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「徹底的にパクったヤツが勝ち」という話

フォレスト出版の寺崎です。

「あのさぁ、変にオリジナリティを出そうとするのはやめて、TTPしてくれないかな?」

ここで出てきた略語「TTP」の意味はご存じでしょうか。

TTPはけっこう有名なので、おわかりの方も多いかもしれませんが、「TTP」は「徹底的にパクる」という言葉の略語です。

この「TTP」という略語の発祥の地は、多くの経営者を輩出するリクルート・グループです。

◎成功事例をTTPする
◎成功している人をTTPする

「パクる」ことで重要なのは「徹底的に」の部分だそうです。中途半端にパクって失敗するのではなく、徹底的にパクって真似る。そのことがリクルートでは古くから推奨されています。

ちなみに、TTPの後ろに「S」がついた「TTPS」という略語があります。

意味は「徹底的にパクって進化させる」です。

私がこの言葉を初めて知ったのは、編集を担当させていただいた『最高の結果を出すKPIマネジメント』の原稿の中でした。

 私が以前担当していた事業は全国に店舗を構えていました。そして、顧客がどの店に来店されても、あるいは誰が接客担当になっても水準以上のサービスを提供したいと考えていました。
 口で言うのは簡単ですが、実現するのは難しいものです。進化を志向せずに一律の方法を全員でやるのであれば可能性はあります。
 しかし、常に進化させながら、全国で水準以上のサービスを実現するには、コツが必要でした。ある地域の接客担当が開発した満足度の高いツールや接客方法を、他の地域や店の接客担当が学び、実践できるようになる仕組みが必要なのです。
 少し前に流行った言葉で言うとナレッジマネジメントの仕組みです。
 その重要なコンセプトがTTPです。ナレッジマネジメントとは、他者から学ぶということです。「学ぶ」という言葉は、「真似をする⇒真似ぶ」からできたと言われています。つまり、他者を真似するということです。
 ところが、真似をしろと言われると、人は知らず知らずのうちに拒否反応を持ちやすいことが多いようです。個性的でありたかったり、自分独自のやり方をしたかったりと思う人が多いものです。
 そこで、登場するのがTTP。
 リクルートは言葉遊びが好きで、言葉やフレーズを略するのが大好きな組織でした。「初心者や若手は、先輩やハイパフォーマーの仕事をTTPしなさい!」と言うように使います。そして、しばらくすると「TTPSをしてみなさい!」とアドバイスを受けます。

TTP=「徹底的にパクる」
TTPS=「徹底的にパクって進化させる」

 言葉にして聞くと、真似をするどころか、「パクる」ですから、もっと下品ですね。ただ、TTPする、TTPSすると言うと、語感や音がかわいくないでしょうか?
 若手メンバーにとっては、日報を書く際に、略語なので簡単に書けるのです。心理的な拒否反応が一気に減ります。
 ちなみに、TTPでは、「徹底的」という部分が重要です。単にパクるのではなく、ハイパフォーマーのやり方を徹底的に真似しようということです。
 スポーツであればハイパフォーマーのやり方を真似することは称賛されます。ところが、仕事の場面では、往々にしてそうではないことが多いのです。
 私が担当していた組織では、このTTP、TTPSという言葉を使うことで、全国の優秀な接客担当の仕事を学ぶのを称賛していました。
「○○さんのやり方をTTPしてお客様に喜んでいただけました」というような使い方をするので、TTP元へのリスペクトも表現できます。
 講演会などで当時の仕事を披露することがあるのですが、この言葉(TTPS)は、その後いろいろなところで使ってもらえているようです。


著者の中尾隆一郎さんはリクルート・グループで長く活躍され、現在はマネジメントの専門家として独立されています。

今月、ディスカヴァー・トゥエンティワンさんから、このような新刊も出されました。

ほかにもたくさんある「リクルートの略語」

先日、中尾さんとお話する機会があり、かねてより「リクルートの略語って、おもしろいなぁ」と思っていたので、いろいろ伺いました。

すると、リクルートにはもっとほかにも略語がたくさんあったの、ここでいくつかご紹介します。

◎SIP
Speed is Powerの略で、「速いことは力」という意味です。リクルートグループの現場での生産性を高める際に作られた言葉だそうです。

◎ATI
「圧倒的な当事者意識」の略。「圧倒的(Attouteki)当事者(Toujisya)意識(Ishiki)」 の 頭文字3つ を合わせたもの。これ、個人的にはいちばん好きな略語です。

「おれたちももっとATIを持ってプロジェクトに取り組もうぜ!」
「あのさ、その発言、ATIで言ってる?」

こんな風に使います(たぶん)。

◎ZD
「効果がない」「ぜんぜんダメ」の意。「ぜんぜんダメだよ!」というと角が立ちますが、「それ、ZDだよ」と言った方がなんとなく和らぎます。

◎SH
内定などで握手すること⇒Shake Handsが転じて「SH」。

◎KS
経営戦略会議

◎T会
取締役会議

ビジネスの現場における「略語」の意味とは?

こんな風にビジネスの現場で「略す」「略称」をつくることには、なにか意味があるのでしょうか?

このように中尾さんに質問しました。

すると、略語の狙いとは――
◎共通言語ができる
◎意思疎通が早くなる
◎組織・チームの一体感が生まれる

――ということだそうです。

そういえば、出版の世界でも略称というか、独特の言い回しがあったりします。たとえば「188ページ」を「イッパッパ」、「256ページ」は「ニゴロ」と言ったりします。

編集担当「今回、ページ数はニゴロで固まりました」
印刷所営業マン「ニゴロですね。承知しました」

こんな感じで出版社と印刷所のやりとりで使う言葉ですが、「にひゃくごじゅうろくページ」と言うよりもスピーディだし、正確に伝わる面もあるような気がします。

あと、どこか「業界の人間だけが知る隠語」を共有することで、互いに「近しい関係性」が醸成される要素もあるかもしれません。

徹底的にパクるのは成功の早道かもしれないと思ったエピソード

そいういえば冒頭にご紹介したTTPで思い出しのですが、先日、とあるD2Cブランドを短期間で成功させたベンチャー企業を取材しました。そうしたら、まさにTTPのようなお話が出てきました。

「ずばり、貴社のブランドの成功の秘訣は?」とインタビューしたんです。すると、社長がこう答えたのです。

「これをいうとアレなんですけど、徹底的に成功事例をパクりました。ブランドの立ち上げもSNS展開も、すべて完コピ。これに尽きます。そうそう、最近よく若い起業家が『D2Cブランドを立ち上げたので、お会いしたい』って訪ねてくるんですけど、僕になんにも一切聞かずに自分の話だけして帰るんですよ。ホント意味わからないです。僕なんて、成功してる人をあっちこっち訪ねて、どうやったらうまくいくのか、聞きまくりましたよ!

この話の背景には、社長さんの過去の失敗談や反省とか、もっといろいろと深いストーリーがあるのですが、結論としては「TTP(徹底的にパクる)」が大事だと。そういうお話でした。

帰りのエレベーターでライターさんと著者と「なんかさー、みんな自分を出したがって自分流でやりたがるんだけど、結局、徹底的にパクっても、完コピしても、最終的には自分が出ちゃうから、TTPでいいんだよね、たぶん」という結論になりました。

なんか最終的にはそんな気がします。

なので、みなさん、大手を振ってどんどんパクリましょう。

パクり、パクられ、世界は進化する。

(補足)
著作権侵害はダメです。
あくまでも、やり方や考え方をパクるということで、ヨロシク。

▼Voicyのフォレスト出版チャンネルに中尾さんが出演!





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