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こどもへの憧れというまなざし

学校に来られない子がどうしてかのこさんには参加し続けることができるのですか?

率直で難しい質問だと思いました。

視点の切り口はいろいろ

難しい理由は、まずもって視点がいろいろあるということ。
この話一時間はできてしまうな、みたいな感じです。
それと、「なぜかのこには参加できるの?」の問いの裏に何があるかによって答えやすかったり答えにくかったり。
少々嫌悪感の入り混ざった感じでこれを聴かれることもあるのです。
その問いの裏には、学校のどこがそんなにダメなの?かのこに通えるなら学校にも通えるんじゃないの?だった場合、
かのこに来られる理由を話すと、学校否定として受け取られかねないと感じるので、配慮が必要で話にくくなったりします。
それと発展が感じられない話に進んでしまうことも多かったり・・・

または、問いの裏に、「その子の問題でしょ?」がある場合、
こどもの問題じゃない部分を説明すればするほど、実相から離れていく心配もあるのです。
こどもの問題というとらえ方はしていないけれど、
個性由来で学校行かない選択をすることもあるわけで・・・

そして、こういう話題に共通するある視点を私が持ち続けていることがようやく整理できてきました。

疎外状況

疎外状況について、10代の頃からか?もしかしたらそれ以前の子ども時代から私はテーマとして生きてきたのかもしれません。
一言で言ってしまえば、
「メインストリーム(主流の、主要な、普通の)」から何等かの理由で自分がそのコミュニティに居ながらにして、外れていると感じる状況のことです。
そのテーマはありとあらゆるものがあります。
ひとり親家庭、きょうだい児、外国籍、宗教、部落出身、アレルギーなどなど。

疎外状況が私のテーマとなる理由は、
知的障碍の方とよくかかわってきたからかもしれないですし、
そもそも関わろうと思った根底には、一年生の時に、Mくんとの出会いがあったからかもしれません。
一年生の時のこと、何一つ覚えていないのに、Mくんと運動会で踊った「お花サンバ」だけは、情景から、踊りの動きもメロディも、歌詞もいまだに覚えているという大切な思い出です。
自閉症のMくんと私がペアになることが、きっと先生から観て良さそうだと思ったのだと思います。
末っ子で弟か妹がずっとほしかった私にとって、弟分のような感じでもありました。
そして何より、彼の独特な表現や表情に興味深々でした。
どうしたら、ペアの踊りが楽しく無理なく、達成できるのか、おそらくとても張り切って臨んだのだと思います。
6年間一緒に過ごしたので、
大人になってMくんに再会した時、
あまり私を覚えてない様子だったリアクションが寂しかったほど、
私には大切な思い出です。

話を戻すと・・・

疎外状況は誰しもあるもので、そこに一度でも自覚的であったことがあるかどうか、が学校離れを捉える時の鍵になると思うのです。
自分の疎外状況を棚に上げて、メインストリームに乗っているつもりになって、疎外感や自分の傷つきに蓋をして先送りしていると、
学校離れの本質を同じテーブルで語るのが難しいのです。

そう考えると、
かのこスタッフはみんなこの「疎外状況」に自覚的な人たちです。
状況は違っても、構造が同じであるため、話が伝わりやすく、余分な鎧なく、本質に近づきやすいと私は感じています。

こどもに憧れをもって接する

昨日、私は活動がお休みで、帰りに少しだけ顔を出しました。
熱心に語るメンバーさんたちの声が聞こえてきて、
雰囲気の良さがにじみ出ていました。

終わってからミーティングをするという決まりはないのですが、
スタッフ4人がなかなか帰らない!(笑)
この後の予定もあるというのに!!です。
今日起きたこと、メンバーさんたちの様子を共有したい機運が高まっていました。
こどもたちが可愛くて仕方ないこと、
成長を眩しく観ていること、
こどもらしさを慈しんでいること、
それらがどうして起きているかの枠組みや流れの話題・・

「こどもたちへの憧れ」を持って接しているというのが、
根底にあることを強く感じました。

スタッフ間で回覧していた私の本が手元に戻ってきました。
『いま、ここで輝く。』

特に第4章が好きで、読み直しました。
フィリピンのセブ島に井本陽久さんが通っている理由が綴られている章です。
児童養護施設にナナイと呼ばれる、その施設で生涯を捧げる養母さんのことが語られています。
そのナナイは31年間の間に、41人の子どもを育て、今は病気で引退しているけれども、井本さんのことも、こどもの一人であるかのように想っている人の話です。
そのナナイが子育てについての「愛」を語ることについて、
井本さんが最後にこんな風につぶやいています。

「ナナイが言っているのは結局、子どもという存在のすべてをありのままに受け入れるという、たったそれだけのことなんですよね、きっと。
頭では理解できても、実際にはなかなかできないことなんだけど・・・」

『いま、ここで輝く。』おおたとしまさ著

かのこの活動も、こうした部分にどんどん集約されていくといいなと感じています。
そして、どうしてかのこさんには通えるの?もシンプルに伝わる社会を願っています。

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