認知科学の視点からで見るサッカー

サッカーは難しい、なぜ難しいか
難しいということは必ず何かしらの問題があるはず。問題とは現状と望んでいることが一致しない場合のこと。問題を解決するためにはこの二つの状態が一致することだと考えていいはず。

つまり、問題解決には初期状態と目標状態がなければならない。サッカーでは初期状態を試合開始とし、目標状態を試合に勝つこととするだろう。そしてこれは初期状態から目標状態までが通常の問題と比べてかなり遠い位置にある。ここが難しさの一つでもある。では、どうすればよいか


じっとしていても目標状態にはたどり着かないので、普通は状態を変化させる。
そのためにオペレータ(オペレータとは状態に変化を加えるもの)を有効に活用しなければならない。しかしオペレータにはオペレータ適用制限がある(ゴール前でフリーな味方というオペレータを使えればいいが、通常ある時までマークされていて使えない)
なので、初期状態でも使えるオペレータを使って行くしかないが、オペレータを適用するとまた新しい状態が生み出される。
そうすると問題空間が生み出されるわけだが、サッカーが難しい理由がここにある。
例として一般的な問題、ハノイの塔のパズルを用いるが、ハノイの塔のパズルでは起こり得るゴールが27個存在する。そしてそれを表した図は迷路と似ている。こうした意味で問題解決は迷路で良い道を探すこと、探索することとみなすことができる。しかしサッカーの場合は起こり得る目標状態(結果とも言える)はほぼ無限に存在する(大きく分別されるにしても数が多い)つまり、途方も無い迷路を探索することがサッカーと言える。

先程ハノイの塔のパズルで起こり得る27個の目標状態を表した図は迷路と似ていると言ったが、実際これを見ている我々は簡単に一直線で目指すべき目標状態まで辿り着けるが、実際プレーしている人間はそうではない、手探りで探索を進めていくことになる。
一発でサクッと解ける人はそうそういない。
そこで人間はどう探索しているかというと、しらみつぶしの探索ではなく、人は必ず正しいとは言えないが大体これにしたがえば解決できる方法用いて探索しているはずである。
これはヒューリスティクスと言われている。
例えばサッカーで言えば原則などにに当たるだろう。
ハーフスペースを有効に活用すればチャンスが生まれる。DFラインの背後でフリーになればチャンスである。
こういったヒューリスティクスを用いて途方も無い迷路から活路を見出そうとしているわけである。
後方にフリーな味方にパスするのではなく、前線でフリーな味方にパスするのでは明らかに後者がチャンスになるため、前線のフリーな選手というオペレータを選択するが(特殊な場合を除いて)これもヒューリスティクスによるものである。

しかしこのヒューリスティクスはその場の情報のみに基づいて判断しており、先の見通しを立てれていないので、うまくいかない事も多い、先程の特殊な場合がそうだが、サッカーでは特殊な場合で溢れている。そもそも前線でフリーな味方が現れることは少ない。
つまりヒューリスティクスにおける判断のみだとDFにインターセプト、あるいは対応されてしまう結果に終わってしまうだろう。これでは目指すべき目標状態にはたどり着けない

そこでニューウェルとサイモンは解決するために手段ー目標分析という新たな方法を提案した
それは
1 現状と目標状態との間にある最も大きな差を見つけ出す

2 差を消去する

3 差を消去するオペレータを探す

4 そのオペレータが今使えるかチェックする

5そのオペレータを使える状態をサブゴールときて2に戻る

ポイントはサブゴールを設置するという点である。
つまり、オペレータ適用制約のためオペレータが使えないというときに、そのオペレータを使うための副次的なゴールを設置するというものである。

これはサッカーに置き換えるとわかりやすい

1 おそらく試合に勝つという目標状態において現状との差はおそらく点を取ることであり、それは相手の守備であると思う

2 差を消去する、つまり相手、ディフェンスを消去する、つまり崩すということになるだろう

3 差を消去するオペレータ、ハーフスペースに位置する味方や、ゴール前にいる味方などが挙げられる

4 フリーになっているか、パスを受けれる状態かを見る

5 サブゴールとして相手の守備組織をズラすだったり、その前のビルドアップや前進の設計がこれにあたる


このようなヒューリスティクスを使うと途方も無い迷路の中からゴールの方角が少し制限されたように思える。
まるで地図が与えられたかのように。


みなさんお気づきですか?


地図で思いついたかと思いますが、これの話はゲームモデルと非常に似てるのです。

前述した通り、サッカーは初期状態と目標状態との差が大きく、しかもその過程で目標状態となるものがあまりにも多いため非常に複雑で難しい迷路になっているのです

そしてそれを少しでも目標状態にたどり着けるように人間が普段行なっていることを認知科学の視点から掘り下げ、ヒューリスティクス等を用いで解決する手段を提案してきました。

しかしこれは皆さんご存知のゲームモデルと非常に似ているのです。
サッカーという迷路のなかに基準、指針という地図を与えるゲームモデル

ここまで読んだ方はゲームモデルの重要性が改めてわかったかと思います。

プレイヤーは答えのわからない状態で途方も無い難易度の高い迷路のなかにいます。おそらくこの状態では何をして良いのかも分からず迷路を楽しむことはとても不可能でしょう。
そのようなプレイヤーに少しでもゴールを探索するキッカケや、ゴールの手がかりを外から見ていて迷路をわかっている我々が中のプレイヤーに提示し、迷路を楽しんでもらえるような状態にしてあげましょう。

そうすればサッカーという迷路をより楽しめる選手が増えると思います。

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参考図書 

教養としての認知科学

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