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話さずに話し上手と言われるデール・カーネギーの「聞き方」

先日の夜、田舎の高校時代の友人から久しぶりに電話がかかってきたのですが、借金のお願いや宗教の勧誘ではなく、とりあえずは安心しました。
しかし、友人は酔っ払っており、給料が安い、月の小遣いが2万、半分はタバコ代で消える、というところから始まり、夫婦仲や娘の小学校の児童数が増えている、奥さんが「正論」と「WILL」と読んでる、我々の高校の大先輩である櫻井よしこさんの髪型……など、話がとにかくダラダラとりとめもなくて、「早く切りてえ!」となってしまいました。
しかし、その気持ちをグッと抑え、およそ90分間、聞き役に徹しました。
というのも、以前編集した『会話ははじめの4分がすべて』(箱田忠昭・著)のデール・カーネギーのエピソードを思い出したからです。

以下、該当箇所を、本記事用に改編してお届けしましょう。

話し上手は聞き上手

 昔から「話し上手は聞き上手」と言います。
 たとえば、皆さんが営業マンでお得意さんと2人きりで話が行き詰まったときなど、どうしたらよいでしょうか。
 そんなとき役に立つ技術は、とにかく相手が答えやすい質問をすることです。
 そして、相手の話を一生懸命聞くことです。
 聞けば聞くほど相手の情報が入り、のちの会話の糸口や共通点が見つかって、相手は満足し、仲良くなれます。
 また、人はともかく自分の考えやアイディアのみならず、自慢話を聞いてもらいたい生き物です。誰だって自慢話を一生懸命聞いてくれる人に好意を抱かずにはいられないでしょう。

聞き方がうまいと話し上手に見られる

 デール・カーネギーは話し方の第一人者として20世紀最大の研究家でした。
 あるとき、カーネギーがニューヨークのお金持ちの集まるパーティーに出ると、豪華な衣装の若い女性が近寄ってきました。

「失礼ですが、あなたは話し方で有名なカーネギー先生ですか? 私、人前で話す機会も多いのですが、話しベタで悩んでいるんです。ぜひ、話し方のコツを教えていただけませんか?」
「もちろんお安い御用です。その前に奥様、ちょっと耳にしたのですが、アフリカにライオン狩りに行っていたそうですね」
「はい、先月帰ってきたばかりです」
「いや、すごい話ですね。奥様のような妙齢のレディーが、アフリカに行くなんてすごいですね。どなたと行かれたんですか?」
「はい、主人と行きました」
「なるほど。さぞかしご主人は勇敢でお強いのでしょうね」
「ええ、もちろん、主人ほど頼もしい人はいませんわ」
「アフリカでのライオン狩りの話をもっと詳しく話してください。ぜひ、お聞きしたいですね」
「目の前5フィートにライオンが迫って来たときには、さすがに主人とともに……」
「それでどうなりました?」
「そこから銃を?」
「すごいですね。どんな感じでした?」

 この女性はなんと1時間近くも、ライオン狩りの話を続けたというのです。カーネギーは、ひたすら質問を繰り返して、聞き役に徹しました。
 帰り際にこの婦人の言った言葉、これが、私がお伝えしたいポイントです。

「さすがカーネギー先生、とてもお話がお上手ですね。楽しく時間を過ごせました。ありがとうございます」

 カーネギーはじつはほとんど話してはいないのです。
「よい聞き役」となって、ひたすら女性の話を聞いていただけです。
 それなのに「話し上手」という評価をされたわけです。

口ベタに悩んでいる人ほど聞き上手を目指すべき

 雑談でも、何のテーマで話そうかな? 話に詰まったらどうしよう? と、ひたすら話し手としての自分を心配して、自分は「口ベタだしどうしよう……?」と悩む人は多いはずです。
 しかし、カーネギーのエピソードでもわかるように、よく相手の話を聞けば、どうやら相手はあなたを「話し上手」と思ってくれるようなのです。
 先のライオン狩りのエピソードのあと、カーネギーは次のようなことを述べています。

「いやあ恐れ入った。私は一言もしゃべっていない。相手がしゃべり、自分はひたすら聞いていただけなのに、話し上手と言われた」

 口ベタでも大丈夫ということ。
 聞き上手になれば話し上手と思われるという重要な発見を、カーネギーはしたのです。第一人者の言葉だけに、重みがあります。

よくよく考えると、私の電話相手は友人なんですよね。今になって冷静にななると、律儀に傾聴する必要もなかったと、思います。
まあ、友人は多少はスッキリしたと思うので、これでよかったのかもしれません(とりとめもないオチですみません)。

(編集部 石黒)

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