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「この翻訳本、超うさんくさい」と思った私に届いた、ベストセラー翻訳者からのメッセージ

何の因果か、まったく縁のなかったフォレスト出版に転職した当初、ある翻訳書をはじめて見たとき、「うわ~」と思ったものです。
何を意図しているのかよくわからないカバーのイラスト、「目立てば勝ち」と言わんばかりのピンクの帯&旭日旗のようなバクダン、その上に載せられているのは、「日本では知る人ぞ知る、米国のカリスマ・マーケター、参上!」という大仰な惹句……。
関西人じゃなくても、「知らんがな!」とツッコミたくなります。
そして、あまりにも人を食ったような、インチキ臭いタイトル。
すべてがいかがわしく、バカっぽい……。

「ああ、オレはこういう出版社に入ってしまったんだな……」と半ば諦念に似た感情を抱いたものです。

その本を開いてみると、原著の構成がヘボいのか、第1章は2ページ。第2章は4ページしかない。それでも章トビラがある、といういびつなページネーション。
やたら改行や1行空きがあり、見出しの種類がいくつかあるものの、その強弱関係がよくわからない……というつくり。
「こんなの、売れるのか?」と思い、「まえがき」を読んでみました。
すると、また違って意味で「何だ!? この本」と驚かされたものです。

ピッ、ピッ、ピーン。
8万6400――
これが一日の秒数だ。
その中で、あなたの持ち時間は3秒。
その3秒で、お客の心をわしづかみにしなけりゃならない。
今の客は、とても飽きっぽい。
それも当然だ。
だってみんな、一日に何千ものマーケティング・メッセージにさらされてるんだぜ。
いちいちそれに反応していたら、おかしくなっちまうだろ。
そう考えれば、客の時間を3秒ももらえるってんなら、ありがたいことだ。
たった3秒で、売り込みはなされ、交渉はまとめられ、大きなビジネスは動き始めるわけだ。
そうだとすれば、あなたは何をするか?
さあ、答えられるかい?
どこぞのビジネスマンっていったって、そのうち99.6%の人は、何をしたらいいのかわかっていない。
いいかい?
さ・っ・ぱ・り、わ・か・ら・な・い・ん・だ。
でも心配無用。
この本が、それをあなたに教えてくれるからな!

原著者がすぐ目の前で語っているような臨場感、感情を揺さぶる語り口……。いかがわしいようでいて、頼りになりそうな兄貴感……。

「すげえ、おもしろそーじゃん!」

率直に抱いた感想です。先に私がディスったデザインやタイトル、構成が、実はすべて緻密に計算されたものなのかもしれない……と思わせるほど、ポジティブな印象にガラリと変わりました。
その本が、次の翻訳本です。

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そしてこれも何の因果か、私が「増補新装版」をつくることになるとは……!

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旧版は絶版、「増補新装版」は書店流通をしておらず、アマゾンでも買えません。購入を希望される方は、上記サイトを御覧ください。

さて、この本に対する私のネガティブな感情を一気に払拭してくれたベストセラー翻訳者の林田レジリ浩文さんが、読者の皆様へメッセージをお寄せくださいました。
「この熱い想い、届いて!」という気持ちで、以下に掲載させていただきます。

『増補新装版 オレなら、3秒で売るね!』
ご購入を考えている方へ林田レジリ浩文より一言

こんにちは。林田と申します。14年前に、幻の名本と言われていたマーク・ジョイナー元アメリカ陸軍将校の本を見つけ、あまりの出来の良さにフォレスト出版に紹介し翻訳をした者です。

私は当時、駆け出しの翻訳家でした。本業がありましたから当時年間何百冊も読んでいたビジネス書、心理学書の原著の中から気に入ったものだけを厳選して売り込み、出版にこぎつけるスタイルでした。本業は保険代理店の経営者でして、仕事を伸ばしていくための必要に迫られて直ぐに役立つ本を次から次へと読んではビジネスに応用していたのです。

今でも覚えているのはジョイナーの原書を読んだ時の、明るい、希望に満ちた、それでいてこちらに挑んでくるようなユニークなスタイルでした。ワクワクしながら読み、読み終えるのが惜しいと思えるような一冊です。とても平易な読み易い本でしたが、本質的な事がサラっと語られていました。そして読み終えた後にはこれを全て商売に生かしてやるぞと奮い立ちました。

それからフォレスト出版への怒涛の売り込みを始めました。こんな本を埋もらせてはもったいない、という一念で売り込み、その思いが通じてか出版社も熱い思いで応えてくれました。

その後の半年、本当にノリノリで楽しく翻訳をしました。白状しますが、これほどノッて翻訳をしたのはこの本以外にはありません。
16年間、翻訳をやって来てつくづく思うのは、本には運命があるという事です。
作者の熱い思いが本に宿り、そしてその本にツキがあれば、多くの人に手を取ってもらい、後世まで語り継がれるような活きの良いものが出来る。
『オレなら、3秒で売るね!』の運命をどうたとえたらいいのでしょう?

すぐにアマゾンベストセラーランキングの3位にまで上り詰め、多くの経営者やマーケターの支持を頂きます。特に商都、大阪での評判が抜群に良いと聞いたのも嬉しい事でした。
それがこの10年、不思議な事に在庫切れになり、以前のように書店で平積みになることはありませんでした。
もちろん、本には力がありますから、その間アマゾンでは数万円の間で取引をされていました、一時期は17万余りの値がつけられたこともあります。

そういえばアマゾンのレビューに「この本はたとえ百万円出しても買うべきだ」と経営者の方が言っていたと書かれていたこともあります。

この度、不思議にも突然出版社からこの本の復刊の話を頂きました。
本が復刊する、なんてどこぞの名作かトンデモ本以外に聞いたことないぞ、これ復刊詐欺か?と思いっきり眉につばをつけながら考えていました。本の運命にしても劇的過ぎるし。

それでも聞けば、編集者の熱意は本物でした、そしてただ単に復刊するだけでなく、当時ノリですっ飛ばしていた個所もしっかりと載せ、「増補新装版」として出したいというのです。

こちらもそれを聞いてすっかりやる気に(元々ノリがいいもんで)なり、読み返してみましたが、そのスピード感というかグルーブ感に圧倒されました。とても自分が訳したものとは思えないものでした。
それを可能にしてくれたのはやはりジョイナーの原書が持っていた力でしょう。

私もこの本のお陰(と言い切っていい)で、この大変な世の中で今も商売を楽しく続けることが出来、利益も1.6倍に伸ばしました。
ぜひ、あなたもマークジョイナーという鬼教官を傍らに置いて楽しく、わくわくとご自身の人生とビジネスに役立てて下さい。

〈林田レジリ浩文〉
実業家、翻訳家。早稲田大学社会科学部卒業。母国語並みの英語は独学で身に付ける。
保険代理店を経営する傍ら、商売上の必要に迫られて20代の頃から数千冊の心理学、自己啓発、ビジネスの原著を読み漁る。
2005年から始めた翻訳家の仕事は、そんな本たちの中でこれはと思うものを多くの人に読んでもらおうと自ら出版社に売り込んだのが始まり。
今まで翻訳した全ての本はそうやって自ら企画し、売り込み、翻訳出版したものである。
レジリというペンネームの由来はメンターであり家族であり処女作の著者であった故アル・シーバート心理学博士のライフワーク、レジリエンシ―の研究から取った。
翻訳書に、『オレなら3秒で売るね!』の他『逆境に負けない人の条件』『凹まない人の秘密』、特にハイディ・グラント博士の名著を翻訳した『やり抜く人の9つの習慣コロンビア大学の成功の科学』『やる気が上がる8つのスイッチ』はシリーズ20万越えの大ベストセラー。年末の必ず読むべき二冊の本と呼ばれる。

最後までお読みいただき、あいがとうございました。

(編集部 石黒)


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