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【フォレスト出版チャンネル#18】出版の裏側|書籍タイトルは、どのように考えている?

このnoteは2020年12月9日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

そもそも書籍における「タイトル」とは?

渡部:今日は「書籍タイトルはどう練って、どう決めているのか」というテーマでお話していただきたいと思います。今回は2回に分けてお届けしてまいりたいと思います。そこで、フォレスト出版編集長の森上さんと副編集長の寺崎さんにお越しいただきました。

森上・寺崎:こんにちは。よろしくお願いします。

渡部:早速なのですが書籍のタイトルということですが、そもそもタイトルってどんなものなのですか?

寺崎:これは個人的な見解なのですが、タイトルはその書籍の売れ行きを決める80%ぐらいの要素なんじゃないかなと思っています。それはタイトルだけではなく、カバー、デザインも含めてなんですけど。
要するにタイトルというのは商品名なので、どういう商品なのかということをお客さんに伝える。このステップがクリアできないと手にとってもらえないという結果になってしまうので、書籍に関してはタイトルが1番重要とされていて、社内で揉めて着地させるところです。

森上:いやー。そうなんだよね。タイトルで失敗している本って、我々の経験上も反省すべき点って結構あるよね。

寺崎:結構ありますね。

森上:読者の方にとっては当たり前ですけど、それが自分のための本かどうかっていうところを、”自分ごと”になってもらわないとダメなので、そこには色々な要素というか、洗練していく必要が出てくるので、すごく大事なものになってきますよね。

テーマにのめり込みすぎて読者とかけ離れてしまうことも

寺崎:担当者は長い時間かけてそのテーマ、著者に関わるので思い入れが強すぎて、読者と離れてしまうのは結構失敗ケースとしてあるね。

森上:あるね!もう何が最初にインパクトとして残っていたっていうのも忘れちゃっている感じ。

寺崎:それがもう当たり前のことになっちゃっているから。

森上:そうなんです!読者さんにとっては全然当たり前じゃないことが、担当編集者の中では当たり前になっちゃっていて、逆に響かないという・・・。

寺崎:270度くらい回転しちゃった感じ??

森上:そうだね(笑)結構陥りやすい。

寺崎:陥りやすいですね。

森上:原稿を読んでいる時もそうだし、原稿整理をしている時とか、タイトルはずっと考えていたりとか・・・。最初から本当に「このタイトルでいくしかない」っていうケースもたまにあるけどね。

寺崎:たまにありますよね。企画書の段階からすでにタイトルが決まっていて、それで最後までいったケース。

森上:そうなんだよね。ただ原稿を読んでいて、どんどん自分でアイデアを出したり、原稿の端々のキーワードを拾って、そこから考えたりとか色々あるよね。タイトルづくりっていうのが本当に一番大事なことであることは間違いないので、そこは本当に時間をかけていきますね。

「めんどうくさい」「めんどくさい」どっち?

渡部:改めて、タイトルというのは食品メーカーで言ったら商品名と考えていいんですかね?

森上・寺崎:そうですね。

渡部:多分、皆さん最初にタイトル見て買いますもんね?

森上:そう。あとカバーね。そのタイトルを認知してもらえるようなカバーじゃなきゃいけないし。実際にその商品の特徴とか“売り“とかってあるから、そこに込めるって感じだよね、タイトルはね。

寺崎:ジャンルによってタイトルの付け方がまた変わってくる。

渡部:具体的に例はなにかありますか?こういう理由でこのタイトルつけたみたいな。

森上:例えば私の例で言うと、だいぶ前の2015年の本なのですが、『「めんどくさい」がなくなる本』というのがあるのですが、めんどくさいっていう言葉はすでにテーマとしては色々出ていたんですよ、本として。その中で例えば“面倒くさい”って漢字で“面倒”って書いて“くさい”っていう言い方があったり、ひらがなで“めんどくさい”、あとは、“めんどうくさい”って“う”を入れるか、入れないか。で、それをどうやって決めようかなと思ったときに1つあったのは、Google Analyticsってあるじゃないですか。あれで検索してどれが一番多いか。それで決めた経験があるよね。

渡部:そんな決め方があるんですね!

森上:キーワードレベルでもそうだし、“めんどくさい”ということを解消する本だよということは企画として決まっていたけど、どうアプローチするのが一番いいかな、と。この本を1冊読めば「めんどくさい」がなくなりますよって言うことを伝えたいなと思ったので、そのままストレートにいっちゃった、と。

寺崎:その例でも言えるのが、やはり語感というかリズムが大事ですよね、タイトルは。「めんどくさいがなくなる本」「めんどうくさいがなくなる本」。やはり前者の方がスッと入ってくるじゃないですか。

森上:そうなんだよね。だから漢字でいったら、また漢字のいい部分もあるかもしれないけど、どっちの方が響くかなんだよね。スッと入ってくるかどうか。そのあたりはやっぱり結構気を遣う。“面倒くさい”という言葉は音で聞くと同じだけど、文字にすると全然違うので、そのあたりは結構こだわったりとかしますよね。

渡部:音だけではないって事ですね?

森上:そうですね。それはあるかもしれない。

タイトル会議で客観的にさらに練り上げる

寺崎:私の例で言うとインデックス投資の水瀬ケンイチさんが書かれた『お金は寝かせて増やしなさい』っていう本があるんですけど、これは元々『ほったらかし投資』 という本が売れていて、『ほったらかし投資』を言い換えることができないかなということで「お金は寝かして増やす」っていうタイトル案を出したんですよ。で、営業部交えたタイトル会議というのがあるんですけど、その時に「『お金を寝かして増やしなさい』って命令系にした方が刺さるんじゃないか?」って意見が出て、「確かに!」と言うことで変えたりということもあります。結構色々な人の意見がもらえるよね、会議ではね。

森上:そうだね。冒頭でも話した通り、自分が入り過ぎちゃってわかんないところを一回引き戻してくれる機会になっている感じがします。営業部はそのタイトルを初めて見るから、そこはちょっと読者に近い。他の人の意見を聞くことによって一回フラットになるというところがあります。

寺崎:よくあるのが「タイトルは意味わかんないけど、キャッチコピーの方がいいんじゃない?キャッチコピーの方をタイトルにしよう」っていうパターンもある。

森上:それもあるね。

寺崎:これはやっぱり担当者が見えてないケース。で、第三者が読者の立場で見たら、「キャッチコピーの方が全然タイトルとしていいよ」というのはパターンとして結構ある。

タイトルにはどんな要素を詰め込むのか?

渡部:タイトルってものすごく重要だなということはわかったのですが、具体的にどういった要素を入れていくんですか?

森上:例えば、企画のテーマですよね、あとジャンル。それが心理学なのか自己啓発なのかとか色々あるじゃないですか。あと切り口ですよね。本っていっぱい出ていて、類書もあるので、その中で切り口を斬新にしていく。あとやっぱり訴求力、インパクト。特徴、売り、読者対象、それは男性なのか、女性なのか。

寺崎:「ビジネスマンのための○○」とかね。

森上:そうそう。こういったものって全部入れられたらいいんですけど、でも文字数が制限あるじゃないですか、タイトルって。そうなると今度はサブタイトル、帯コピー(帯=キャッチコピーなどが刷られた紙で、書籍の下を覆うように巻くもの)で伝える。帯コピーと一緒にセットでタイトルを考えるのが一番いいですよね。

渡部:なるほど。本のタイトルだけではなくて、カバーや帯に書いてあるコピーですね。それと両方くっつけて成立するみたいな。

森上:そうですね。でないと、やっぱりなかなか全部を込められないので、じゃあどれをタイトルにするかという感じだよね。だからさっき寺崎さんが言ったみたいに帯コピーで考えていたものが逆にいいかたちでタイトルになったりということもありえますよね。

渡部:なるほど。タイトル一つとっても、ものすごく奥深いということがわかりました。

森上:そうですね。それだけ大事ってことです。

寺崎:タイトルを決めるのは本当に重要だから、揉めるケースも多い。

渡部:そうなんですね。タイトル一つで読者の方と会えるか会えないかが決まってくる重要なポイントだと。では次回は編集者がどういう風にタイトルを練っていくのか、さらに深堀ってお話を聞きたいと思います。それでは今日もフォレスト出版チャンネルを聞いて頂きましてありがとうございました。

森上・寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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