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バスのあれこれ

運転手のすぐ後ろの、少しだけ高くなってる席が俺のお気に入りだった。
そこに座って、歩行者を見下ろして悦に浸るのがバスに乗るうえで、大きな楽しみでもあった。
しかしこの特等席はここ数年、パンデミックのせいで完全に封鎖されてしまっているので、仕方なしに後方の2席シートに腰を下ろすことになるわけだが、やはりどうにもこの場所は落ち着かない。

俺の後ろに座る初老のサラリーマン風貌の男の、或いは横に座る子連れの女の、はたまた、俺の前に今にも倒れそうにゆらゆら揺れながら立っている老婆の視線が、俺を安心から遠ざける。
早くあの席に、俺は戻らなければならない。然もなくば、


コロナ禍真っ只中の時期に書いた文章です。
最近、友人の家に出向くために久しぶりにバスに乗ったのですが、僕のお気に入りは依然として使用不可になっていました。
いつになったら座れる日が戻ってくるのでしょうね。


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