怒りを発散したり、リハビリテーションに使ったりっていう目的が先にある状態で音楽を道具として使いましょうというのが音楽療法なんですね。
ただ、音楽を聴くっていうのは、音楽が先にあって、後から結果がたまたま生まれたっていう。何かヒット曲を聴いていたら心が慰められたみたいなことになると思うんですけど、通常の音楽鑑賞というのは。音楽療法というのは先に目的があります。これはリハビリに使いましょうとか、悲しみを緩和しましょうとかね。そういう目的に対して音楽を道具として使うのが音楽療法なんですけど、まさに音楽っていうのは気分に作用してくれる力があるのは科学的に証拠を示さなくても皆さんは経験していますので。音楽が鬱をサポートしたり、改善していく上で役に立つというのはすごくあります。
ただ、鬱と言ってもレベルがあって、本当に重い鬱状態の場合っていうのは音楽を聴くことすら辛いんですね。だから、そういう時は逆に音楽を聴くことはしないで欲しくて、しっかりとドクターの指示に従って、まずは体を休める。とにかく休み、寝るっていうことが大事な時期もあります。鬱症状って段階が何段階もあるので、あくまでも音楽が鬱をサポートできるようになってくるのは、もう回復してきて、体がちょっとずつ動いてきて、でも心の面がちょっとまだしんどいなっていう時に、この音楽っていうのが非常に役立ってくれるっていうことを私は感じていますね。
寺崎:本の中で、音楽って形がないものじゃないですか。だから同じように形がない心が共鳴するっていう話はすごく印象に残っているんですよね。
橋本:まさにそれは私も感じているんですよね。結局、感情、感覚って目に見えないものですよね。ただ、確かにそこにあって、音楽っていうのも形はないんだけど確かにそこにあって、だから音楽療法というものをちゃんと学ぶ前から、音楽と感情、感覚、メンタルの相性ってすごくいいなあっていうのは経験則からも私は随分前から感じています。
寺崎:実際に診療の現場でも、こういった音楽が治療に活用されていたりっていうこともあるんですか?
橋本:実際の現場では音楽療法は保険適用にならないですし、なかなか時間がかかってしまうので、鬱とかメンタル面の問題、つまり心療内科とか、精神科においての音楽療法というのは、日本ではなかなか進んでいないのが現状です。
ただ、例えば介護施設であったりとか、あるいはデイケアであったりとか、そういう場所でリハビリ的な要素を取り入れて、作業療法士さんとか理学療法士さんが音楽療法を補助的に使うというのは、日本ではよく行われているなという印象ですね。鬱をサポートするために、音楽療法を取り入れている病院や機関というのは、今はなかなかないのが現実だと思います。
うつ病とうまく付き合うヒント
今井:ありがとうございます。ちなみに5月は大型連休などもあって、五月病という形で、軽めの鬱というか、そんな感じでちょっと落ち込みがちな方も増えてくるような季節になると思うんですけれども、鬱と上手く付き合うヒントのようなものがあれば教えていただいてもよろしいでしょうか?
橋本:そうですね。鬱っていうのは今までの生き方ではもうしんどいんだよっていうサインだと私は思っているんですね。つまり言い方を変えると、生き方を変えるチャンスと言いますか、今までの生き方だともうここから先がしんどくなっちゃうよっていうお知らせのようなものだっていうふうに私は話をしているんですね。
で、鬱になってしまう原因っていうのは先ほどお話したみたいに身体面のことももちろんあるので、食事で栄養を整えたり、色んな検査をして、自分自身の現状を知るっていうのもすごく大事なんですけど、心理面で言うと、結局、私は何がしたいのか、私はどう生きたいのかっていうのが意外とはっきり見えない方が多かったりします、傾向として。
心理的な用語を使うと、内発的動機づけと外発的動機づけの2つがあるんですけど、外発的動機づけっていうのは、誰かに褒められたい、誰かに認めて欲しい、世間から、親からすごいって言って欲しいとか、お金を稼ぎたいとか、もっと注目を浴びたいなっていうふうに外側からどう見られるか、外側からどんな承認が得られるかっていうのがモチベーションになっている。
で、内発的動機づけっていうのは、私がこれをしたい、私がこんな仕事をしたい、私はこんなふうに生きていきたいみたいな感じで、主語が私になるモチベーションなんですよね。で、鬱になってしまいがちな、鬱症状を持っている方達っていうのは、特に今30代ぐらいからなる方が比較的多いんですけど、今までずっと外発的動機づけで、自分以外の何かや、誰かのために頑張ってきた人がポキッとなっちゃう場合が多いんですよ。
五月病みたいなのも、そこにちょっと関係してくるんですけども。私はどうしたいのか、私はどう生きたいのかって、私を主語にした答えを自分で探していかなきゃいけないんだっていう、ある意味、サインだと思うんですよね。
だから、鬱とうまく付き合うヒントというものを1つ、今日お話しするのであれば、今までは誰かのため、親のため、世間のため、子どものためなんていうふうに、外側のために、外側からすごいねとか、よくやっているねとか、あなたはちゃんとしている人だねとか、社会人としてしっかりしているねみたいなことをベースにして生きてきた人たちが・・・、それは間違っているわけではないんですけども、外発的動機づけも絶対必要なんですけど、外発的動機づけ100%で生きていると、「私は」の本音が聞こえなくなっちゃって、我慢した結果、鬱っぽい症状が出てきちゃうんですよ。鬱っていうのは、ある意味、たくさん我慢している人がなりやすいので。
だから、私は何がしたいのか、私はどう生きたいんだろっていうのをわからないなりに、何度も何度も自分に問いかけてあげるっていうのが、鬱と上手く付き合うヒントというか、スタート地点というか、鬱をよくしていくための、自分への質問の最初のステップになるかなというふうに思っています。
今井:ありがとうございます。まずは自分をもっと振り返りなさいというメッセージなのかもしれないですね。
橋本:そうですね。真面目でいい人ほど、誰かの期待に応えるために一生懸命がんばれるし、がんばっちゃうんですよ。ただ、自分の本音というか、本当は僕はこれがしたい、本当は私はこんなふうに生きたいっていう声がだんだん聞こえなくなってきちゃっているんですよね。子どもの頃は聞こえていたのに。だから、そういうものを改めて取り戻して、取り返していくって作業もすごく必要になるんじゃないかなというふうに思っています。
寺崎:なるほど。ちなみにこの“はもしょう”さんの『聴くだけうつぬけ』なんですけど、CDがついていまして、橋本さんの演奏されるピアノセラピーが実際に体験できます。あと、書籍の特設ページがあるんですけど、ここに音源の冒頭の部分を試しに聴ける視聴コーナーがあります。この特設ページのURLを貼っておきますので、ぜひちょっと覗いて見てもらえるとうれしいです。
橋本:はい。ぜひ、お願いします。あと、CDの音楽をダウンロードもできるんですよね?
寺崎:そうです。
橋本:なので皆さん、ぜひ聴いていただけたらと思います。
今井:あと、こちらのVoicyに橋本先生のYouTubeのチャンネルのURLを貼っておきますので、ぜひ皆さん、そちらの方もご覧いただけたらと思います。そしてこの『聴くだけうつぬけ』、本当に興味深い内容なんですけれども、本日はお時間がやってまいりましたので、また明日、色々とお伺いしていきたいと思います。明日は音楽療法に加え、心理と栄養という3つの総合的アプローチについて解説していただきたいと思いますので、ぜひリスナーの皆さん、明日もお楽しみいただけたらと思います。橋本先生、寺崎さん、本日はありがとうございました。
橋本:ありがとうございました。
寺崎:ありがとうございました。
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)