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「暗示」や「イメージ」が病気をつくりだす?

フォレスト出版編集部の寺崎です。

花粉症の原因はもしかしたら「思い込み」かもしれないという話を書籍『病は口ぐせで治る!』を引用しながら、先週お伝えしました。

ここに出てきたプラシボ効果の話ではよく言われることですが、人間は想像以上に「暗示」や「イメージ」に影響を受けます。

さて、そうした「暗示」や「イメージ」がどれほどまでに人間に影響を及ぼすのか、『病は口ぐせで治る!』の内容をさらに読み進んでいきましょう。

夜中にうなされる理由

 誰しも、夜中にうなされて目を覚ました経験をもっているでしょう。
 原因として、空想上の恐ろしい体験もあるかもしれませんが、過去に経験した嫌な思い出や恐怖体験が多いのではないでしょうか。明るく楽しい記憶が蘇って夜中に起きてしまったという話はほとんど聞きません。
 アラート(警告音)というものは、耳に残るように設計されています。音色や音量などさまざまな警告の発し方があります(最近のニュース番組では、効果音がまるでサスペンスドラマのように使われていて、やりすぎではと感じることがあります)。
 人間の脳はさまざまなアラートに敏感に反応します。
 これは、おそらく太古の昔に生き残るために必要な能力だったのではないかと推察されます。同じ失敗をしないためには、危険な場所や危険な体験を記憶する必要があります。そういう能力を有していた生物の末裔がわれわれです。
 しかし、情報量が爆発的に増大している現代社会で、原始的にアラートばかりに反応するようになるとどうなるでしょう。
 これからは情報を適切に処理できる人間だけが生き残れるのではないでしょうか。病に対するさまざまなアラートに適切に対応できるようにならなくてはなりません。

基本的に悪夢を見ない日がないというほど、いつもうなされて眠っている自分としては、「原始的な脳のアラート」が原因だったのかと膝を打ちました。

人は「暗示」にかかりやすい

 自ら自発的にそれに従おうとする関係性のことを「権威」と言います。
 医学統計において、バイアス(偏りを生じさせるもの)とされるものの一つに「ホーソン効果」があります。いわゆる「ご利益」です。
 ホーソン効果とは、信頼する医者が自分に期待してくれていると感じることにより、たとえばダイエットなどの行動の変化を起こし、病気がよくなる現象を言います。
 白衣を着ている人が講演などをすると、それだけで信憑性が増すという「白衣暗示」などはまさにこれに当たるのではないでしょうか。
 ひと昔前まで医師には高い権威性がありました。しかし、医療事故や医療訴訟などが注目されるようになって、医師の権威は落ちてきたように思います。
 僭越ですが、わたしの診療所に来院される患者さんのなかにも診察室に入ったら治ったとおっしゃる方がたまにいます。
 わたしは「皆さんそうおっしゃいます」とうそぶきつつ、嫌な気がするはずありません。患者さん全員にそう言われれば、スーパー名医ですよね!
 先日、黒澤明監督の映画『赤ひげ』を観ました。
 考えさせられるシーンがたくさんあったのですが、もっとも印象的だったことは当時主演の三船敏郎が現在の自分と同い年(四六歳)だったことです。貫禄の違いに愕然としました。わたしが開業している下町の患者さんにはいまだに医師に「赤ひげ」像を求める人がおられますから、精進が必要です。
 もし、権威で病が治るのであれば、権威のある医師はどんどんそれを利用すべきです。もちろん、権威とは偉そうな態度のことではなく、あくまでも患者を治す力があるからこそ、権威は発生します。
 ただし「権威暗示」には注意が必要です。
 前章で余命宣告が当たらないと記しましたが、余命宣告の弊害は「権威暗示」による誘導です。
 権威暗示とは権威のある人から説得されると暗示がかかりやすくなり、その方向に物事が進行していくことです。とくに医師が病にかかった場合にかなり顕著にみられる現象です。正確にデータはありませんが(出しようがないのですが)、医師ががんなど難治性の疾患を患うと、見事に教科書通りに進展していきます。
 先日、友人の医師のお父さんがALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病にかかり、お亡くなりになりました。徐々に手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて力がなくなっていく神経の疾患です。
 現段階では、対症療法以外に対策がなく、医師の頭を悩ませる疾患の一つですが、症例数が少なく進行状況などはじつにさまざまです。世界的に著名な物理学者ホーキング博士は、この病を発症してからもずっと最前線で活躍しています。そんな方もいらっしゃいます。
 亡くなられたあとで、その友人のお母さんが、「本当に教科書通りに進行しました」と言われたことが印象的でした。亡くなったお父さんは医師であったため、ALSがどのような病気でどのように進行するかを知っていたのです。そして、病気はその通りに進行し、亡くなったのでした。
 医師が身をもってデータの信用度に貢献するのも皮肉な話ですが、「教科書通りに」という言葉が示唆することはとても重いと感じます。
 余命告知に話を戻せば、正答率も低いし、当たっても誘導による可能性があるような告知は必要ないというのが私見です。
 患者さんが自ら余命を知りたいというケースもありますが、医学の進歩が著しい現代では、あした画期的な薬が開発されるかもしれないし、何でも起こり得ます。一方で、交通事故で今晩亡くなることもあり得ます。
 余命にフォーカスすることなく悔いのない人生を送りましょう。

「余命○○」というのは立派な暗示なわけですね。くわばらくわばら。

自分の未知の力を引き出す

 国立がん研究センターは、全国四五万三〇三五件の症例のデータをもとに、がん患者全体の五年生存率が六九・四%、一〇年生存率が五八・五%だったとする調査結果を公表しました。
 率直に頼もしいデータだと思いました。
 こうしたデータが出ると、「がんは治る病」だというイメージを共有できるようになります。それはとても大切なことなのです。
 話は変わりますが、「ハーフパイプ」という競技をご存じでしょうか?
 オリンピックでも正式種目になっているスノーボードの競技です。ご覧になったことがない方は、ぜひ一度ユーチューブで見てください。「人間技か?」と驚くことでしょう。
 じつは、人間技とは思えないものは世の中に氾濫しています。
 わたしは野球をずっとやっていましたから、プロ野球選手のすごさがわかります。あの硬い球を木のバットで打つ。しかも、その球はピッチャーの手元を離れ、バッターのところに届くまで約〇・五秒。ピッチャーは時速一五〇キロの球を投げ、それをバッターは、時に軽々と一〇〇メートルも遠くに打ち返します。
 とても同じ人間の技術とは思えませんが、こうしたプロスポーツ選手のすごさもプロの職人の神業のような技術にも原点があります。
 その世界にエントリーする勇気の原点は、まず興味をもつことです。
 次に、「同じ人間がやっていることなんだから自分にもできる」と思えることなのです。
「がんは治らない病では決してなくなった」と思うことが、自分の未知の力を引き出してくれる可能性は否定できません。
 医療の日進月歩の進化が要因であることはもちろんです。さらに、その前提を受け入れるという意識が皆に浸透し、集合意識となり、現代人の寿命を延ばしているのではないでしょうか。

この「同じ人間がやっていることなんだから自分にもできる」と思うことで未知の力を引き出して人間業とは思えない結果を出す話は、『無意識を鍛える』(梯谷幸司・著)に出てくる「バニスター効果」と同じです。少し引用します。

 スタンフォード大学にロジャー・バニスターという陸上選手がいました。日本にはなじみがありませんが、海外には「1マイル競争」という1600メートルを走る競技があります。
 昔は、この1600メートルを走るのに、4分を切ることができないといわれていました。しかし、このロジャー・バニスターが、初めて4分を切ったのです。
 そして何が起きたか。次々に4分を切る人が続出し始めたのです。
 そこから「バニスター効果」と呼ばれるようになりました。
 達成可能であることを誰かが示すと、急にみんなが達成し始める現象です。
 日本陸上界にも似た状況がありました。以前、昭和30 年代に活躍した陸上選手の講演会を聴きに行ったことがあります。その人は言いました。
「昭和30年代の陸上界では、100メートル走で10秒を切りたいなんて言ったら、変人扱いされたんですよ。でも今じゃ当たり前ですよねえ」
 現在、日本の選手は9秒台に突入しています。
 誰かが達成可能であることを示すと、「突破できる人がいるんだ。自分もやれそう」という感覚になってきます。それをあなたの脳につかませていくわけです。

『無意識を鍛える』175~176Pより

最近は「ガンが一瞬で消えた」なんて事例もあちこちで聞かれます。薬機法に引っかかるので、出版社としてはあまり大きな声では言えないのですが、たしかに心理メソッドなどで実際にガンが消えた事例は実在します。

西洋医学の文脈ではありえないことでも、ガンが一瞬で消え去ってしまう事例があるのはファクト。

ここに「人間の底深いポテンシャル」を感じます。

イメージは現実を呼び起こす

 認知症の患者さんの奥さんがいます。小柄な奥さんは旦那さんを励ましながら、二人でゆっくりと散歩します。
 ご夫妻ともに外来に来られているのですが、奥さんが一人で受診するときは夫の愚痴ばかりです。
「夫があまりに失敗ばっかりするのでいつも怒鳴ってしまうんです」
 そう言う奥さんに助言しました。
「いつも失敗しないようにしようとしていませんか。それはしんどいですよ。成功することだけ考えたほうがいいと思いますよ」と。
「先生のお考えは素晴らしいと思います。だけどそれは先生らしいというか、いつも人生がうまくいっているから言えるんです」
 これは患者さんだけでなく、友人や家族いろいろな人からよく聞かされる言葉ですからもう慣れっこです。わたしはこんなふうに話します。
「なるほど。たしかにわたしは成功ばっかりしているんです。人生うまくいってばかりです。それはあくまでもわたしにとって、なのです。
 どういうことかといえば、わたしは成功しなかったことはすぐに忘れてしまうんです。というか成功しか記憶に残らないのです。これは生物学的には危険なことかもしれません。なぜなら失敗を記憶しておかないと、同じミスをして次は死んでしまうかもしれないでしょ?
 でも最近わかってきました。わたしは死ぬような失敗をする人間ではないと。なぜなら、わたしは成功するイメージしかないために大きなミスをしないし、小さなミスはすぐに忘れるから。
 逆に、失敗しないようにと考えながら過ごしている人は、失敗したことはよく覚えているけれど、うまくいったことはほとんど記憶に残ってないのですね。人生は当然失敗経験だらけになります。
 自宅からこの診療所まで来られたときに、もし、犬のウンコを踏んだら絶対に覚えているでしょ。でも無事に来られたことには感謝すらしないですよね。要はわたしの人生は成功だらけ、あなたの人生は失敗だらけ。死ぬときどっちが幸せですか?
 今日から成功することだけ考えて、うまくいった旦那さんを褒めてあげてください」
 奥さんは苦笑いしながら、「簡単じゃないけど、そうします」と言って帰宅していきました。
 毎年夏に「わんぱくトライアスロン」というイベントが台東区と墨田区の小学生四年生以上の有志の参加で開催されます。わたしは数年連続で救護医師として参加させてもらっています。
 昨年まで自転車の転倒は毎年〇〜二件程度でした。それがなんと今年は同じカーブで転倒者が続出したのです。
 熱血教師のような人がなぜかこの年から出現し、「曲がり角に注意するんだぞ!」と連呼していました。昨年までほぼ無事だったのに、なぜか新たなシステムが導入されたのです。「転倒注意」の呼びかけがきっかけになったのではないでしょうか。「転倒してはいけない。あそこで気をつけなければならない」という意識が引き起こしたこととしか考えられません。
 昨年は小雨で転倒のリスクは今年より高かったはず。個々のレベルで体調の要因はあるかもしれません。しかし、これほど差がはっきり出るとなると、子どもは素直なぶん、他者の影響を受けやすいと考えるほうが適切です。
 じんましんや車酔いが連鎖するのも子どもに多い特徴です。

「こうなったらまずい」
「これやったらヤバい」
「ここ通ったら倒れる!」

みなさん、こんな思い込みに支配されてうっかり「思い通り」の結果になってしまったことがないでしょうか。

これはスピリチュアルの文脈では「引き寄せ」という現象でとらえられます。

さて、こんなところから書籍タイトル『病は口ぐせで治る!』にあるような「病気」と「口ぐせ」の関係がほのかに浮かびあがって参りました。

次回(来週土曜日)はいよいよ病気と口ぐせの抜き差しならない関係についての解説に踏み込んでいきます。では。

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