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「元気で明るい子に育ってほしい」という親の素朴かつ、一番難しい願いを叶えるために

私には小学生の一人娘がいます。
才色兼備な親思いの優しい子になってほしい、よりよい社会をつくるような立派な大人になってほしい、中学受験をしてそれなりの学校に行ってほしい、……などと多くを望んでいるわけでありません。ただただ、元気で明るく、朗らかに生きてほしい、と。
しかし、それこそが一番ハードルが高い「願い」なのかもしれません。
なぜなら、多くの日本の子どもの自己肯定感が低いからです。
それも小学校高学年からだんだん自己肯定感が下がっていき、高校生になるころには6割以上の子が自分嫌いになるそうです。
どうしてでしょうか?
そしてどうすれば、自己肯定感の高い子に育ってくれるのでしょうか?
そんな疑問に答える新刊がばなな先生『12歳までの自己肯定感の育て方、その後の人生が決まる』です。

「なぜ、12歳までなのか?」
「具体的にどうすれば子どもの自己肯定感を上げられるのか?」
気になる方もいらっしゃるでしょう。
以下、本書の「まえがき」を掲載しますので、「そういえば、わが子も……」とピンときた方は、ぜひ手に取って読んでみてください。


まえがき 12歳までの自己肯定感の土台づくり

 ぼくは「ばなな先生」と申します。本名の「こばなわ(小塙)」が「こばなな」と聞こえることから、まわりの人からばなな先生と呼ばれています。
 小学校の先生を23年間やって中途退職。現在は妻(ミセスばななと言います)と、「大人には自分の中にある子ども心を取り戻してもらい、子どもには自分のよさをのびやかに表現してもらおう」という目的で設立した「よかよか学院」という学校の校長先生をしています。
 よかよか学院では、「親子のコミュニケーション講座」「親子の自己表現講座」「お母さん向けの子育てに関するお話会」などをしており、これまでのべ1000組の親子が参加してくださいました。そして「子どもの自己肯定感が上がって、笑顔が増えました」「私もわが子の良さを再発見できましたし、自分たちを肯定的にとらえられました」という言葉をたくさんいただいております。

子どもの自己肯定感のターニングポイント

 最近の子どもたちは「元気がない」という声をよく耳にします。
 ぼくが担任を受け持った当初、教室の子どもたちに「自分のこと好き?」と聞くと、なんと6、7割の子どもが「嫌い」と答えたのです。「好き」と答えた残りの3、4割の子どもは「クラスで一番、サッカーができるから好き」「書道で賞を取ったから好き」と条件付きです。
 さて、ここで問題です。他にサッカーのうまい子が転校してきたとき、あるいは翌年の書道の賞に落ちたとき、それでもその子たちは「自分が好きだ」と答えるでしょうか?
 そう、自分のことが簡単に嫌いになります。
 子どもの条件付きの「自分が好き」はもろいのです。
 これに対し、本当に自分を好きな子は、その根拠がありません。「おれだから好き」「いいところ? ぜんぶ」と言います。
 東京都教職員研修センターによる小学校1年生~高校3年生を対象にした、「自分のことが好きですか」という調査(令和3年)によると「思わない」「どちらかというと思わない」 と回答した子の割合は小学校2年生で約20%、ところが6年生になると約40%、中学生では約60%になるという結果が出ました。
 同様の調査はさまざまな研究機関で行われていますが、どの調査も4割~6割が「自分が嫌い」と答え、小学校高学年から中学生になるときから自分嫌いになっていくことが報告されています。いずれも、自己肯定感のターニングポイントが9、10歳の小学校3、4年生になっています。
 9、10歳の子どもは「ギャングエイジ」「10歳の壁」などといわれ、親からすると育てにくいとされています。この時期は子どもから大人への過渡期にあたり、急に大人ぶったり、幼稚になったり、態度がコロコロ変わります。だから親からすると、どう対処すればいいのかわからなくなるのです。
 こうした変化は、脳科学的な解釈で説明できます。10歳くらいの年齢は、見る、聞く、感じるといった感覚や感性をつかさどる脳の部位の成長が完了し、コミュニケーションや主体性、思考を司る「前頭葉」が発達しはじめます。つまり、脳が大人モードに切り替わるのです。当然、子ども本人もその変化に戸惑いますし、うまくコントロールができません。
 また、9、10歳で何らかの通過儀礼を行う少数民族がありますが、経験面においても大きな変化が生まれがちです。リーダーや著名人などの伝記を読むと、この時期に今後の人生の土や根になる経験をしているケースが多いことに気づくでしょう(死別、離婚、病気、あるいは何かを始めたり、出会ったりなど)。
 つまり、こうした大人の入り口に立つ時期は、子どもにとって非常に不安定といえます。そして、自己肯定感が下がる時期とリンクしているのです。

12歳までに自己肯定感の土台をつくろう

 自己肯定感が下がる理由に自己受容が足りないことが指摘されています。
 自己受容は「わたしでいい」「それでいい」と自己の存在を受け入れる感覚や感性のことで、自己肯定感の基礎の資質です。自己受容を育てるには、見る、聞く、感じるといった感覚脳を刺激する体験をたくさんすること、近しい人間に「あなたでいい」と承認してもらうことが大切だと言われています。
 したがって、この9、10歳の時期に自分の存在を受け入れてもらう体験が必要なのです。
「では、小学6年生にあたる12歳では間に合わないの?」と思うかもしれませんが、大丈夫です。もちろん、9、10歳というのは1つの目安であり、個人差や環境の違いがあります。ぼくは小学校の全学年の児童を見てきましたが、12歳でも確固とした自己肯定感の土台づくりに十分間に合います。
 しかし、12歳までの自己受容の体験量が少ないと、自己肯定感を高めにくいのも事実です。
 大人社会では比較、競争といった局面が多いため、自分の価値を他者評価や相対評価によってはかろうとします。自己肯定感の低い人は、つい「自分は○○さんと比較してダメだ」と考えるわけです。すると、自然に積極性や主体性に欠けていきます。
 しかし12歳まで培われた「自分でいい」と思える体験は、多少落ち込んでも「確かに結果としてはダメだったが、自分としてはよくやった」と自分基準で考えることができます。
 見たものを見たままに、感じたものを感じたままに自己受容し、そのうえで表現したものが成功でも失敗でも、「それでいい」と承認された記憶が、困難な局面でも「自分でいい」と思わせてくれるのです。
 自己肯定感の土台をつくるために、本書では親子で取り組むワークを紹介しています。
 見る、聞く、動くといった自己受容を経験してもらうワークが中心です。
 といっても、とても簡単なものばかりです。肩肘を張ってすべてを行う必要はありません。「子どもが喜びそうだな」「楽しそうだな」「簡単そうだな」と思ったものから試してみてください。
 本書を通じて、少しでもお子さんが「自分のことが好き」と思えるようになったなら、著者としてこれに勝る喜びはありません。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(い し ぐろ)

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