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コロナ禍で起業を考えるのであれば…

コロナ禍において、世界的(米国や欧州)に起業がブームになっているそうです。

日本でも米国でも、経済は厳しい状態にあることに変わりないが、実は今、世界的に個人がアイデアでこの苦境を乗り切ろうとする傾向が高まっているという。逆風の中でも小規模でビジネスを立ち上げ、起業する人たちが世界各地で増えているのである。

意外ですね。おっかなくてこんな時期に起業しようなんて発想は出ないものと思っていました。

失業中は時間が余っているから、いっそのこと自分で商売を始めよう、ということで小さなビジネスをする人が多い側面があるそうです。一方で、コロナ禍だからこそ顕在化した、あるいは新しく生まれた消費者ニーズに応えるサービスを積極的に提供しようというフロンティア精神あふれる人たちも多いはずです。
この流れが、近く日本にも来ることでしょう。

とはいえ、軽い気持ちで起業をしたら、間違いなく失敗します。
起業関連のビジネス書はたくさん出ていますが、中でもベストセラーになりやすい本は、どちらかというと実務ではなく自己啓発的な内容が多い印象です(自分調べ)。確かに、起業しようかどうか迷っているとき、背中を押してくれる強い言葉は心の支えになるでしょう。

しかし、気持ちだけで本当に成功できるのでしょうか?
以前から、そんな疑問を起業本のベストセラーに抱いていた私は、次の本、金原隆之『起業で成功する人、失敗する人』を企画しました。

もちろん、メンタル面について触れてはいますが、内容の大半は、事業を5年以上継続させるために「いつ」「どこで」「何をするか」を、フラットな視点から丁寧に解説しています。
起業本を読んで「元気が出た!でも具体的に何をすればいいかまだよくわかっていない」という人に、特にオススメです。

本書の「まえがき」を全文公開しますので、起業を考えている方はぜひ参考にしていただければと願っています。

まえがき 3つのフェイズから考える生き残る起業

 昨今、起業はとても身近な存在になり、ブームになっているともいえます。
 しかし、起業した人のうち、どのくらいの人が事業を継続できているか、その割合はあまり知られていません。
 実は、法人と個人事業主を合わせた最近の統計データはありません。しかし、私が身を置く起業コンサルタントの業界では、日本の起業家の起業後2年間の生存率は20%を下回っていると考えられています。5年後の生存率に至っては5%ほどしかありません(2005年の中小企業庁のデータによると、法人と個人事業主を合わせた生存率は1年後20%、5年後7%、10年後3%。さらに2014年の総務省統計局の発表によると、年々廃業率は高まり、企業生存率は低下しているとのこと)。
 さらに、起業に向けて何らかのアクションをした人すべてを含めれば、その割合はさらに下がります。起業すらできなかった人も多数いるわけですから当然です。
 それだけ、ブームとは裏腹に、生存競争は熾烈を極めているのです。
 私はこれまで起業コンサルタント(インキュベーター)として1000件を超える起業相談を受けており、400件を超える起業サポートを行ってきました。
 常に起業の最前線で起業家をサポートし、現在では年間60件以上のスタートアップ企業の支援をしています。
 そして、私の支援を受けたクライアントは、日本の企業生存率を大幅に超え、2年後の生存率80%を継続しています。


驚異の生存率80%の理由

 なぜ、私のクライアントが起業2年後の生存率80%を維持しているか不思議に思うかもしれませんが、実は特別なことをしているわけではありません。
 かつての私のコンサルティングは、他のコンサルタントと同様に、原則としてクライアントが起業するまでのサポートしかしていませんでした。結果として、起業したクライアントを追跡調査してみると、起業後2年以内に廃業してしまったという人が相当数いるという現実にぶつかったのです。
 当時、私が受けた起業の相談300件について、その後の状況を整理したことがあります。そのときに出た数字が次のようなものでした。

起業相談から起業に至った割合:46%(300件中140件が起業)
起業後2年間の生存率:43%(140件中60件が2年間事業継続)
起業後5年間の生存率:11%(140件中15件が5年間事業継続)

 冒頭で見たデータよりは生存率は高いものの、忸怩たる思いがありました。
 あきらかに資金が不足していたり、起業家としての責任感が足りていない人には、無理に起業をすすめない方針をとっていたので、実際に起業した人の数は相談件数に対してそれほど高くはありません。しかし、そのうえで起業した140件のうち半分以上が2年以内に廃業している現実に、コンサルタントとしては責任を感じずにはいられませんでした。
 そこで私は、起業をゴールにするのではなく、起業前から起業後2年までをサポートするコンサルティング手法にシフトさせました。
 そして、最も変化が激しく、大切な起業後2年間を徹底的にサポートした結果、前述のように起業2年後の生存率を80%まで引き上げることができたのです。もちろんその間に、3年目以降の経営を安定軌道に乗せるためのフォローもしています。
 さらに、こうしたコンサルティングをしていく中で、私は起業で成功する人がやっていること、失敗している人がやってしまうことが、よく見えてくるようになりました。

成功するまでに立ちはだかる3つのフェイズ

 私は、起業を成功させるためには3つのフェイズを越えなければならないと考えており、本書ではそれぞれのフェイズにおいて、どうすれば成功するか、あるいは失敗するかを解説しています。

 1つ目のフェイズは起業するまでの準備期間です。
 残念ながら、多くの起業志望者は、無意識のうちに「起業=ゴール」と勘違いをしています。起業準備をしてきた者からすれば、確かに起業は1つの区切りですが、ただ単に起業するのであれば、「ヒト・モノ・カネ」がある程度そろってさえいれば、それほど難しいものではありません。
 しかし、起業後を意識した準備をせずに生き残ることはほとんど不可能です。

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 2つ目のフェイズは起業から2年間の生存競争です。
 最も脱落する人が多いフェイズということもあり、経営者としてもそうですが、プレイヤーとしてすべきことが膨大で、眠れぬ夜が続く時期になります。生き残るための市場の開拓や商品・サービスの値決め、キラーコンテンツの開発や顧客のファン化のための方策など、企業の生死に直結するような重要な決断が連続します。
 しかも、それらは起業後の半年の間にしなければならないため、起業したからといって満足感に浸っている暇はありません。

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 3つ目のフェイズは起業後5年間の事業継続です。
 このフェイズでは、企業としての経営力が問われます。
 経営計画を作成したり、停滞している事業の改革を行うのもこの時期となります。フェイズ2の結果をベースに、販売戦略をさらに練り込まなければなりません。
 また、金融機関との連携も強化して、資金繰り計画を立てるといった、経営者にしかできない仕事に注力するのもこのタイミングとなります。

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 起業をして、事業を軌道に乗せるには、経営者としてしなければならないことがたくさんあります。
 しかし、それを1つ1つ虱潰しにしたところで効率的とはいえません。そこで本書では、限られた時間の中で、「いつ、どこで、何をするか」を明確にした構成になっています。
 起業には正解ルートがないといわれることがあります。業種も異なれば規模も違いますし、その時々の景気の影響を受けるわけですから、当然といえば当然です。
 しかし、少なくとも「やるべきこと」と「してはいけないこと」は明確です。そして、この2つを徹底的に意識すれば、ほとんどの失敗要因をなくすことができるのです。

95%の敗北者のその後

 現在の日本では、約95%の起業家の皆さんが、5年以内に倒産・廃業という道をたどり、少なくないダメージを受けることになります。
 借金返済のために財産を売却、家族に影響を与えて一家離散、債務整理や自己破産などといった憂き目にあうことは決して珍しいことではありません。
 起業を考えはじめるとき、誰もが「自分だけは大丈夫」と思いがちです。しかし、95%の人が脱落している現実の前では、それはあまりにも楽観的であることに気づくでしょう。
 起業ブームということもあり、書店のビジネス書コーナーには関連本が所狭しと並んでいます。どれも信用に足る本だとは思いますが、どちらかというと起業の「手軽さ」がアピールされ、実務的なものよりも、自己啓発的な内容の本が目につきます。
 起業しようかどうか迷っていて、一歩踏み出すことをためらっているような人の背中を押す分には効果的でしょう。しかし、多くの起業家が脱落している現実にも向き合う覚悟が必要とも感じます。
 もちろん、起業家としてのメンタルは大切であり、本書のフェイズ1でもその重要性を語っています。しかし、現実的なリスクや実務的な作業を知ることも、同様に大切なはずです。
 したがって本書では、メンタルや知識、そして実務の両面から過不足なく解説させていただきました。
 私はこの本を通じて、起業家の皆さんには5年間の事業継続を必ず成功させて、ビジネス界に生き残る経営者になってほしいのです。
 そのための「手引書」として、ぜひ本書をご活用ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 石黒)

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