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ラ•リーガ クラブ列伝 GO! GO! マッスル! ヘタフェ

皆さんはサッカーを観ていると、相手が肉弾戦を仕掛けてきてイライラしたことはないでしょうか?現代は下位クラブでもしっかり繋ぐサッカーをするため、その機会は少なくなりました。しかし、だからこそ肉弾戦を仕掛けられた時のイライラは今まで以上に感じやすくなっているのではないでしょうか。

自チームのプレイヤーが突破に成功して、「きたきたきたぁぁ!」という瞬間に首に手をかける、ユニフォームをつかんで、転がす。イエローカードも戦術の内。自分がファールをしたはずなのに、自分も痛がってプレイ時間を故意に削る。もうサッカーしろ!と画面に叫びたくなる、というか叫んでる。深夜の時間帯なので家族に怒られる。というオチを経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は肉弾戦で相手をイライラさせることでは、欧州5大リーグでは右に出る者がいないヘタフェというラ・リーガのチームをご紹介します。本稿のお品書きは以下の通りです。

1:クラブの特徴 欧州一の黄色紙野郎

肉弾戦の激しさはファールの多さに表れ、それはやがてイエローカードの多さに表れます。そのイエローカードの枚数が5大リーグ各々で最多となるクラブを比較しました。他のリーグが40枚前後で大人しくしている(?)中、ヘタフェはな、な、なんと60枚!毎試合ほぼ4枚というハイペースでイエローカードを頂戴しているのです。

サッカーのフィールドプレイヤーは10人。GKと交代枠も含めて16人。最初の試合で4人イエローカードを頂戴し、次の試合でも同じプレイヤー4人イエローカードを貰ったら、スカッドの1/4が累積警告で出場停止となる中々ハイ・カードリスクな戦略です。

しかしながら、ただカードが多いだけではないのがヘタフェの凄いところです。これだけカードをもらっていれば、リーグのイエローカードのランキングはヘタフェの選手で埋まっていそうなものです。実際は、上位24人の内、3人しか入っていません。同じく脳筋サッカーを繰り広げているカディスは4人入り、しかも枚数トップ3に全て入っています。

※2023/12/15時点

つまるところ、一人のプレイヤーが連続でイエローカードをもらうチョンボをしないように、全員が意思疎通しながらファールを犯しているのです。こうしたインテリジェンスあふれる確信犯的な肉弾戦をしかけることにより、ヘタフェは9位(12/16時点)とテーブルの前半に収まる好成績を収めています。

2: クラブの経営 放送権頼みの激弱体質

肉弾戦をしかけられる相手としてはイライラすることこの上ないのですが、これには致し方がない事情があります。

ヘタフェの予算を見ると明らかですが、収入の94%、ほぼ全てを放映権に依存しています。つまり、2部に落ちたが最後、収入が激減してしまう売上構造になっています。

では、頑張って入場券など試合での収入や会員からの会費を上げればいいのではないか、と思われるかもしれませんが、そうはいきません。

ヘタフェがホームとするヘタフェは人口僅か18万人。以前ご紹介したJ1ホームタウン人口ランキングに当てはめると、圧倒的な下位です。イメージは鳥栖が近いと思います。(ちなみにJ2のホームタウン人口の最下位は藤枝ですが、それでも44万人とヘタフェの倍以上あります。)

更にヘタフェはマドリード州にあります。おのずと人気はレアル・マドリード(Rマドリー)、アトレティコ・マドリードに集まってしまいます。こうした中でソシオを増やすのは容易ではありません。必然、降格したら即破綻とならないように、結果の不確実性が低い肉弾サッカーをせざるを得ないと考えられます。

3: 後半戦の注目 葬送されてたまるかグリーンウッド

長くサッカーを見られている方は、ご存じの通り肉弾サッカーで残留を勝ち取るためには、少ないチャンスで仕留められるFWが必須となります。
その点、今シーズンはボルハ・マジョラルの爆発に助けられています。12/16時点でリーグ2位、ベリンガムに次ぐ9得点を挙げているのです。

https://www.laliga.com/en-GB/stats/laliga-easports/scorers

レアル・マドリードの下部組織で過ごし、トップチームにも定着できず、レバンテへのレンタル生活を経て21-22シーズンにヘタフェへ加入。22/23シーズンは主力として定着し8得点という中々の苦労人です。

彼がボールを受けるときは、サポートに乏しく敵に囲まれていることが多いのですが、そこで失わないテクニックと上がってきた味方にボールを預けれる視野の広さも兼ね備えています。26歳と脂の乗っている時期だけに、後半戦もかなり期待できる選手です。

だが、今季のヘタフェにはビッグネームがイングランドから加わったことを皆様お忘れにならないでください。

その名は、メイソン・グリーンウッド!暴行疑惑に伴う長期出場停止(その後、無罪の評定)により、その名はすっかり地に落ちたように思われますが、ヘタフェにレンタルで加わり捲土重来を図っています。

シーズン開幕直後こそプレイ時間は長くありませんでしたが、フル出場も増え始め、11月は1ゴール2アシストと中々の成績を残しています。そのかいあって、なんとファンからはバルセロナ加入候補としても挙げられるようになっています

金欠バルサだけに、市場価値が500万ユーロと激安なグリーンウッドは魅力的かもしれません。ユナイテッドがそんな低額で手放すとは思えないのですが、こんな話がでる位にリーガでは評価されています。

プレーも昔のようにC•ロナルド張りに切り込んでいくドリブルだけでなく、クロスという選択肢も混ぜるようになりました。また、試合の途中に右ウイングから左ウイングにスイッチして対応する器用さも身につけています。

このままいけば、かつての角度がないところからの絶品シュート(ゴール)も見られるかもしれません。

そうなると、肉弾でボールを刈り取った後のヘタフェには、真ん中のマジョラだけでなくル、ウイングのグリーンウッドとという選択肢が増えます。こうなるとレベルが一段階上がり、ビルバオがやっているようなソリッドなサッカーをする厄介なチームになるでしょう。

後半戦はグリーンウッドとともにヘタフェの進化が明らかになるかに注目です。では、本日もよいフットボール生活を!

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