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水窪町・常光寺山 春の山歩き、森歩き ~その1 臼ガ森集落はどこに~

 さて、今回も先日行った山と森の話を。

 今年の春は来るのが早い。いつもはゴールデンウィークの頃に咲いている里のフジの花がもう咲いている。ということは、山の春も早いのに違いない。まだ見たことのないあそこやあそこの春の景色を見ておかねば、と心は急かされた。

 ということで、浜松市の最北端、信州・長野県との境に位置する水窪町(みさくぼちょう)の常光寺山(じょうこうじさん 1438.5メートル)へ出かけた。麓の水窪町周辺はウツギやヤマブキなどの花盛りだろうが、標高の高いところへ行けばまだまだ早春なのに違いない。冬の寒さがようやく緩み、草木や動物たちがいよいよ動き出した頃だろう。

 今回は、おそらくメインルートであろう標高1100メートルあたりの山住神社北側のスーパー林道沿いの登山口ではなく、25000分の1地形図に記載がある、麓の水窪町・臼ガ森(うすがもり)集落からの道を選んだ。この道を登れば、標高差およそ1000メートルの、さまざまな植生の森を見ながらの山歩きができるかもしれない、と考えたからだ。

 地図には数軒が描かれているにもかかわらず、あったのは2、3軒の家屋だけで、ここがほんとうに臼ガ森なのだろうかと、車を降り、たまたま畑作業をしておられた方に恐る恐る「ここは臼ヶ森集落ですか?」と聞くと、そうだと言う。さらに、「常光寺山への登山道がこの辺にありますか?」と尋ねると、分かりにくいから、と言って丁寧に道案内をしていただけることになった。確かに山の斜面に作られた畑の間を通る細い道がそうだったので、案内してもらわないと取り付けなかっただろう。いま思うととても恵まれたことだった。

 道案内を買ってくださったその方は、生まれがこの臼ガ森で、普段は浜松の街中に住んでおられるのだという。以前は山仕事などがあったのかもしれないが、いまとなってはここで生活の糧を得るのは難しいのだろう。なにせ、水窪町自体が浜松市街から車で2時間の山に囲まれた谷間の小さな町である。地図には数軒の家が描かれていたが、実際は廃村に近い集落だったのだ。それでも道案内をしてくだっさた方は元気はつらつとされており、いまでもここでの暮らしを楽しんでおられるように見えた。

 丁寧な道案内を受けながら、畑にシカがたくさん現れて困る、去年は飼っているミツバチの巣を狙ってクマが出た、今年はまだヒルが出てこなくていい、などという話も聞いて、いよいよ登山道へ取り付いた。

                               つづく

 

 

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