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無名の著者の本がベストセラーになったときの喜びは格別

ビジネス書とか自己啓発書、スピ本界隈では、企画を立てるときに著者にどれだけSNSのフォロワーがいるかとか、過去の著作の売れ行きを見たりとかで、基礎票を計算することが多々あります。
フォロワーが40万人いるから、このうちの5%でも買ってくれればコケることはないだろう……、なんていう皮算用をするわけです。
フォロワーが多いインフルエンサーの本は、書店営業にとって初動が見込めるので、最初から積極的に仕掛けますし、場合によっては広告展開も考えるでしょう。

「安直な企画の立て方だなあ」とがっかりされます?
しかし、そういう著者をいち早く見つけて唾を付ける機を見るに敏な嗅覚、著者の魅力を引き出す企画力など、著者を口説き落とし、逃げられないように金玉をギュッとつかむ編集者なりのテクニックや努力が必要になります。
(まあ、読者にはまったく関係ない話ですけど)

それが得意な編集者は影響力のある著者を何人も抱えており、ローテンションでも組んでるのかと思うほど、互いに推薦を贈り合わせて、さらなる相乗効果を生み出してベストセラーを生み出します。
(この「推薦の贈り合い」は、どちらかというと文芸のほうが目立ってるかも)

とはいえ、つくり手は著者に付いている基礎票を「おまけ」だと考えなければなりません。
基礎票があるからと、いい加減な本を出すわけにはいきません。もともと支持されているコンテンツをせっかく書籍という形にするのですから、より多くの人にその魅力を広げるために、相応のクオリティに仕上がるように腐心するのが義務です。

さて、そうした本がある一方、インフルエンサーではない無名の人の本がベストセラーになることがあります。とくに発売開始から特別な告知をしたわけではないないのに、ジワジワと売れていくタイプの本です。
編集者としてはしてやったりです。著者の知名度ではなく、著者自身の隠れたコンテンツの魅力や、企画の切り口で売れているわけですから。

実績が乏しすぎる私でも、数冊ですが、そうした本を編集したことがあります。
その一つが8万部のベストセラー情報文化研究所『情報正しく選択するための認知バイアス事典』。

著者名を見て「情報文化研究所? 誰?」と思うかもしれません。
HPを探しても絶対に存在していないような、よくある謎な著者名の組織――たとえば「日本お笑いことわざ学会」「ジャパン・ナレッジ」「人生ストラテジー博識会議」みたいな名称のやつなんじゃないかと。
しかし、情報文化研究所は間違いなく存在します。新進気鋭の若手研究者やさまざまな分野で活躍している有識者たちが日々活発な議論をしています。
なぜ、そんなことを断言できるのか?
実は、私もその末席を汚している人間だからです。

情報文化研究所
「情報文化論および関連諸領域に関する研究の推進と交流」を目的として1996年に発足した情報文化研究会を基盤に2018年に設立。
新進気鋭の研究者や多彩な分野で活躍している社会人も幅広く所属し、活発な議論や提言を行っている。
所長は、高橋昌一郎。

で、先週、情報文化研究所から前作の姉妹本である『行動経済学・統計学・情報学編』が発売されました。編集はもちろん私。
おかげさまで、すでに2刷が決定しており、好調な動き出しです。

これも執筆された3人の研究者の皆様のお力と、それをまとめ上げた所長である高橋昌一郎先生のおかげです。

目まぐるしく社会が変化し、カルト・陰謀論・詐欺・差別・分断・誹謗中傷……などが跋扈する中、本書に記された情報は必ずあなたの役に立つはずです。
ぜひ、手に取ってみてくださいね。

(いしぐろ)


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