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韓国大統領選は私にとって他人事ではないのです

こんにちは
編集部の稲川です。

今日は韓国の大統領選があります。
私にとっては、これからの生活にとって重要な日です。

というのも、私の妻は韓国人で、これまでの文在寅(ムン・ジェイン)政権が日韓関係をめちゃくちゃにしてしまったからです。
妻は日本に来て、かれこれ30年以上。人生の半分以上は日本に住んでいるので、すでに韓国事情はほとんどわからないというのが実情ですが、それでも今回の選挙のいきさつは、一挙手一投足サーチしていました。

妻いわく「文在寅は史上最悪の大統領」だそうです。
妻は1979年、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が暗殺された10・26事件から1980年5月17日の非常戒厳令拡大措置までの民主化学生運動の時代は高校生で、戒厳令で真っ暗闇のソウルの中をかいくぐって遊びに出かけていたそうです(かなりやんちゃな時期だったそうで)。

朴大統領は軍事政権で、独裁者として有名ですが、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長をさせた大統領として、現在の韓国の基盤をつくった人物であることは間違いありません。
その成長過程で、日本のお金もかなり使った事実は国民には知らされませんでしたが、妻も母国ではいっさい知ることはなかったと言う通り、その後も続く民主化が否定された軍事政権下のなかで、様々な資金の使途は闇に葬られたというのが事実でしょう。

さて、話は本日の大統領選に戻しますが、朴正煕の娘、朴槿恵(パク・クネ)が「ろうそく革命」で大統領退陣、逮捕という劇的な政権交代劇から5年、文在寅政権の与党候補者・李在明(イ・ジェミン)と、その当時に検事総長であった尹錫悦(ユン・ソギョル)が野党候補者となり、与党VS.野党の一騎打ちとなりました。

妻と私は、2020年11月25日に彼の業務停止命令が下された時から、その裁判の様子、彼が辞任するまでをテレビで観ておりました。結果、裁判では12月24日に職務復帰が認められたのですが、翌年3月4日に辞任を表明しました。
この間、彼の支持率はうなぎのぼり。「これは大統領に立候補するのでは?」と2人で話しておりました。

この5年間、文政権は民主化を逆行する時代となりました。
中国・北朝鮮寄りの政治、若者の失業率の上昇(国民の平均賃金引き上げによる結果)、様々な統制と、妻にとっては朴正煕時代の韓国を思い起こしたのかもしれません。それでも当時は、民主化は実現しなくとも経済は確実によくなっていったことを実感しています。
それが、文政権によって経済はガタガタになったのですから、“史上最悪”というのもうなずけます。
それゆえに、尹錫悦氏の出馬には、民主化も含め、政権交代という新たな期待が寄せられていると言っていいでしょう。

韓国にとって、反日という絶対的な政治カードを捨て去ることはないでしょうが、日本にいる韓国人にとっては今の政権が代わることを”祈っているはず”です。
妻は3カ月前に「キンパ(韓国のり巻き)」の店を始めたのですが、たまたま店に訪れた韓国人のお客さんが「海外在住の事前投票で尹錫悦氏に投票した」と言っていたそうですから、ここは“はず”と言っていいと思います。

私も尹錫悦大統領が誕生することを祈っております。

と、今回は他人事ではないと思い、政治ネタを書いてしまいましたが、韓国を知るには韓国人のメンタリティを知るのが一番です。
近くて遠い国とは、このメンタリティが大きく違うためであり、妻はよく「外国人だから」ということを強調します。私もずっと生活しているとこのことを忘れがちで、日本人のメンタリティで接してしまうことがあります。
日本に来て30年以上、妻の日本語は普通の日本語ですし(来日して、韓国人のいない環境に身を置いて、永田町の日本語学校に通って鍛えたそう)、私もつい彼女が外国人であることを忘れてしまいます。

結婚してからも、このメンタリティを理解するために、妻と幾分年齢の近い韓国人の書いた本を読んで勉強していた時期があります。
今回はその中で、比較的読みやすい1冊を引っ張り出しました。

『韓国人を愛せますか?』(パク・チョンヒョン著、講談社α新書)

韓国人を愛せますか?

パク・チョンヒョン
1969年、韓国慶尚北道・義興に生まれる。釜山育ち。法政大学経済学部准教授。専門は、人文地理、都市地理、都市システム論、韓日大衆文化比較論。東京大学大学院理学系研究科修士課程、同博士課程で地理学を専攻。博士(理学)。1999年に大東文化大学国際関係学部助教授となり、2007年4月より現職。2001年から、男性雑誌『GQコリア』(韓国)のコラムで、韓日の大衆文化の比較をテーマに執筆活動中(当時)。

この本が出版されたのは2008年。2002年の日韓ワールドカップ、2003年の『冬のソナタ』『宮廷女官チャングムの誓い』などの第一次韓流ブームがかげりを見せてきた頃に書かれたエッセイです。

内容は著者の経験から感じたことをつづっていて読みやすく、「韓国人ってこんな感情を持っているんだ」ということが割と簡単に知ることができます。
「人づきあいを大切にする」「1人でいることが嫌」「お酒はとことん付き合う「友達(親友=チング)は大切であり、友達の家族は自分の家族」「マニュアルを嫌う」「完璧より適当でよい(楽観的)」「謝るより、白黒つける」「会議の根回しより、電話で直接、簡便にすませる」「言葉のウラを読む必要はなく、額面通り」「嫉妬は愛の裏返し」「整形手術は隠さない」など、韓国人を知るなら私もなるほどそうだと思うところもあります。

しかし、あくまで著者が50代であることを考慮すると、今の若い韓国人と違うので要注意といったところでしょうか(今の若者を知るなら、流行りの韓国エッセイのほうがいいかもしれません)。

ただ、この本の中に登場する政治に関する部分は、たしかに妻に通ずるところもありました(今の韓国の若者は、日本人に近く政治に期待する人が少なくなっている現状があることにはありますが)。
その中で、こんな記述がありました。

1972年に厳戒令が施行されて以降、韓国国民が直接選挙で大統領を選べるようになったのは、1987年からだ。国民が政治に直接参加できるようになってまだ20年しかたっておらず(私注:35年に)、その意味では民主主義の歴史がまだ短い。それまでの軍事政権下では個人が政治的不満を口にすることはできなかったから、政治的不満を意思表示できる機会を大いに活用しているのだ。

日本人が韓国人のメンタリティを政治的に理解するならば、彼らが求めてきた民主化という歴史を知る必要があります。
たとえば、朴槿恵大統領を退陣に追いやった「ろうそく革命」は、デモの様子や政治的混乱が懸念されましたが、あの運動は国民による民主主義の実践であって、韓国国民が自ら考え、社会に参加し、発展させていこうという過程だったのかもしれません。
その後の文政権が、選ばれた民主主義であったとは思えませんが、彼らのメンタリティを考えれば政権は交代するのではないかと思います。

政治的関心の高い韓国。
本日の投票は朝の6時から始まっています。そして、深夜には大方の結果が出ます。
結果はともあれ、日本と韓国、2国の関係がよくなることを願わずにはいられません。

そんな私が韓国人のメンタリティを完全に理解しているのか。
そんなことはありません。
ちょっと韓国人化したところがあるというなら、食事の際にあぐらと立て膝で食べる(楽なので)とか、汁物にご飯を入れて食べる(ご飯に汁物をかけるより合理的)とか、素行だけは似てきましたが・・・。

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