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Birmingham vs. Leicester 〜対抗と個の力〜

EFL Championshipは第22節。
Birminghamがホームに首位Leicesterを迎えての一戦。

Birminghamは前節4試合ぶりの勝利で復調へ向かう。しかし今節の相手は首位。どう立ち向かうか。

アウェイに乗り込むLeicester。直近5試合は負けなしの3連勝中。昇格圏は確実なものだと思われているが、2,3位に対して油断せずに差を広げていきたいところ。ちなみに、今季のアウェイ戦は8勝1分1敗。ホームでは9勝2敗とアウェイの方が戦績は良い。果たして今節もアウェイで勝てるか。

今節のゲームハイライトはこちらから↓


前半

スタメンは以下の通り。

青:Birmingham 橙:Leicester

コンセプトの観察

まずはコンセプトを見ていく。

Birminghamの保持時。
保持側のBirminghamはビルドアップの入り口を3+2とし、CHどちらも下ろす形でスタート。CHに関してはどちらかがアンカー的な立ち位置を取ることもある。
出口になるのはSBのところ。多いのは左SBのBuchananの位置で、高い位置を取っているためロングボールやパス1本通せば逃すことができる。前進からのアタックにも繋がる。一方で、右SBのAiwuはBuchananほど高い位置を取らずにビルドアップのサポートをする。両サイドで高低差をつけ、左右非対称な最終ライン。

ただ、パスを繋ぎながらの前進するというよりもタテへの意識を強く持ち、最終的にロングボールなどでウラ返すシーンが多い。先ほどのBuchananのように高さを取っているプレイヤーがいればそこにつけるだけで前進が簡単になる。そういうチームスタイル(コンセプト)が基になっている配置とも考えられる。他にはSHを走らせてロングフィードなど。

守るLeicesterは、4-1-2-3,4-2-3-1に見える形で守備を開始。
相手の2+4の入り口に対し同数にし、アンカーを設置してくるならそれによって2列目は陣形を変えながらになる。
プレス強度はそこまで高くなく激しさと構える形の中間くらいの強度でプレス・限定。しかし、そうするとホルダーに与える余裕がある程度あるので、タテへ速く攻め込んでくる相手の攻撃を簡単に受けてしまう。なので、前プレに行っているプレイヤーは蹴られたら帰陣を素早く行うことが重要になる。+プレスの仕方と背後のケア。

Birmingham ビルドアップ時


※Leicesterは中盤以降には守備陣形を4-4-2に変更し前プレをかけることもあった。相手のCB2枚に対し同数で対応し、中盤2枚にも同数。
4-x-x-xのように4列の守備隊だと列が多く間延びする可能性があり、コンパクトさが減少する。4-4-2のように3列の守備隊ならコンパクトさを実現できライン間に差し込まれてからの擬似カウンターも防げる。ライン間を狭くしたい・無くしたいということだ。


逆の立場から。Leicester保持時。
保持するLeicesterのビルドアップの入り口は3+1,2。注目となるのはSBの位置関係。Birminghamも取り組んでいたように、右SBのPereiraを高い位置に送り込み、左SBのJustinは最終ラインでビルドアップに関わる。CBがコンドゥクシオンするわけでもロングボールを放るわけでもないので、CBが保持している時の出口・サポートになるというわけだ。

Leicester ビルドアップ時


しかし、アタックに関しては左からが多く、右から崩すようなシーンは多くない。Pereiraが高さを取る理由はなんだろう?

DakaがCBから引き出す動きを見せるシーンが度々あったが、そこでは元々Dakaがいた位置に右WGのIssahakuが入り、Issahakuがいた位置にPereiraが入るという形を取っていた。
そして、後にも出てくるが攻撃の中心となるのは左WGのMavididiで彼はウラを狙わずにサイドに張って足元で受けてから仕掛けようとする。チームの攻撃の武器となっている。となると、Mavididiが受けてからの攻撃を優先するために、Dakaのスペースを埋めるにはIssahakuが入るのが定石となる(Mavididiが入るとサイドで仕掛けられなくなる)。そのため、Pereiraをワイドに配置し左SBのJustinにバランスを取らせるということになる(+ビルドアップ時のCBのサポート)。という考察に行き着いた。


Leicester 配置のカラクリ


では、それに対してのBirminghamの守備。
陣形的には4-5-1(中盤フラット)。プレスの頻度は序盤こそは高かったが中盤ごろになるとミドルブロックに変更した。試合を通じてミドルブロックで構える時間が多かったのでコンセプトとしてはミドルブロックで停滞させるイメージ。Leicesterも放り込みが多いわけではなく繋ぎが多いので停滞させることが有効になる。しかし、ゾーン3付近ではプレスをかけていくイメージ。

相手保持時のプレスシーンを見てみる。
プレスはワントップのStansfeildのみになっていることが多い。相手の左SBが降りていることもあって右SHのDembeleがプレスに行くこともある。

気になるのは間延びの部分。2,3列目のライン間が空いていること多く、特にサイドにボールが流れた時に見られる。サイドでプレスに行くならラインを上げて圧縮するかカバーをはっきりしたい。中盤5枚がフラットなので段差をつけれずチャレカバができにくい。
ライン間に差し込まれ侵入されピンチを迎えてはミドルブロックである意味がないので対処したい。

ライン間が空いてしまう


動く展開

この試合は早々に動く。

5分。BirminghamのCKがLeicesterのDFに当たるとこれがポストを叩く。跳ね返りを回収したLeicesterは一気にカウンターへ。Issahakuのスルーパスを受けたMavididiが技ありシュートでゴール。あっという間のカウンターアタックで颯爽と先制に成功。前線の速さと良いポジトラからの得点。

Birminghamはネガトラの帰陣が遅れたこととリソースが足りずにカウンターを防ぎきれなかった。

しかしBirminghamは14分。カウンターから前線に送り込むと右ペナ前で受けたDembeleが仕掛ける体勢に入り中央へ送る。このパスをSunjicがダイレクトでボックス内のJamesに出す。受けたJamesはターンからシュートしネットを揺らした。持ち味のカウンターの流れから崩して同点に。Jamesの個人技も光った得点だった。


ここでこのゴールシーンの崩しについて見てみる。

まず、敵陣に押し込んで右ペナ前でDembeleが持つ。中へ仕掛けて中央へパスを送る。このシーンの時点で[画像.1]の中央にいるJamesは相手のチャンネル(CB-SB間)に向かってダッシュ。

画像.1

[画像.2]中央に送られたボールはSunjicがダイレクトでJamesへパスを送る。

画像.2

[画像.3]次の瞬間にJamesはコントロールしているが、立ち位置的にはチャンネルのところ。チャンネルステイとも呼べそうな受け方。

画像.3

[画像.4]そしてチャンネルステイからターンしシュートを放った。
という流れからの得点。Jamesのアンダーラップからのチャンネルステイからゴールが生まれた。Jamesのターンのうまさに目がいくがそこまでに至るポジションニングにも注目できる。

画像.4


タテへの速さと手数をかけないアタックはやはりチームスタイルとして根付いているよう。ビルドアップにおいてもアタックへ向けてもロング(前線に向けての長いボール)の使用率は高く、シンプルに臆せず使用。相手の前プレを自分らのタテへのスピードでウラ返してゴールへ迫る。

ロングボールの使用などで敵陣でロスト(繋がらなかった)したとしても、前プレやミドルブロックで停滞させてという一貫した流れを構築できているので迷わずに前線へ送り込める。


失点の再現

同点に追いつかれたLeicesterだったが7分後の21分。またしてもLeicesterはカウンター一発でウラをとる。抜け出したDewsbury-HallがGKを交わしてゴール。カウンター2発で勝ち越しに成功。やはり前線の速さ・質とタレント力は威力になる。

カウンターという同じ流れから2失点のBirminghamはリスクマネジメントができていないように感じる。奪われ方が悪いこと+ロスト後のマネジメントができていないことが関係しているか。どちらの失点も同じような形からだった。
また、攻撃時にホルダーに対してのサポートが薄いことも関係していそう。特に敵陣では。サポートがない=選手同士の距離が遠い=奪われた後の1stが遠い・いない ということである。

また、中盤(CH)で入れ替わられることも関係している。
相手のビルドアップ時にミドルブロックで相手のCHを警戒しながら圧力をかけ停滞を誘う。しかし、時には飛び込んでしまいクルッと入れ替わってしまう場面もある。またはライン間に差し込まれてパス1本でワンラインごと入れ替わる。
この時、Birminghamの中盤5枚はフラットなのでカバーがDFラインしかいない。コンセプトのところでも間延びが気になると書いたが、間延びをしていればカバーするプレイヤーがそもそもいない(中盤ラインに対してDFラインが距離をとってしまっている)。中盤が入れ替わった時にカバーは出れない。チャレンジできないというのはボール(入れ替わり地点)へ遠いからでもある。

もし、DFラインがカバーに出ると交わされた時に一気に数的不利になってしまうのでここでボールへチャレンジすることはできない。そう考えると中盤で簡単に入れ替わられることは絶望的な状態であると考えた方が良い。そして、具体的な対策を取れないまま2失点を重ねてしまった。


Leicesterの攻撃のオーガナイズ

Leicesterの攻撃について見てみると、前進後の攻撃スタイルはサイドアタックから。先ほど書いたように左からのアタックが中心で左WGのMavididiが仕掛ける能力が高い。なのでアタックの起点になる。

となれば、Mavididiに預けさえすればチャンスメイクできるということになる。CKを獲得するまでにも行ける。良く言えば武器、悪く言えば依存。どうしてもチャンスを作れるのは彼しかいないのではと思ってしまう。だが、サイドでMavididiが持った際にIHやSBが絡んで崩そうとする場面もあるので、完全な依存とは言い切れない。攻撃のオプションとして捉えるのが適切か。

他の攻撃方法としてはカウンター。2発入れただけある。
相手はロングを用いて押し込んでくるので、Leicesterは押される展開になる。なので、押される中で前向きな状態でボールを奪えればカウンターを仕掛けられる。相手は押し込んでリソースを前線に送り込んでいるので後方の枚数は薄い。だから、奪ったらすぐにチャンスを作ることができるのだ。
相手の枚数が少ないうちに・相手のラインが高くなっているうちに という状況で攻め切ることが有効になる。そして、前線の仕掛けるスピード感とプレイヤーの質があるので仕留められる。その結果の2得点である。少ないながらも決定機を活かしきることがこのチームの強さの要因かもしれない。

さらに、ミドルブロックの相手に対し有効的なタテパスを入れることも重要。先ほどの”失点の再現”の項でもあったように、フラットな相手の中盤ラインを越すようなタテパスを供給すると状況が一転しカウンター的な形へ。
ミドルブロックで構える相手はプレスが弱まるのでホルダーの自由度もある。自由度(余裕)があればパスも理想通りに出せる確率も高まる。


後半

前半は1-2でLeicesterがリードし終了。
前半のシュート数はタイ。Birminghamは意外にも可能性を見出す前半を終え後半へ挑む。Leicesterはリードを保ち勝ちきれるか。


また再現

それぞれの後半開始時のコンセプトを確認する。

ミドルブロックを組んでいたBirminghamだったが、後半はプレスを強める形になる。ビハインドがある中で前からの守備を強めて勝負をかける。しかし、飛び込んで交わされるようなシーンも見られる…。パスコースの限定と規制ができていない。スルスルとパスで前進される+対人のところでも規制できない。前への圧力と重心が逆効果になってしまっている。
個人だけでなくチームとしてやってしまっている。最初の5分程度はひどいように感じる。

そんなBirmingham相手にLeicesterはタテへの速さを主としスピード感のある攻撃を展開。まさに、Birminghamが前半に行っていたやり方。スピード感(推進力)とタレント力は活かせている。良いカウンターを連続する。相手が前プレで食いつくなら剥がして擬似カウンターへの形が有効的に。
とはいえ、ロングボールの多用ではなくパスを前に繋ぎ続けて前進する。簡単なロストの危険を最小限にし確実に前に運んでいく。相手の守備の仕方も相まってタテパスがスルスルと入る。

という展開で50分。
Leicesterは中盤で回収すると狭い空間を連携で繋ぎ左WGのMavididiへ。Mavididiはボックスに侵入しシュート。見事なシュートで3点目。Mavididiのうまさがここでも発揮された。

Birminghamはここでもロスト後のネガトラが発揮できず。奪い返せない中でカウンターを食らいシュートまでいかれ失点に繋がった。やはり、奪われ方とリスクマネジメントが良くないように感じる。


取り戻し

そんなBirminghamだったがミドルブロックの守備方法に戻す。
ミドルブロック程度の守備ラインなら停滞させることができ、飛び込み過ぎない対応ができる。前半終盤あたりのようなやり方がベスト。

最初の5分で前プレをかけて勝負をかけたのかもしれないがそれは失敗に終わった。良い対策を取れていた方法を行う方が良いということが証明されてしまった。

ミドルブロックに対しLeicesterはシンプルなウラ返しを狙うことに。WGが大外から中へ向かって飛び出す。そのタイミングで後方からロングで狙うことも。
しかし、繋ぎながらの前進が優先で、サイドアタックからチャンスメイク。剥がし方は変わらないがスムーズさは前半よりある。

Birminghamは時間が過ぎていくがLeicesterのスピード感のある攻撃を抑えきれない。ビルドアップの出口・チャンスメイクされるところをそろそろ抑えたいが抑えきれず。自由に前進・アタックされ続ける。
また、守備時に個人vs個人でのレベルの差はあるのだが、それをチームの力で補うのはどうなのか。1vs1で守りきれない時に1vs2,3などグループで守るなど。守備全体にも新たな工夫を求めたい。


対しての状況

逆にBirminghamが保持した際にはどうなっているか。

Leicesterの守備は前からのプレスは前半同様にそこまで激しくはない。構えるような形を継続。ボールへのチャレンジをせずに飛び込むようなことはしない。その代わりに、自陣への侵入を許したり前進される回数は多い。いつの間にかチャンスメイクされている。

ホルダーに対する距離感と寄せ方の問題なのか。簡単に展開・パスを差されてチャンスの雰囲気を作られる。サイドに振られてチャンスメイクされるようなシーンが多い。

Birminghamは自陣での保持からの前進はスムーズに行い、正確さとスピード感を出していく。敵陣侵入からはサイドを中心に攻め込む。左のBacunaに仕掛けさせる。しかし、それ以外のチャンスへのアプローチがなくアタックの種類が限られてしまう。


アクセントの存在

劣勢となってしまったBirminghamは攻撃のカードを切る。
71分に投入された三好康児。

すぐに結果が現れる。
74分、左サイドからBacunaのサイドチェンジで右サイドで受けた三好が仕掛ける。右ペナにボールがこぼれると拾ったJamesが押し込んでゴール。1点を返す。

ここまで敵陣での崩しに不安がある中で三好が活きての得点。良い展開から右でも仕掛けられるオプション追加でチャンスの幅が広がる。今までは左での仕掛けしかなかった中で右に三好を配置で仕掛けの機会を演出。両サイドから仕掛けられることで相手の的をより絞らせないことにも成功。

交代した同位置(右SH)のDembeleは前線に張ることやウラ抜けが多かった。という中で相手の守り方によりウラへの狙いはシャットアウトされる中で三好は足元で受けてから攻撃(アタック)を組み立てる重要な役割を果たすことになった。

三好の役割をオーガナイズすると…
後方と前線を繋げるパイプ役になり、ビルドアップ時に引き出して前線へ持っていく。敵陣では仕掛けることやラストパスが求められる中で足元の技術を買われているのでそれを発揮する。
途中出場時のオプション的な役割でもあり、スタメンでも攻撃を落ち着けられる・チャンスメイクできるオプションとして存在している。プレースタイルはチームスタイルと異なるが、それでこそ活きることができ今節のような攻撃の停滞感を脱出するようにしてチームを助ける。


対して、守るLeicesterは押される時間が増加することに加えてリードもあることで自陣ではブロックを敷くことになる。しかし、後手に回るような展開が続き失点まで許してしまった。

相手の攻撃をどこでストップするのか。ボックス付近まで来られるとすでに三好のようなチャンスメイカーがいることで今まで通りの守りでは守りきれない。相手の攻撃リズムも変化しているということ。

さらには、擬似カウンターのように前線へ送り込む回数が増え、シュートまで行ければ良いが敵陣でロストするが増加してしまう。そして、ロスト後の前プレの勢いもなくネガトラの強度も弱まってきたのでペースを渡してしまうという流れになってしまう。


終盤

押されるLeicesterだったがその後は支配率も復帰しなんとか耐える。逆にチャンスも訪れる。

Birminghamは疲れもあるのか、攻撃の質は格段に下がってしまう。結局シュート数は後半2本のみに収まってしまう。

そのまま試合は2-3でアウェイのLeicesterが勝利。


総括

勝利したLeicesterはリーグ4連勝で勢いは止まらない。また、今節終了時点で3位との勝ち点差は13。

戦術的には劣勢差を感じる場面もあったり押されたりと戦前の予想よりも苦戦したところはあったかもしれない。しかし、持ち前の質的優位さが見事に発揮された。戦力が揃っているというメリットが苦しい展開になっても助け船として存在する。

リーグはもうそろ半分になろうというところ。あとは逃げるだけだ。

一方のBirminghamは破れはしたものの接戦を演じきれた。が、負けは負け。降格圏とは6ポイント差となる中でこれから勝ちきれるかが重要になる。守備の改善と攻撃の威力の改善など行うべきことはあるが、ベースがあるのでなんとかそれを活かしきりたい。

可能性を感じたこの試合の自信を今後に活かせるか…。

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