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幻の名著『29歳からはじめるロックンロール般若心経』全文公開

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二階堂武尊・著
『29歳からはじめるロックンロール般若心経』


■はじめに「心がふわっと軽くなる本」
 

みなさん、こんにちは。
みなさんはこんな悩みを抱えて暮らしていませんか?

 「人間関係がうまくいかない」
 「いつまでたっても正社員になれない」
 「友だちとの″年収格差〟が縮まらない」
 「いい恋人、結婚相手にめぐりあえない」
 「やりたいことが見つからない」
 「会社で正当な評価を受けていない」
 「なかなかお金がたまらない」
 「ギャンブルから足を洗えない」
 「借金苦である」
 「太っている」
 「薄毛である」
 「貧乳である」
 「ブサイクである」

実は、こういう悩みはみんなあなた自身の心が作り出しています。
あなたの「とらわれの心」が生み出した産物なんです。だから、美容の本や、ダイエットの本、自己啓発書など他人の力を借りてもなかなか解決しません。

私自身もみなさんとおんなじでした。

本を読み漁ったり、セミナーに出たり、友人に相談をしたりなど、いろんなことを試してみました。でも解決法は最初から自分の中にあったことに気づいたのです。

この本はみなさんに、立ち直るヒントや勇気を提供することを目的としています。

テーマは「般若心経」。


「般若心経」がわからない人でも、またそんなに興味がない人でも、楽しく読み進んでいくことができる「笑って読める治療薬」として役立つことでしょう。

ブッダは、人生は「苦」だと言っています。
「苦しみ」のことです。

ちょっとネガティブに響くかもしれませんが、この「苦」というものを理解して、「苦」を味方につけてこそ、人生は楽しくなるのです。

毎日がなんとなく息苦しいと思っている人に、「へえー、そう考えればいいんだ」と新しい視点を見つけてもらえたら、うれしいです。心がふわっと、ラクになれると思います。

さあ、ご一緒に、ブッダと般若心経の旅に出発しようではありませんか。

                         二階堂武尊

■序章 渡る世間をロックする

◎ゴキゲンに生きる「特効薬」を見つけたブッダ
生きるって、苦しいことだと、ブッダは言っていました。
生まれ、病気して、老いて、死ぬ。

嫌いな人とも一緒に仕事をやらなくちゃならないこともあるし、大好きだった恋人と別れなくちゃならないときもある。借金をすることもあれば、ドジをして、自己嫌悪に陥ることもある。

最近では、「自分探し」に苦しむ「自分病」なる現代病を患う人もいます。

確かに、人生は苦しいものです。楽しいことはあっという間に過ぎ去り、すぐに退屈や不安が頭をもたげてきます。こういう悩みに「特効薬」ってあるんでしょうか。ないんですねえ。残念ながら…。

だからブッダも29歳で王子としての地位も、かわいい女房子どもも捨て、救いを求める旅に出たのです。

旅先で、ブッダは35歳のとき、「特効薬」を見つけました。
それは「悟り」です。
「悟りなんて、私たちには無理」とみなさん思うでしょう。
確かに「悟り」までは遠い道のりです。

でも。
「小さな悟り」を繰り返していくと、「悟り」の境地に一歩一歩近づけるんじゃないでしょうか。

「小さな悟り」って、なんでしょう。
それはあなたも少しは体験したことがあるはずですよ。

 心が静まってリラックスして、頭の中がすっきりした状態。
 まったくさざ波が立たない湖面のような心境。
 雪がしんしんと降り積もり、音ひとつ聞こえない朝。
 田舎に帰ったとき、爛々と輝く星々を見つめた夜更け……。

「悟り」は「超ハッピー」な状態とは違います。
「超ハッピー」とは熱狂的で飛び上がるほど楽しい状態です。でもそれには、いずれ終わりが来ます。
「悟り」の境地には、あなたが望めば終わりはありません。

日常に「小さな悟り」をいっぱい持つこと。それこそがゴキゲンに生きること。まあ、ブッダの場合は、特別でして、「大きな悟り」の中を生涯生きたお方ですが…。

◎「特効薬」はないが「常備薬」ならあなたも持てる!
では、小さな「悟り」はどうやったら得られるんでしょうか。
そこで般若心経の登場です。
般若心経を自分の心の「常備薬」として持つんです。

般若心経をご存知ですか。
これから、たっぷりと般若心経の世界をご堪能いただこうと思っていますが、あんまりなじみのない方も多いでしょうね。般若心経はお葬式やお盆のとき、お坊さんが唱える「いつものあれ」です。

お坊さんの「聖歌」。仏さまのキラー・チューンであります。
「はんにゃーはーらーみーたー」というやつです。

あれを聴いていると、気持ちよくて眠ってしまったり、逆に妙に元気が出たりするものです。意味なんかわかんないのに…。

般若心経は長そうに感じますが、実は、262文字とお経の中ではもっとも短いものです。お葬式にはぴったりかもしれません。でも、あの262文字の中には、ブッダから受け継いだ「特効薬」のエキスがぎっしり詰まっているんです。

ちょっと味わってひと口飲めば、もうそれだけで、心のモヤモヤが晴れてくるのです。

短いお経ですが、262文字は音読すると、数分かかります。読めばもう少し短いかもしれません。でも、漢字ばっかりでしんどいといえばしんどいですね。

でも、全部理解する必要はありません。なにせ昔は、石ころに般若心経の中の一文字だけを書いて、お寺に奉納する習慣もあったぐらいです。

ですから、生きにくさを感じているあなたも、まずは、「色即是空(しきそくぜくう)」とか「不生不滅(ふしょうふめつ)」などお気に入りの一句を選んで噛みしめてみてはどうでしょう。

よく「好きなコトバは?」などと他人から聞かれることがありますが、そんなとき「心無罣礙(しんむけいげ)」などと答えるとかっこいいじゃないですか。お気に入りの一句を呪文のように唱えるとか、手帳の端っこにそっと書いておくだけでも、ご利益があるかもしれません。

◎仏教をロックせよ!
般若心経のひとつの特徴として、「否定」の言葉があります。本文をざざっと拾ってみると、「不」や「無」という言葉が合計29個も出てくるんです。
「ノォウ!」と何でもシャウトしているわけです。

この不思議なお経はいったい何をそんなに必死になって「否定」しているんでしょう。実は般若心経に限らず、仏教の世界では、モノゴトを否定するのが基本姿勢なのです。このポジティブ・シンキングが横行する世の中で、あまりにも逆転の発想ですよね。

でも、この本を手にとっているあなたも、実は「ポジティブ」すぎる世の中にちょっと疲れてはいませんか。自己啓発書を読みすぎて、ぐったりしたりしてしまった経験はないですか。無理やりのポジティブ思考や自己肯定は、単に自分を疲弊させるだけ。

般若心経の「否定」の姿勢は、どこかロックなフィーリングが漂います。パンクと言ってもいいでしょうか。そうです。あのロック・ミュージシャンの精神です。世の中の既成概念や常識などをぶっ飛ばしていく不屈の精神。

 Not Satisfied!
 満足することなかれ!
 ぶち壊せ!

  
実はこのお経、極論すれば、常識なんてくそくらえ、非常識に生きろ、と言っているのです。あのコはカワイイだのブサイクだの、私のカレはお金を持っているだの貧乏だの、あの人は正社員だの派遣社員だの、そういう世間の常識に惑わされるな、振りまわされるな、と般若心経は言っています。

実に爽快でかっこいいじゃないですか。

こんな般若心経の中心を貫く思想に「空」という概念があります。
「空」とは簡単に言えば、「悟り」とか「涅槃」(ニルヴァーナ)の境地といってよいと思います。目の前に横たわる常識という分厚い壁を次々とROCKしていき、行き着いた先は、穏やかな静謐(せいひつ)の世界。

うーむ、実にドラマティック。
お経とは、最高のライブ・パフォーマンスであり、最高のチル・アウトなのであります。

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◎「幸せ?」と聞かれて「不幸です!」と答えるお茶目な勇気を持て
最近は、いろんなアンケートで、「幸せですか?」と聞かれると、「まあまあ、幸せです」と答える若者が増えています。幸せだと思っている人に、「嘘だろ」と言うのも、おせっかいかもしれませんが、本当に幸せなんですか。

よく年末年始に「新年の抱負は?」などと聞かれた人も、「現状維持です」と公然と答えていますね。

仕方のないことです。
戦後、何もかも失った日本人が、国土復興という夢をひとつにして、汗水流して、がむしゃらに働き、日本を豊かにしました。

しかし、経済的な恩恵は、あらかた食い尽くし、冬の時代に突入したいまとなっては、志を持つということが非常にむずかしくなっています。長い冬の後には、必ず春がやってくると信じる人は、バブル世代より上の人たちで、若い人たちはそんな明るい未来が来ることなど信じてはいません。

しかし、経済が上向くことはないにしても、「現状維持」と答えるのは、少々、切ないです。せめて、精神的には、進化したいと私は日々思っています。

私など、まだまだひよっこです。
永遠にグレイト・ブッダの足元にもたどりつけません。
だから、まだ精神的には満足していません。
若い人が、「まあまあ幸せです」と答えることも否定しません。

でも、ウケ狙いでもいいですから、今度、「幸せですか」と聞かれたら、「まだまだ不幸っす」とニンマリ答える茶目っ気と勇気があったら、日本もますます楽しくなると思っています。

◎現代の「末法の時代」を爽やかに駆け抜けろ
失業者や自殺者も後を絶たない日本。自殺においては、ここ14年間、毎年3万人を超える悲しい状況です。暗いニュースがテレビを賑わせています。

いまの時代を、華やかな王朝文化の終焉した平安末期の「末法(まっぽう)の時代」と比べる人がいます。確かに似ているかもしれません。

希望の見えない時代です。
時代を大局的に観ると、悪い時代の次にはよい時代も訪れるのかもしれませんが、「末法の時代」においても、おびただしい人が飢えや疫病、天災などで命を落としました。
次のよい時代が訪れるまでに、私たちも死んでしまうかもしれませんね。

でも、ひとつだけ、いつの世にも自由なものがあります。
それは精神の自由です。
感じ方、考え方の自由です。

仏教はもうすでに2000年以上も人類の心の頼りとして、たくさんの人々を救ってきました。「ぼんやりとした不安」は、この幸せなのか不幸なのかもわからない現代日本にはびこって、みんなの心をしぼませています。

そうであるから、いまこそ、ブッダの教えが強力な武器となるのです。
この灰色の現代社会、「ネオ末法の時代」を般若心経片手に、爽快に駆け抜けてみたいと思いませんか。

どうせ、一度の人生なんですから。
「現状維持」では、死んだも同じですよ。

ブッダ、つまりお釈迦様は、なんだか、抹香(まっこう)臭いというか、古臭くて陰気なイメージを抱く方もいらっしゃると思いますが、登場当時はそれまでのインド思想史をくつがえす、たいへんアヴァンギャルドかつパンクなお方でした。

今日、般若心経はニコニコ動画などでも視聴できるほど、ポピュラーなコンテンツとなりました。般若心経は狭い仏門の世界を飛び越えて人々に訴えかける破壊力を秘めています。千数百年もの間、常識も世間体もぶち壊し、常に私たちの魂を揺さぶり続けてきました。

この本は、般若心経をまるごと理解しなくても、お気に入りの聖句を身につけ、それを突破口に、生き苦しい生活を変える手助けをすることを狙いとしています。さらに言えば、あなたの仏教の世界へのあしがかりとなれたら幸いです。

ですから、身構えて読むことはおすすめできません。
262文字を切りの良いところで、分割して、それぞれの意味を解説しています。まず、第1章を読んでいただいて、その後はどこから読んでいただいてもかまいません。

どうぞ、ご自由な読み方で、お楽しみください。
いざ、Sail On!

■第1章 般若心経とはパンクである

◎ブッダのハートが受け継がれた262文字の大宇宙
さて、まずはちょっとだけ、般若心経がいかなるものかについて、ご説明しましょう。そして、般若心経の核となる「空」の思想について気楽に見ていきましょう。

般若心経は仏教の経典の中では、比較的古くからあるお経です。『般若経』という膨大なお経群の中のひとつです。できあがった時期は、300年から350年あたりと言われています。

ですから、正確に言うと、紀元前に亡くなったブッダ自らが説いた言葉ではありません。仏典というのは、ブッダが亡くなった後にお弟子さんたちがまとめたもので、別にブッダが執筆したものではありません(ブッダの生涯について、楽しく知りたいのなら、手塚治虫さんの『ブッダ』をおすすめします)。

般若心経はインドで生まれたお経です。

でも、今日の日本で、般若心経をここまで人気のお経へと引き上げたのは、玄奘(げんじょう)の功績によるものです。玄奘とは、みんなが知っている『西遊記(さいゆうき)』に出てくる三蔵法師のモデルとなったレジェンドなお方です。

玄奘はまだ中国が国外に旅することを禁じていた時代に、中国を脱出。17年もの歳月を費やして、膨大な仏典をインドから中国へ持ち帰って翻訳したのです。般若心経はその中のひとつです。だから、般若心経は漢字で読むことができるんですね。

ですから、もともとはインドの言葉でまとめられています。
お経が何を言っているのかわからないのは、インドの人たちの言葉だからですね。それを音読(音写)している部分が多いから、意味不明で呪文のように聞こえるのです。

でも、この漢字、262文字がおそろしいパワーを秘めているのです。

ブッダが言いたかったことを、煎じて、煎じて、煎じ詰めたエッセンスが濃縮された形で収められています。

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