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Lo-Vacation の鈴木がお送りしております。

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最近の記事

LO-Vacation新聞に寄稿した短編

彫り師の友人と古着屋を営んでる友人と私の3人でLo-vacation newspaper なるものを不定期で刊行しております。 今回はその記念すべき第一回に寄稿した短編、陰翳痛罵を紹介します。 以下。 駅を出るとすでに日は沈んでおり、新宿を出るまでアスファルトと特大セッションをしていた雨は、気まぐれな猫のように何処かに消え去っていた。 その日は、昼過ぎに目覚めてそのまま起き抜けに和田誠の展示を見に行ったので、朝から何も食べていなかった。いい加減空腹にも耐えかねるので、何かテ

    • バスのあれこれ

      運転手のすぐ後ろの、少しだけ高くなってる席が俺のお気に入りだった。 そこに座って、歩行者を見下ろして悦に浸るのがバスに乗るうえで、大きな楽しみでもあった。 しかしこの特等席はここ数年、パンデミックのせいで完全に封鎖されてしまっているので、仕方なしに後方の2席シートに腰を下ろすことになるわけだが、やはりどうにもこの場所は落ち着かない。 俺の後ろに座る初老のサラリーマン風貌の男の、或いは横に座る子連れの女の、はたまた、俺の前に今にも倒れそうにゆらゆら揺れながら立っている老婆の視

      • はじめに

        いつからだろうか。はっきりとは思い出せないが、気が付けば僕は、公園で友人たちと鬼ごっこに興じることはなくなっていた。あんなに夢中になって集めていたキン消しも今はどこを探しても見つからないし、毎日のように履いていた細身のデニムパンツだってめっきりタンスから出てこなくなった。そして、胸が張り裂けるほど思い続けた人への関心や、都度僕を悩ませた様々な事象も、時間の経過と共にいつの間にか遠く消え去り見えなくなっていた。 それらが一体いつ僕の中で消えてしまったのか、思い出そうにも思い出せ

      LO-Vacation新聞に寄稿した短編