編集者は読者に恋をする――本づくりと恋愛の相関関係
フォレスト出版編集部の寺崎です。
弊社編集部は昨年から今年にかけて編集経験のない新人が2名加わり、いま必死にがんばっていますが、彼ら彼女らと接するなかでいろいろと発見があります。
なにせ、20年以上この仕事をしている自分にとっては、仕事のすべてがもはや「暗黙知」なわけです。面白いこと・モノ・人を探す→企画する→原稿依頼する→本にする・・・という一連の流れが骨身に染みついています。
だから・・・
「著者って、どうやって発掘したらいいんですか?」
なんていう質問をされると一瞬
「えっ!?(ポカーン(*'ω'*))」となってしまいます。
一事が万事、こういう質問をされるので、いちいち自分も「編集者になりたて」のころの自分に立ち戻り、いわば原点に立ち返って考えながら回答します。
するとですね、ひとつわかっちゃったことがあるんです。
「本づくりって、恋愛に似てる」ということ。
好きな人に振り向いてもらうためにする努力
まず、そもそも「この人にこのテーマで書いてほしい!」という想いそのものが恋愛に酷似しています。
狙い定めた著者へ送るファーストコンタクトのメール、手紙、メッセンジャーに込める想いは、好きな人に贈るラブレターに近い。
相手に失礼がないか、この文章を読む相手の気持ちを何度も何度も想像しながら、一言一句確かめながら依頼文をしたためます。
送信ボタンを押す瞬間は、いまでも緊張します。
返信がなかったり、返事があっても「ごめんなさい」の返答だった場合は、やっぱりちょっと凹みます。
「名の通った大手出版社の依頼だったら受けたのかな……」なんて、思ってしまうこともあります。
でも、逆に「快諾」の返信が来た日には、飛び跳ねるごとく嬉しい。
なんか、もうこの時点でパーフェクトに「恋愛」ですよね。
編集者が著者に抱く嫉妬感情
さて、好きな人に会うことができました。
ここからふたりの関係が始まっていきます。
編集者にとって著者は「自分だけのもの」にしたい。
でも、世間がそんなことは許しません。
人気者の著者であればあるほど、出版社からは引っ張りだこ。
「自分だけの○○さん」でいてもらうことはできないわけです。
ここで「編集者の嫉妬感情」が生まれます。
「なんで、うちだけでなくB社とC社とも付き合うのよ!」と。
これもまさに恋愛と類似してます。
編集者が読者に抱く恋愛感情
さて、晴れて著者と二人三脚で本づくりがスタートします。
担当編集は著者と安泰な関係を維持すべく、日々心を配ります。
著者と喧嘩別れして、本が出せない・・・なんてこともなくはないですが、そんな事態は絶対に避けなければならない。ビジネスとしても。
このあたりから、編集者が恋愛感情を抱く矛先が変わってきます。
それは・・・「読者」です。
ここが「新人編集者からの質問で気づかされたポイント」でした。
本づくりに求められる「想像力」
「編集者が読者に恋愛感情を抱くって、どういうことよ?」
このように思われる方も多いでしょう。まあ、これはただのメタファーなのですが、恋愛において求められる「相手を想像する力」が本づくりにも必要だという話です。
「あの子はどういう性格なんだろう?」
=「この本の読者はどういう性格なんだろう?」
「あの子は何が好きなんだろう?」
=「この本の読者は何が好きなんだろう?」
「あの子は何色が好きなんだろう?」
=「この本の読者は何色が好きなんだろう?」
「あの子の好きな食べものはなんだろう?」
=「この本の読者の好きな食べものはなんだろう?」
こんな感じでひたすら「相手を想像する」「相手の深い部分を妄想する」という点において、恋愛と本づくりはきわめて近似しています。
また、恋愛において大事なのは、ある程度の自己開示をして信頼を得て、相手を笑わせてリラックスさせることでしょう。
※石田純一の名言「笑いの数ほどベッドに近づく」参照
「これって、まさに本づくりと同じじゃん!」と思ったのです。
そもそもがまず、好きな相手をみつけて恋愛関係に至るためには、己に開かれた「好奇心」と、飽くなき「欲望」がないと成立しません。
これもまさに、本づくりと同じ。雑駁な好奇心をベースに、好きなテーマなり人なりを見つけてこないことには、企画は成立しないわけで。
うーん、こんなことに気づかせてくれた、新人のMさんとMさん(あ、ふたりともイニシャルがMだ)、ありがとう。
あ、ちなみにこの「ありがとう」という感謝の気持ちも、恋愛、本づくりどちらにおいても、めちゃめちゃ重要な気がします。
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