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【フリー編集者の寄稿(初)】連休に家で仕事してません?「ヘルプシーキング」を学んで働き方を変えよう!

 こんにちは。

「もうこんなにたくさんの仕事をこなせない」
「もっと時間があったら……」って思ったことはありませんか。
 
 私はフォレスト出版編集部員ではありませんが、ときどき一緒に仕事をさせていただいているしがないフリーランスの編集者です。
 独立当初は、
「自分で仕事の分量をコントロールできる」
「疲れたら眠れるしいつ仕事をしてもいい」
 と言われ、新しい働き方ができるとワクワクしていました。
 でも、それは嘘です。嘘は言い過ぎかもしれませんが、半分本当で半分嘘でした。
 
 書籍編集のフリーランスは、本を作らなければお金になりません(当然といえば当然ですが)。出版社と固定契約を結んでいる人もいますが、基本的には本を作ることでお金をいただきます。
「本を作る」と一言でいっても、案外長い時間がかかっています。企画を考え企画書にまとめ、いくつかの会議を経て企画にGOが出たあと、取材・執筆、リライト・編集、タイトルの決定、装丁のデザインなどを一つずつこなし、短くて半年、長いものだと1年以上かけて本を作り、それでやっとお金になります。
 要するに、本ができるまでお金は入りません。
 だから、フリーランスの書籍編集者の多くは、たくさんの本を同時並行して進め続ける必要があり、土日も関係なく働き続ける、なんてこともよくあります(ただ、私もそこそこ長くフリーランスを続けてきたので、仕事のバランスは少しずつ取れるようになってきましたが)。
  それで最初にもどります。
 
「もうこんなにたくさんの仕事はこなせない」
「もっと時間があったら……」
 
 というのは私のことですね。
 でも「大量の仕事を抱え込んで苦しくなってしまう」という人は、私のようなフリーランスに限らず、会社員の方も多いのではないでしょうか。
 大企業や急成長している会社は人手に困ることはないでしょうが、中小企業はどこも人材不足です。人材が集まらず、退職者が増えていくという状況になると、個人の仕事の負担は増加する傾向にありますよね。

・予算目標の達成のため業務量増
  ↓
・数年前より業務量が増えているのに、人手が足りず個人負担増
  ↓
・労働環境の悪化による退職者増
  ↓
 以下ループ。

 なんてことも実際に様々な会社で起こっているようです。
  仕事の抱え込み問題は、短期的には会社や個人が頑張ればいいでしょうが、実際は社会的な問題でもあります。シンクタンクのパーソナル総合研究所と中央大学経済学部の阿部正浩教授の共同研究による「労働市場の未来推計2030」によると、「2030年には人では644万人不足する」と予測されています。

 要するに、基本的にも今後も人材不足の状況は続くということ。
 これらの問題を「個人の頑張り」でクリアするのは基本的には無理です。
「個人の頑張り」ではなく、「仕事のやり方」そのものを変える必要があるのではないでしょうか。



「仕事を全部自分ひとりで抱え込む」
「もうこんなにたくさんの仕事をこなせない」
「もっと時間があったら……」
 
 こんな悩みを抱える人たちに向け、「仕事のやり方をアップデートする」本が2022年4月21日に発売されました。

仕事は自分ひとりでやらない
〜仕事を抱え込まず助けを求める技術「ヘルプシーキング」の教科書〜

仕事を抱え込みやすい人の共通点

 この本は「いつも仕事をひとりで抱え込んでしまう人」に向け、上手に周りに助けを求めるスキル「ヘルプシーキング」をまとめた1冊です。
  そもそも「仕事を抱え込みやすい人」には特有の共通点があります。
 以下、引用しますので、自分が当てはまっているかチェックしてみてください。

共通点1「思い込みによる心理的ハードル」
 ひとつ目は、「思い込み」により助けを求めることができないケースです。
 具体的にどんな思い込みがあるかというと、次のようなものです。
 
・相手に迷惑をかけてしまう
・相手も忙しい(だから頼ることはできない)
・仕事のできないヤツだと思われる
・みんな頑張っているのに、自分だけ逃げるわけにはいかない
・これは自分がやらないといけない仕事だ
 
 私もそうでしたが、「迷惑をかけてはいけない」という私たちの根底にある意識は強固です。結果、こうした心理がハードルとなり、「助けを求める」という行動そのものが取れなくなり、抱え込んでしまいます

 共通点2「自分でやったほうが早い症候群」
 2つ目は「自分でやったほうが早いから」と考えてしまうケースです。
「仕事のやり方が自分しかわからず説明できない」
「業務が整理されていないため、自分でやるよりも依頼するほうが、時間がかかる」
 などと考えてしまい「人に頼む」という選択肢が取れない人がたくさんいます。
 当然、「自分でやるしかない」と抱え込むことになります。
 仮にやむを得ず助けを求めたとしても、こうした仕事を頼まれるほうの負担が大きく、お互いに大変な思いをすることになります。こうなると、次にますます頼みにくい空気を残してしまうことになります。
 また、個人ごとに仕事の進め方がバラバラ、お互いの状況やスケジュールが見えない、知識やスキルの共有や育成が行われていないなど、業務の属人化・ブラックボックス化が進むと、「自分でやったほうが早いから」と抱え込むことが増えていきます。

共通点3「甘い予測と判断の遅れ」
 3つ目は、何か問題の予兆が見えても「予定通り自分でできるだろう」と楽観的に考えてしまうケースです。
体調を崩しても、「明日は大丈夫だろう」と影響を限定的に見てしまうこと。
総じて甘い予測や判断がなされるケースです。
 こうなると問題が決定的になるまで判断を先送りしてしまうことになり、緊急的に助けを求める必要が生じます。
 結果、相手に準備なく負担をかけることになり、「迷惑をかけてしまう(かけてしまった)」という罪悪感が強く残ります。こうなると、次に「助けを求める」ときにより躊躇してしまうでしょうし、ひとりで抱え込む傾向に拍車がかかります。

共通点4「自分の仕事か、自分以外の仕事かで考える」
「仕事は個人に割り振られるもの」という前提を強く持っていると、一つひとつの仕
事を「自分の仕事か、自分以外の仕事か」という見方をするようになります。
 こうした見方を、私は「境界線意識」と呼んでいます。
 境界線意識を持つと、「自分の仕事は、自分さえわかっていればいい」と考え、自分の状況を誰かと共有しなくなる傾向にあります。
 さらに、相手の仕事や状況への関心も薄れ、求められた助けに応じることにも消極的になり、自分の仕事を「誰かに頼る」ことや、「誰かを助ける」ことも減り、ますますひとりで抱え込んでしまうというスパイラルが生まれます。

共通点5「困っていることが説明できない」
 最後の共通点は「困っていることが説明できない」です。
「助けてほしい」と思いながら、いざ助けを求めても「何に困っているか説明できない」、もしくは「どうしてほしいかが説明できない」ケースです。
 こうした人は、自分の希望や気持ちを言葉で表現したり、状況やことの経緯を論理的に整理したりすることが苦手だったりします。
 また、助けを求めることが緊急時やトラブル時は、冷静に考えることが難しく、感情的になってしまったり、整理されないままに情報を伝えてしまったりすることもあるでしょう。
 リモートワーク下で、状況をビジネスチャットやグループウェアを使い、テキストで説明することに慣れておらず、時間がかかってしまうことが要因の場合もあります。
 いずれにしても、適切に説明がされる場合と、されない場合では、助けを求められた相手の負担感はまるで違うものになります。
 そのうえ、一生懸命説明しても「何が言いたいのかわからない」「要点をまとめて」といった〝相手に理解されない反応〞を経験すると、次に「助けてほしい」ときの行動に心理的なブレーキがかかり、ひとりで抱え込むようになるのです。
 

 いかがでしょうか?
 なにか当てはまるものがあったり、「仕事を抱え込んでしまう自覚」があったりする方は、ぜひヘルプシーキングという考え方を学んでみてください。

ヘルプシーキングとは何か?

 まずはヘルプシーキングの定義から説明しましょう。
 以下、本文から引用になります。

「ひとりで抱え込まず、周囲に助けを求めるスキル」をヘルプシーキングと呼びます。
 困ったときに適切に助けを求めることはもちろん、ひとりでなんとかする以上の成果を周囲と連携して上げる考え方と技術を、「ヘルプシーキング」というビジネススキルと定義しています。
 「ヘルプシーキングはビジネススキル」、この前提が非常に大事です。
 これまで「助けを求める」ことは、甘えや逃げという先入観で捉えられたり、タイプや性格に起因するものとして「できる」「できない」を決めつけられたりしてきたように思います。
 対して、ビジネススキルだと定義することにより、「ビジネスを円滑に進めるうえで必要な考え方であり、行動」だという認知が広がりますし、「実践しよう」「使いこなそう」という人が増えます。
 スキルですので、「誰でも意識して実践すれば上手になるもの」と言えます。

 このヘルプシーキングは、個人スキルであり、組織スキルでもあると言われています。というのも個人が周囲の人間に助けを求めたのに、
「周りから冷たい反応を受けた」
「迷惑そうな反応をされた」
 としたら、次からやっぱり助けを求めることは難しくなりますよね。
 ヘルプシーキングは個人として身につけると同時に、組織もヘルプシーキングに対する理解や仕組み、文化を作っていくことが大事になります。
 
「助けを求めやすい環境にできているか」
「ヘルプを求められたときに、肯定的な反応ができるか」
「助けるための必要情報が事前に共有されているか」
 
 なども大事になってきます。
  他方、ヘルプシーキングの重要な考え方の一つに、
 
「ギリギリまで抱え込んでからヘルプを求めるのはNG」
 
 というものがあります。
「助けを求める=困っているから助けを求める」というイメージをするかもしれませんが、実はそうではありません。困ってから助けを求めるのではなく、「最初からチームで情報共有しながらチームで成果を出す」
というスキルなのです。

ヘルプシーキングの基本

 ヘルプシーキングの基本はシンプルです。

・ヘルプシーキングに対する理解を深める
・お互いが助けを求めてOKの信頼関係をつくる
・必要な情報をできるかぎり共有する

 まず大事なのは、ヘルプシーキングが成果を生むという考えの前提を持つこと、助け合える信頼関係とができているかです。
 自分が苦手な人で助け合おうという意識の共有ができていない人から「ヘルプシーキング」を何度も求められても、助けようと思わないですよね。
  チームメンバーや仲間同士で、お互い助け合う関係を作れているかが重要です。
 ポイントは、「助けてもらう側ではなく、自分も助ける側である」という当たり前のことを理解すること。
 ヘルプシーキングというと「助けてもらう」と思いがちですが、相手からヘルプが来たり困っていそうだったりしたときに率先して助けること。これを意識的に行うことで、いざ自分がヘルプをお願いするときに助けてもらえるようになります。
 そして、「相手からのヘルプ」に対して、肯定的な反応をすることです。
  実践は簡単です。
 
「頼ってくれてありがとう」
「よく言ってくれた!」
「ナイス・ヘルプ! 一緒に考えよう」
 
 など、相手が「助けを求めて良かった」と思える言葉をかけることです。
 自分が言われてうれしい、安心できる言葉ならどんな表現でも良いでしょう。心では思っていても、意識しないとつい忘れてしまうひとこと。でも、このひとことが〝誰もが抱え込まない〟文化や風土づくりの第一歩になります。
 
 最後の「必要な情報をできるかぎり共有する」について具体的な方法は本書に譲りますが、仕事の進捗やスケジュールややり方など、必要情報が共有されていなければ、なかなか助けようにも助けられないということになります。
 ですので、信頼関係づくりと同時に仕事の情報共有がカギになります。



 いかがでしたか?
 ヘルプシーキングの数少ない専門家である小田木朝子さんの新刊『仕事は自分ひとりでやらない』では、ヘルプシーキングの実践方法をわかりやすく解説しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

(フリー編集者 シカラボ)


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