見出し画像

【開催レポート】はんのう森林みらい塾公開セミナー vol.1「はしらベンチが未来を変える!」

はんのう森林プラットフォームは、埼玉県飯能市で森林に携わる林業家や山主、企業や公的機関とともに、持続可能な森林活用を目指し、新しい枠組みを構築するネットワークづくりの場として、2023年8月に誕生しました。
森林や林業、飯能の自然保護・活用に関する情報発信のほか、将来の飯能林業を担う若手育成のため「はんのう森林みらい塾」を開講し、森林と関わる働き方や起業支援を行っています。

活動2年目となる2024年度はこれらの活動に加え、林業とその他の業種や一般市民をつなぐ取り組みとして、「はんのう森林みらい塾公開セミナー」を企画し、より多くの人に、飯能の森の未来に関心を持っていただく機会を提供していきます。

2024年6月9日(日)、飯能市市民会館小ホールにて開催した第1回の公開セミナーでは、地元企業である西川バウム合同会社の浅見有二氏を講師に招き、同社製品である「はしらベンチ」開発秘話や循環型森林活用のあり方について話を聞きました。

浅見 有二 氏 (西川バウム合同会社 代表社員)

山と街、人と自然をつなぐ「はしらベンチ」

講演はまず「はしらベンチ」の組み立て実演から始まりました。

組み立てが簡単でメンテナンスによる長期使用が可能な「はしらベンチ」

「はしらベンチ」は、現在多くの街の公共施設や商業施設、駅構内など、さまざまな場所に設置されています。間伐材を有効活用できないかという問いから、「柱材を天然乾燥しながらベンチとして使う」という発想に着眼点を得て開発された商品です。
通常、ベンチの脚に当たる部分は鉄で作ることが多いのですが、はしらベンチは、座面を支える支柱も黒く塗装した木材でできており、すべて間伐材を利用しているそうです。

組み立て式で簡単に設置できるだけでなく、「レンタル商品」のため定期メンテナンスが入り、部品を交換すれば長期間にわたって品質を維持したまま使用することができます。
さらに、回収された木材はそのまま家の建材や家具に、傷んだものでも加工してウッドデッキやガーデニングフェンス、ウッドチップなどへ二次利用されます。
飯能市のおよそ75%をしめる広大な森林の健全化に貢献し、地元名産の「西川材」を持続可能なサイクルで活用することを体現させた、山と街を、人と自然をつなぐベンチです。

……といった製品の概要が語られるうちに、ものの2分もたたず、ベンチが完成しました。

循環型社会の実現のために

はしらベンチは「木を活かす・木と生きる」がテーマです。

浅見氏は、SDGs目標の達成に向けて山と人と街をつなぐにはどうしたらよいかと考えたとき、一連の取り組みを「木活」という言葉で表現することにしました。
長い時間サイクルで動く山の木々において、植え、育て、使い、また植えていく……という作業工程は必要不可欠です。しかし昨今、使いきれない木が増え、そのために新しい木が植えられない悪循環が問題となっており、飯能市でもその課題に直面しています。

まずはこの問題を1人でも多くの人に知ってほしい。同時に、使いきれない木材を有効活用したい。その二つを実現するため、在庫余剰となっている柱用のヒノキの角材を、製材したそのままの状態でベンチの座面へ転用するというアイデアが生まれました。
表面を塗装加工していないため、木の質感に直接触れられるだけでなく、ヒノキの香りまで感じることができます。

また、木材には二酸化炭素を吸収し固定化する性質があり、はしらベンチ1台につき60kgの二酸化炭素の固定能力を有するとされています。はしらベンチ200台で使用する木材の量は、家を1軒建てるときに使う木材の量とほぼ同じです。それらを6カ月ごとに入れ替えるため、木材の使用量は必然的かつに増える計算となり、二酸化炭素を継続的に固定化させ、地球温暖化防止に寄与することができます。

間伐材の持続的循環サイクル(西川バウム合同会社提供)

現在飯能市内で100台、市外に300台ほどが貸し出されていて、日々メンテナンスが行われているそうです。公共施設内のほか、最近では川沿いの遊歩道など、屋外に設置されることも増えました。
耐久性と定期メンテナンスによる持続性・安全性が両立するだけでなく、温暖化対策や循環型社会の実現にも貢献できることから、各地の自治体からも喜ばれています。

はしらベンチが未来を変える!

はしらベンチ普及活動の根底にあるのは、西川材の魅力と林業の課題を1人でも多くの人に知ってもらいたいという願いです。その一環として、飯能市だけでなく市外・東京都心のイベントへも積極的に出展しています。

プロジェクト発足当初は実現が難しいかもしれないと思われた定期メンテナンスや木材の入れ替え作業も、様々な困難を乗り越え、現在各地から導入希望のオファーが相次いでいる状況です。
現在、大型ベンチだけでなく、省スペースでも使える休憩椅子や各種サイズ展開など、多様な形態での製品開発も計画されています。

浅見氏は、こうした活動が、西川材の知名度向上と地域課題の周知だけでなく、生産者のもとに利用者からの声が届くことによって、彼らのやりがいと林業の活性化につながることを期待しています。

浅見氏は、「目標に向かって自分ができることを少しずつ積み重ね、例えば10年後、少し結果が出て、仲間と『昔より楽しく仕事ができているね』という話ができる。そんな未来の変え方に、ちょっとでも貢献できればいいなと思う」と述べました。

はしらベンチの活用事例について紹介する浅見氏(右)
左はファシリテーターの大竹悠介氏(西埼玉暮らしの学校代表)

当日は会場に市民ら30人が来場。飯能市議会議員、地元選出の埼玉県議会議員の姿もあり、飯能の林業の未来について一緒に考えることができました。

参加者からは、「たいへん興味深い内容だった」「従来の考え方を捨てて、一から考え直すという姿勢は、木材利用に限らず、多くのことに通じるものかと思った」といった感想や、「和室用はしらベンチが欲しい」といった要望も寄せられました。

本セミナーの模様は、飯能森林プラットフォーム公式YouTubeチャンネルにて全編配信しています。また、9月21日(土)には今回と同じ飯能市民会館にて、第2弾として「未来の森を今つくる:森での起業を知る~森林起業概論~」の開催を予定しています。

はんのう森林プラットフォームでは、これからも市民のみなさんに飯能の林業・森林について、またその“みらい”と有効活用についてともに考えるための企画を提供していきますので、どうぞご期待ください。

YouTubeにて全編動画配信中!

▼下記QRコードからもアクセスできます。

はんのう森林みらい塾公開セミナー vol.1
「はしらベンチが未来を変える!」開催概要
【講師】浅見 有二 氏(西川バウム合同会社代表社員)
【日時】令和6年6月9日(日)13:00~14:30
【会場】飯能市市民会館 小ホール
【主催】はんのう森林みらい塾(はんのう森林プラットフォーム)
【後援】飯能市/飯能市商工会議所/飯能信用金庫/
    (一社)奥むさし飯能観光協会/飯能市商店街連盟
【協力】西川バウム合同会社/奥むさしロングトレイルレース大会事務局/
    飯能イーストコート


公開セミナー vol.2「未来の森を今つくる:森での起業を知る~森林起業概論~」開催決定!

はんのう森林みらい塾公開セミナーの第2弾を9月21日(土)に開催します。今回は「森林起業」がテーマ。林業・森林にふだん接点のない方も、興味尾をお持ちの方ならどなたでもご参加いただけます。

はんのう森林みらい塾公開セミナー vol.2
「未来の森を今つくる:森での起業を知る~森林起業概論~」開催概要
【講師】中間 康介 氏(株式会社GREEN FORESTERS 取締役CSO)
【日時】2024年9月21日(土)15:00~17:30 (開場14:50)
【会場】飯能市市民会館 大会議室
【主催】はんのう森林みらい塾(はんのう森林プラットフォーム)
【後援】飯能市/飯能商工会議所/飯能信用金庫/
    一般社団法人奥むさし飯能観光協会/飯能市商店街連盟
【申込み】こちらのメールフォームからご予約ください。


< 本記事に関する連絡先 >
はんのう森林プラットフォーム事務局
URL https://forestplatform.net/



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?