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不登校を人生のボーナスタイムとするために

先日帰省したときに、中学生の姪が不登校になっていると聞きました。
原因は聞きませんでした。
おそらく、イジメではなさそうです(というか、そう思いたい)。
姪と最後に会ったのは3年以上前、当時は小学校高学年で、年のわりには落ち着いていると思ったのですが、今思い起こすと繊細さが見え隠れしていたような気がします。
ただでさえ盆と正月に実家に帰るのが難しいために1年に1回会えれば良い方だったのに、コロナ禍になって3年間会えず、お年玉もずっとあげられませんでした。中学生になってバスケ部に入ったと聞いていたので、『SLAM DUNK』でも買ってあげようかな、と思っていたのですが……。コロナ禍による時間の喪失感ってヤツが身にしみます。
私は、学校なんか無理して行かなくてもいいと思っているタイプです。それに、前述のように姪とはほとんどコミュニケーションがありませんでした。しかしながら、やっぱり気になってしまいます。
両親のわが子への心配は相当のものでしょう。

私は10代とその保護者向けの教育書も少ないながら編集してきました。
その中の1つが、今年の7月に刊行された、犯罪学教室のかなえ先生『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』(通称:キミ傷)です。

同様の悩みをもつ子やその保護者の方へ、本書の中から不登校に関する箇所を一部抜粋してお届けしましょう。以下はイジメによる不登校についての記載なので、私の姪のような状況とは前提が違うかもしれませんが、何かしらヒントを見いだしていただければ幸いです。


不登校は根本的な解決にならない?

 いじめを回避するために、不登校という手段がとられることがあります。
 大きないじめ事案の発生直後や、子どもの自殺が多くなる長期休み明けに、テレビのコメンテーターさんなどが一様に「学校に行ってつらい思いをするなら、家にいよう!」と発言するのを聞いたことがある人も多いかもしれません。
 しかし、私はこのような「無策な不登校の推奨」は、非常に無責任だと思っています。
 これは、私自身もいじめをきっかけに長く不登校を経験して感じたことです。学校との関係も破綻した状態で、母が「もう学校には行かなくていい」と言っていじめから離れるために不登校になりました。その後、両親が弁護士などを立てて大事にした結果、いじめは解決しました(ただ、しばらく学校は行けませんでした)。
 しかし、家に引きこもっている期間中、家の中では居心地の悪い思いをずっとしていました。
「これからどうなるのか。将来はどうなるのか」
「僕が悪いことをしたみたい」
「親に対して申しわけない」
 そんな漠然とした罪悪感や不満、不安に襲われ続けました。
 当時と違い、今は多少不登校の受け皿(フリースクール等)はつくられるようになりましたが、そもそも日本の教育システムが「子どもが学校に通うこと」を前提に構築されている間は、どんな理由であれ「不登校から脱出すること」を目標にいじめの解決を進めなければなりません。心のケアと同時に、学校に戻った後のことも考えた対応が必要なのです。
 もちろん「被害者の心と体を守る」という緊急避難的な意味で、一時的に学校から離れるという選択は合理的な判断です。つまり、単純に「いじめから離れるための不登校」ではなく、「いじめを解決するための手段」として出口戦略も考えて不登校を選択してほしいということを伝えたいのです。
 具体的には、不登校を選択する前にいじめの解決目標(再発防止なのか、相手に謝ってもらうのか)を立てたうえで、教科学習に遅れが出ない対策と子どもの心のケアの方法を学校と協議して、それから「不登校」という手段を慎重に選択してほしいです。
 そして「不登校」を選択した際には、保護者には子どもの最大の味方になってあげてほしいと思っています。

今もいじめに悩んでいるみんなへ

 前項を読んで、「不登校」がとても悪いことのように感じた人もいるかもしれません。でも、不登校を選択することはすごく勇気のいることで、「危険から離れて身を守る」ことはとても大切な考え方です。
 家の中にいると、すごく悪いことをしている気になったり、脱落してしまった気分になって、将来のことが何も考えられなくなっている人もいるかもしれません。
 ただ、そんな暗い気持ちになったときに思い浮かべてほしい考え方があります。
「散々ひどい目にあってきた分、今はボーナスタイム」という考えです。
 学校に登校できない間に勉強についていけないかもしれないと、不安になるかもしれません。しかし、学校に行かない間だからこそ、経験できることもあるはずです。
 心を落ち着けるために、家の中でのんびり過ごすのも良いでしょう。気分を入れ替えるために、散歩に出てみるのも良いでしょう。
 罪悪感やまわりの人の目が気になってしまうかもしれませんが、今は「ボーナスタイム」なので、気にする必要はないです。これまで嫌な思いをしてきたのだから、それを取り戻すつもりで、思いのまま過ごしてみてください。
 きっと、これからの人生を豊かにするヒントと出会えるはずです。
 ただ、不登校の先輩として厳しい話もしないといけないと思っています。
 それは、学校に戻ることはあきらめないでほしいということです。
 いじめの場所に戻ることはとても怖いことです。
 しかし、先生が変われば、学年が変われば、学校が変われば――つまり環境が変われば、状況も大きく変わる可能性があります。もちろん、全部が良い方向に向かうとは限りませんが、学校という場所は人生を豊かにしてくれる経験値をためるには絶好の場所でもあることは事実です。
 ただ、絶対に戻りなさいというわけではありません。
 ボーナスタイムを有意義に過ごす中で、心に余裕が生まれてきたときに、こっそりと学校に戻るか、どうするかを考えてほしいと私は思っているのです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしぐろ)


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