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Sunderland vs. Southampton 〜華麗さと現実〜

EFL Championshipは早くも第5節。

降格組のSouthamptonはここまで、3勝1分とまずまずな成績。1分に関してはNorwichとの4-4のドローだったのでまあ許容ではあるとも感じられる。無敗できて開幕から節目の5戦目。勝てば早くも3連勝となるため、確実に勝っておきたいところ。
ウォードプラウズの移籍もあり不安な要素もあるが、これは2部などの下部のクラブにとっては仕方のないこと。そこを割り切り戦わなければならない。

一方の昨シーズンは昇格後即プレーオフに参戦するという強さを見せつけたSunderland。開幕から連敗スタートなってしまったが最近の2試合では1勝1分と持ち直しつつある。
クラークやニール、サーキンといった近年の成功を知るプレイヤーとジョーブ・ベリンガムやダックなどの新加入選手の融合でセインツ撃破を狙う。


前半

試合はいきなり動く。
スタートからハイプレスをかけたSouthamptonはCKを獲得。直接中へ放るとそれをSunderlandはクリア。前線(左サイド)で収めて敵陣侵入し、右サイドへサイドチェンジ。受けたヒュームはアーリークロスを選択するとファーで合わせたのはクラーク。幸先良く先制したSunderland、電光石火の一撃。

クロスをDFの意識の外から合わせるというウラをついたゴールだった。
最近のFootballではクロスをファーに入れることが多いように思われる。その方がDFもニアを最初に警戒するので対応しずらい。そんな傾向をさらに根拠づける1点だった。

さらに止まらないSunderlandは7分。
右サイド深くでベリンガムが起点を作り外へ預ける。そこからペナ前で受けたエクワーがミドルシュート。これがゴール右へ吸い込まれる。あっという間にリードは2点に広がる。早い段階で試合を決定づけるような展開になる。
開始5分でスコアが動くことはよくあることだが、これもまたその傾向を根拠づけている…。

開いた展開は進む

Sunderlandが2点の大きなリードを持ち試合は進んでいく。

リードのあるSunderlandは守備は4-4-2のブロックのゾーンで守る。やはり欧州ではゾーンが普通なのだね。統制も取れておりコンパクトにするという意識が統一されている。自陣ではユニット間・選手間の距離は適切な距離で、ライン間で受けられても速く寄せることができている。圧縮している状態から再圧縮を敢行している。
ただし、相手のビルドアップに対してはプレスをかけながら、牽制しながら。ハイプレスというわけでもないがラインは高く設定し背後のリスクも気にしながらバランスをとる。相手CBへ1stが限定を施策するとマンツーでハマる。噛み合わせ的にきつく縛ることが可能で、限定に連動しチャレカバの意識もはっきりしている印象。
守備は全体的に連動しており、バランスやコンパクトさを保ちチーム全体で守れている。

そして攻撃に関しては、カウンター志向で速攻の意識が強く素早く鋭くというコンセプトか。起点はサイドからでスタイルとして変わらず。また、擬似カウンターという要素も垣間見れ、相手のハイプレスを長めのボールで剥がし前線で起点を作りアタックへというシーンもある。
その手順としては、自陣深い位置での保持時、相手がプレスをかけている時にスペースへ放るという形から。どこが空いているかを認知できているように感じられ、ホルダーは保持しすぎずリスクを脱する。GKへ戻す回数も少なく、相手が引き付いたら早めにリリースする。


対して、2点を追うという予想外の展開となったSouthamptonはビルドアップの開始から攻撃をスタートする。
CB2枚+アンカーかCB3枚+アンカーという形で前進を試みる。アンカーの配置は必ずあるようだ。ミドルサードでも自陣でもこの形は変わらない。
CBが3枚の時は片SBが高さをとる。両SBのマニングもウォーカーピータースは攻撃参加を好むプレイヤーなので、積極的に攻撃に参加する。ただ、基本的には左SBのマニングが高さをとり右SBのピータースは下に降りてCBとしての配置となる。

このビルドアップでミドルサードまでの侵入は複数回あるものの、その先の展望が見えない。というのも、リードのある相手のブロックを崩すのに時間がかかってしまいチャンスをなかなか作ることができない。ブロックの切り崩しは右サイドが中心でピータースの仕掛けを活用し鋭いドリブルで抉る。この取り組みは有効的である考えられるがそれ以外の崩し方がない。出し入れから空いたサイドを使う=出し入れをおとりにサイドアタックを仕掛けたいという狙いで戦っているように見える。中央の保持で時間をかけながら相手が引き付くまで…そしてサイドに振って。一辺倒な崩しでは相手は対応しやすい。

相手を揺さぶり続けて焦れるまで待つという狙いだったかもしれない。2点なら逆転の可能性はまだまだある。焦らずにやることも大事ではある。しかも、保持し続けていれば相手がボールを持つことは全くなくさらなる失点の機会はないと見れる。まあミスややりきれないシーンがあったら失点しかねないが。
とは言っても早くリードを縮めたい。ここでの振る舞いはチームの基本的余裕や良い意味での楽観的な見方が関わってくる。Southamptonはその余裕等がこのリーグではある方だが、このリーグでこの状況・展開だからこそ焦ってしまうという印象を抱いてしまう。

守備に関しては、ハイプレス志向で4-1-2-3(基本形)や4-2-3-1のような形でプレスをかける。サイドを狙い目にし限定し追い込む。ここで逃がさないことが重要であるが、ロングやロブでひっくり返されるシーンが相次いだ。蹴られて収められカウンターを仕掛けられる。
収まってしまう原因としては、3~4列目の間延びである。前線が前プレを開始しているが後方はラインアップできずにコンパクトな陣形にできない。相手のFW陣に釘付けされているような印象だ。ここのライン間に放られ数的同数・不利な形となってしまう。
前プレのやり方にもラインコントロールやマーク、リスク管理にも責任がある。チーム全体での守り方の統一はされているのか気になる。いろいろゆるいような…。そのため押し込まれる回数が増加し、奪える・マイボールになるのは自陣。攻撃の開始は一番後ろからということも多い。前プレをしている意味はあるのか。攻撃のための守備になっていない😑

変わらない展開を打開するには

前半中盤・終盤に入っても展開は変わらず、同じようなシーンが続いている。

という中でSouthamptonはハイプレスの効果がないことを飲み込み、プレスを減少させて構える形に。相手を自陣に引き込ませ奪ってカウンターへという形へ。状況としては序盤と逆の形になってきた。
カウンターの敢行は増えたように見えるが、Sunderlandは素早い帰陣ですぐに4-4のブロックを形成する。または、Southamptonは奪ってからスペースを見つけられなかったり落ち着いて作り直そうとすることで結局ブロックの切り崩しに取り掛かることとなってしまう。

そしてSunderlandは自陣での奪取からカウンター返し。敵陣侵入まではスピード感を出しながらも、サイドアタックは時間がかかってでも仕掛けさせる。特に右サイドのクラークには1vs1で仕掛けさせる時間と場面を設ける。ここを起点としやり切ってクロスを上げきったり、CKの獲得をする。リードを守るためには良いプレー。守るだけでなく攻撃もリードを守る手段であることを認識できる。
この仕掛けやドライブ(もあった)をSouthamptonは抑えることができず、簡単に侵入を許してしまう。ストップできるプレイヤーがおらず中盤が無効化されてしまう。強度が足りていない。

そして迎えた45分、Southamptonは自陣での保持からミドルサードへ向けたタテパスを差し込む。これをカットしたSunderlandエクワーがペナ前まで持ち込んでシュート。ニアに決まって3点目。相手のハメパスを見逃さずシュートも決め切る。
Southamptonにとってダメージの大きすぎる3点目。相手に狙いをわかられた状況からロスト。マークやスペースのカバーに関しては相手が埋めて対応し優位性がなかった。
そもそもここまで、自陣でサイドにつけたりや大きい展開をすることは全くなかった。それは相手も察しがついていたことで、狙いをピンポイントで定められてしまっていた。中央の3レーンだけでのポゼッションは相手もプレス・スライドも容易で対応しやすい。一辺倒なビルドアップの限界がここで露呈されてしまった。

3-0とSunderlandが大きなリードを奪って前半が終了した。

後半

大差がついてしまった前半を終え、お互いに後半をどう戦うのか。
という中で、後半もいきなり動く。

48分、Sunderlandは左サイドで受けたクラークから外を追い越したサーキンが受ける。クロスを供給すると中のダックが足で合わせるがGKがセーブ、こぼれを右ペナのバが折り返し、ゴール前でダックが詰めて追加点。4点目が決まりリードが広がる。

完璧な入りからさらに突き放すゴール。ゴールへの意識を絶やさず厚みのある攻撃からゴールを奪いきった。ここでSouthamptonは意気消沈したような雰囲気。相手のボールに揺さぶられなかなか出るタイミングを図ることができずに自由にやられてしまった。

ここからの試合運び

4点という大量リードを得たSunderlandは、焦る必要はなくしっかり守れば良い。コンセプト自体は基本的に前半から変えずに、相手のビルドアップに対しては規制し繋ぎをペナ周辺だけに限定。コースをなくす。最後は焦らさせて蹴らせる。良い圧力の掛け方から蹴らせて回収し、マイボールにして厚みのある攻撃を目指すという一貫した流れを続ける。

厚みのある攻撃に転じるためのアプローチとしては、自陣での前進時は手数かけずに前・タテへ素早くつける。プレスを回避し自陣でのロストの可能性を低くする。受け手もボールが来ることを見越してポジショニングしているようで、チーム全体でどこを出口にするかはっきりさせている。

対するSouthamptonは、相変わらず自陣からのビルドアップでの前進のきっかけを掴めない。Sunderlandの規制・限定・コース切り・スペース埋めにうまくはめられる。そしてロングで吐き出して前線でどうにかしてくれという形から結局ロストする。
前半から後ろに枚数が多く重い印象があり、しかもそれぞれの距離が近いためマークやコース切りが簡単なので相手も対応しやすい。下に枚数がいるから前線につけても関わりやサポートがなく、個人での打開に頼る形に。打開できなければ結局上がりを待つことになるので素早いタテパスを入れたとしても遅攻になってしまう。
その一連の悪い流れや雰囲気を返せず、ロストからチャンスをつくられ失点にも繋がってしまう。厳しい時間が続いてしまう。

守備の時間自体は少ない。相手が速攻や早々にフィニッシュまで持ち込むので、気がつけばプレーが切れている。悲しいようだが守備の時間は短くなっている。

流れが来始める

ここまでSunderlandが優位に効率的に試合を進めていたが、ようやくSouthamptonが押し込みチャンスメイクする時間がやってくる。

ミドルサード(ハーフウェイあたり)まで入り込みここから崩しへ移行する。Sunderlandはブロックを組んで守る。前半こそは崩しに苦戦していたがアイディアが見え始める。
そのひとつとして、ウォーカーピータースが偽SBの動きやオーバーロードで中央の連携に加担する。ワンツーや3人目の動きでブロックの隙間からさらに深層部へ侵入しようと試みる。前半ではピータースはワイドで仕掛けることだけになっていたが、後半から関わりや細かい崩しをプレーするようになった。仕掛けで活用する駆け引きや足元のボールコントロールを活かそうというところか。変化のあるポジショニングで相手は捕まえられなくなり、起点を作ることができる。

この崩しの変化に対しSunderlandは中を閉めきれずに中央から切り崩されてしまう。中央から崩されてしまってはブロックの意味は無くなってしまう。外に追いやりながら時間をかけさせ最短距離でゴールに迫られないようにしたい。また、中央レーンのライン間で捕まえきれない中で出るタイミングとプレイヤー、限定の仕方をはっきりする必要がある。

またSouthamptonは、アーリークロスへの取り組みも多くなっていた。前半のように仕掛けて1,2枚剥がしてからクロスを供給する形ではなく、相手がゴール前でセットしきれていない状態で合わせにいく形へ。DFにクロスを触られないようにしフリーで合わせることができる。

最終盤へ

終盤に入るもSouthamptonはいまだにゴールラインを破ることができない。ブロックを崩すためのアイディアも少なくなってきて試みもなくなってきてしまった。開幕戦のWednesday戦の決勝ゴールのような果敢な飛び出しもなく、ポケットへの侵入もない。
ただ、遠目からのミドルシュートはには可能性は感じられたが…。

Sunderlandは押し込み続けられるもゴールを割らせず・撃たせずで失点を防ぐ。そして、安定した守りから奪ってカウンターへ繋げ、枚数をかけずシンプルに。ウラへの放り込みをしてみるだけでも、また後ろから攻撃を組み立てなくてはならないためリードを追う相手にとってはストレスになる。
実際に、Southamptonは崩せず奪われカウンターを喰らったりクリアされて、拾ってから同じような展開でやり直すというシーンが見られた。

迎えた95分、Sunderlandは左サイドでの奪取から外のベネットがアーリークロス。ファーのリグが合わせてなんと5点目。ダメ押し点となるゴールを決めたリグは16歳。EFL史上歴代2番目に若い年齢でのゴールだった。

今試合のSunderlandのゴールは、クロスから直接ゴールに繋がったのが2回、サイド起点は4回、前線でのカットからは2回であった。

総括

SunderlandはゴールラッシュでSouthamptonを撃破し自信を高める勝利となった。前半での2ゴールからの試合運びがはっきりしており、前半終盤・後半早々・後半終盤とポイントとなる時間でゴールを取り切ったのは素晴らしいことである。そのための攻守のやり方も意思共有されており、スタイル・コンセプトの正確性を確かめることができた。

一方で大ダメージとなったSouthampton。このリーグの現実を見て、収穫のない一戦になってしまった分、これからの取り組みがどう変化するかが気になるところだ。
このリーグでは、Southamptonに対し今節のSunderlandのようにブロックを敷いて守ってくるチームが多い。そこで、それを突破できる策がないと停滞してしまい敗戦へと陥ってしまう可能性が高い。今節のような時間の無駄とも捉えられてしまう試合運びにしたくない。

両チームのこれから、いや次節からの調子がどう変化していくかに注目しながら見ていこう。戦術的な変化もどうなっていくのか、各チームに対する戦い方はどうするのか。着目点をはっきりさせ変化に敏感に。

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