天国のような果ての島「波照間島」に向かったはずが、終わらない無限地獄だった件~コムカノday28
プロローグ
俺は、あの体験を一生忘れないだろう。
人生で、これほどの体験はなかった。絶対に忘れない。
今までの思い出が、頭の中をぐるぐる回った。ここが俺の終着点なんだろうか。
俺は、バケットリストを書き始めてから、どうしても行きたい場所が、波照間島だった。果ての島って響きがとても魅力的だった。ほんとは、何もかも失ったときに、一人でふらっと行って、一週間でも二週間でも、俗世から離れて、自分を見つめなおし、ヨルシカの「ノーチラス」を聞きながら、心行くまで泣こうと思っていた。
しかし、一人旅も悪くないが、中学時代からの仲間で行くのも悪くないと思い始めた。そう、最後の旅行になるかもしれない4人の旅行先は、まさに果ての旅、波照間島がぴったりだと。
モーニングは、石垣島のbreakfasthotelだ。
ホテル名の通り、とにかく朝食が豪華。俺は、海鮮丼、八重山そば、石垣牛ローストビーフ、石垣牛カレー、ゴーヤチャンプルー、石垣ミルクジェラートなどなどとにかくたくさん食べて満足した。それが命取りになることも知らずに。
波照間島までの2時間の船旅
船旅かあ。いいねぇ。
俺はワクワクしていた。しかし30分後そのワクワクは恐怖へと変わった。
ザッパーン、ゴーーーーー、ぎったんバッタン
え?え?
めちゃくちゃ縦揺れするやん。
俺は思い出した。ディズニーのスプラッシュマウンテンも、よみうりランドのバンデットも、富士急のフジヤマも、水上でしたバンジージャンプも、やってきた俺が唯一ダメなもの、
バイキングだ。
あれだけは、ほんとダメ。5分ほどのライドでも気持ち悪くなって、は○たほどだ。これが2時間続くということは・・・・
終わらない船無限地獄編に突入ですやん。
すぐさまトイレにダッシュ。そこで何が起きたか言うまでもない。トイレでも揺れる→○○→出ようとしても揺れる→○○の無限ループを続け、なんとか洗面台でうがいするも、大きな揺れでそこから動けない。
汗もじっとりとかいていて、脱水症状の前兆症状、めまいがしてきた。
(ああ、俺ここで死ぬのかなぁ。やだ、まだしたいことがたくさんあるのに・・・。)
今までの思い出、そして起こりうる理想の未来が、頭の中をぐるぐると回った。
ああ、あんなに食べなきゃよかったなぁ。まさかバイキングしたら、ばいきんぐでやられるなんて、なんて皮肉なんだ。
カレーを思い出して、またトイレに直行した。
またも洗面台に戻るも、昨日眠れなかったのもあり、だんだん、意識がもうろうとしてきた。そう、○○のも体力を使うのだ。20回は○○ただろうか。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
ガチャ
・・・ああ、まずい。洗面台を譲らなきゃ・・・・頭ではわかっていたのだが、体が動いてくれない。
死にそうな目で顔を上げると、
そこに鎌田がいた。
最後の力を振り絞ってこういった。
「・・・かまた・・・・水・・・・。」
気が付くと、鎌田はいなくなっていた。これは蜃気楼だったのだろうか。
ふたたび、大きな揺れで意識が飛びかけた時、
とん
飲みかけの冷たい麦茶が、目の前に置かれた。
無我夢中で飲んだ。体に水分が染みわたってく気がした。眠っていた細胞の1割が目を覚まし始めた。
「・・あり・・・がと・・・・」
鎌田は振り向かず無言で、トイレの中に消えていった。
あいつクールだな。かっこよすぎるだろ。
「うおおおおおおおおえええええ」
中から、獣の咆哮が聞こえた。
後船談
ぐるぐるしていた頭が、いつのまにかおさまった。
「・・・・生きてる・・・・」俺は、気づけばトイレの床でうずくまっていた。
後で聞くと、乗客の8割が大きな揺れで、席を動く余裕もなく、係員から渡される黒い袋で、無限○○地獄にやられていたらしい。
だから、乗船早々にやられ、トイレになんとか行けた俺は不幸中の幸いだったのかもしれない。
ちなみに、鎌田も、死にそうになりながらトイレにたどり着いたのに、瀕死の俺に「水」と言われ、無視しようと思いながらも、揺れる船内をなんとかさまよい、俺のバッグから麦茶を探し当て、持ってきてくれたそうだ。
鎌田は命の恩人である。ちなみに、後ろの人からは窃盗犯と思われたらしい。
船から降りた後も、俺は2本の脚で歩くことができないほどだった。
プルプル震えながら、はいつくばっている俺に、
中尾が笑いながら一言。
生まれたての小鹿だなwwwwww
というわけで、波照間島に行く同士にこれだけは伝えておこう。
1 船に乗る前にバイキングはするな!地獄のバイキングになるぞ。
2 1時間前に絶対酔い止めを飲め。
3 船の後ろの真ん中の席は、揺れが少ない。トイレにも近い。
4 そもそも台風が近くに来てたら、船に乗るな。バイキング乗れるようになってから出直してこい。
5 酔って死にそうな人を笑ってはいけない。
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