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【著作権の話#1】1億総クリエイター時代の必須知識

東京オリンピックのエンブレム問題が有名ですが、パクリ疑惑や剽窃騒動が定期的に世間を賑わせます。
有名なクリエイターであればあるほど、そうした疑惑が生まれたときのダメージは大きいもので、クリエイター生命が終わることだってあります。

私もこういう仕事をしているので、パクリや著作権に関しては、以下のようにナーバスに考えることがあります。
「これって引用の範囲だよな?」
「パブリックドメインになっているけどアインシュタインの写真を使ったらなんかヤバそう」
「たった一節でもJASRACに申請しなきゃだよなあ……」

結構、アウトとセーフの線引に悩むことが多いものです。
現在は、SNSに写真や動画をアップしたり、YouTubeチャンネルでしゃべったり、こういうブログを書いたり……。1億総クリエイター時代ともいえますが、趣味でもビジネスでも、同じように気になっている方は多いのではないか……?
そんな思いから、以前企画した本が宮本督『これだけは知っておきたい「著作権」の基本と常識』です。

今回は本書の章末コラムのQ&Aから一部を抜粋、そして目次を紹介します。
かゆいところに手が届く、アウトとセーフの境界線が見えやすい本になっており、オススメです!


Q ものまねをユーチューブにアップするときは当人の許可を得る必要がありますか?

歌のものまねでは、楽曲や振付けを利用します。まず楽曲は著作物なので、無断で利用すると著作権(送信可能化権)の侵害になります。ただし、JASRAC の管理楽曲であれば、YouTube とJASRACが包括契約を結んでいる現状では、個別の許可を得る必要はありません(伴奏の音源については制限があります)。
 振付けも、単なる既存のステップの組み合わせにとどまらない顕著な独創性が認められれば著作物となり、振付けはJASRAC の管理外なので、著作権者の許可を得る必要があります。ただし、人の仕草や顔、声そのものについては著作権が存在しないので、真似ても著作権侵害にはなりません。

Q テレビ番組の1 コマをキャプチャしてSNS やブログに投稿するのは著作権侵害にあたりますか?

テレビ番組は著作物で、動画の1場面を静止画にしたキャプチャ画像も著作物です。したがって、それをSNSやブログに無断で投稿することでは、著作権のうち公衆送信権の侵害となります。ただし、引用の要件を満たしていればその限りではありませんが、一般にキャプチャ画像に簡単な感想を付け加えたようなケースでは、引用とは認められないと考えられています。

Q 有名芸能人のサインを持っています。オークションなどで勝手に売ってもよいですか?

有名芸能人のサインに限らず、一般的なサインは、著作物とはみなされないのが普通ですから、著作権法で保護される対象ではありません。自分の所有物をオークションに出品することに何の問題もありません。

Q 有名人の似顔絵を描いて商用利用するのは肖像権の侵害にあたりますか?

人は、写真だけでなく、容貌などを描写したイラスト画についてもみだりに公表されない人格的利益をもつと考えられています。したがって似顔絵が、その有名人の似顔絵であると識別できる場合、それを無断で商用に利用することは肖像権の侵害にあたります。

Q 広島東洋カープや智弁和歌山高等学校野球部の「C」のロゴに著作権はありますか?

アルファベットなどの文字で構成されるロゴマークには、基本的に著作権は認められていません。文字は万人共有の文化的財産であり、本来的に情報伝達という実用的機能を持つものなので、文字の字体を基礎としてデザイン書体を表現した形態には著作権としての保護を与えるべき創作性を認められないという考え方です。つまり、著作権法で保護される著作物ではないのです。では、商標権はどうでしょうか。商標法では原則、アルファベット2文字以内の文字標章は、自他商品・役務識別力がないものとして登録できないことになっています。

Q 大学の学園祭にロックバンドを組んで出演し、新旧洋邦のバンドの曲を演奏したいのですが、許可が必要ですか?

その学園祭が非営利目的で、観客から料金をとらず、出演者に報酬が支払われなければ、著作物を自由に利用できます。JASRACや著作権者の許可を得る必要はありません。

Q 有名映画のパロディ映画を制作してネットにアップロードするのは、なにか問題がありますか?

パロディにもさまざまな手法・表現があり、元作品の特徴をどこまで再現しているのかによって、著作権侵害かどうかが判断されることになります。元作品の台詞や映像などの創作的な表現に類似する要素があると、著作権(翻案権)や、著作者人格権(同一性保持権)の侵害になる可能性があります。ただし、表現とは違い、アイデアそのものに著作権はありませんので、パロディでも、元作品の設定などが同じというだけでは著作権の侵害にはなりません。

Q 雑誌などの写真をトレースしてイラストを描き、作品として発表しても大丈夫ですか?

写真を上からなぞって(トレースして)イラストを描けば、結果的に元の写真と構図などの類似性がきわめて高くなります。それを作品として発表すれば、著作権侵害となります。見てそっくりに描く模写でも、結果として類似性が高ければアウト。法的にはトレースと模写の区別はありません。ただ、元写真を参考にしても、特徴的な表現の重複がなければセーフです。

Q 画風を、他のマンガ家やイラストレーターの作品そっくりにしたオリジナルストーリーのマンガやイラストは著作権侵害にあたりますか?

画風や絵柄そのものに著作権があるわけではありません。有名なマンガ家やイラストレーターとそっくりの画風というだけでは、著作権侵害とはなりません。しかし、たとえば有名なキャラクターとそっくりなキャラクターを描いて、その「ありふれた部分」ではなく「本質的特徴部分」について類似性が高ければ、著作権侵害と判断されます。

Q よく有名人や犯罪者の卒業文集の作文がニュースなどのメディアに出ますが、あれは著作権法違反ですか?

卒業文集の作文は著作物です。したがって、これをニュースなどで報道することは、著作権(複製権)、著作者人格権(公表権)の侵害になりそうです。ただ、著作権法では、著作物を、事件報道目的で利用することを認めています。しかし、無制限に認められているわけではなく、あくまで「報道の目的上、正当な範囲内で利用している」かどうかが問われます。事件に関係のない作文を、視聴者や読者の興味本位の欲望を満たすために利用する行為は、著作権法違反になる場合があります。

第1章著作権とは何か
1 そもそも著作権とは?
2 著作権の保護期間は?
3 著作権が消滅しても使えない場合
4 著作権にもいろいろある
5 著作隣接権とは何か?
6 著作権の例外規定とは?
7 著作権を侵害するとどうなる

第2章インターネットに関連する著作権
1 動画投稿サイトにアップできるもの、できないもの
2 SNS で外部サイトにリンクを貼るのはOK?
3 パクツイとリツイートの違いは?
4 ブログに本のカバー写真を載せたい
5 動画投稿サイトの動画をブログに表示させたい
6 ネットオークションで写真を公開するのは?
7 他人の文章のコピペは許されない
8 有名人を撮影してブログに載せたら?
9 ダウンロードの違法と合法の境界線は?
10 無断で本をスキャンして電子書籍化してもいい?

第3章仕事に関連する著作権の扱い
1 社内報に新聞や雑誌の記事を転載するのは?
2 地図はコピーしてみんなで使える?
3 プロカメラマンに依頼した写真を流用したら?
4 社内プレゼン資料に著作物を借用したい
5 企画書に他社のキャラクターを使うのは?
6 国・官公庁の統計資料は自由に使える?
7 社内研修用にデータや記事を利用するときは?
8 社内で新聞記事を少部数コピーするときは?
9 買ったCD は店のBGM に自由に使っていい?
10 音楽教室で楽曲を使用する際は?
11 「商用」と「非商用」の違いは?

第4章生活に身近な著作権
1 二次創作はどこまで許される?
2 たまたま写真に写り込んでいた著作物の扱いは?
3 論文やレポートに関わる著作権
4 バンドで他人の曲をライブ演奏するときは?
5 小説や楽曲と同じタイトルをつけてもいい?
6 絵本の読み聞かせに許諾はいらない?
7 料理のレシピに著作権はある?
8 趣味で撮った建物の写真をアップすると
9 ライブで撮影禁止はなぜ? 根拠は?
10 地域コミュニティでカラオケ大会を開催するときは?

第5章アウトかセーフか? 著作権侵害
1 文章の剽窃とオリジナルの境界線は?
2 オマージュとパクリの境界線は?…
3 パロディとパクリの境界線は?
4 偶然の一致と剽窃の境界線は?
5 替え歌、アウトとセーフの境界線は?
6 ダンスを踊る場合、アウトとセーフの境界線は?
7 CD やDVD のコピー、アウトとセーフの境界線は?

第6章著作物を正しく利用する方法
1 「パブリックドメイン」と「フェアユース」
2 著作権があることを主張する方法
3 新しい著作権ルール「CCライセンス
4 CCライセンスで著作者の意思を表示する
5 利用許諾を得たいのに権利者が不明の場合は?
6 著作権トラブルを解決する仕組みと手順


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いしぐろ)


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