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テゲバジャーロ分析 #5

シーズンは後半戦5試合目。第22節の北九州戦で勝利し2連勝するも、直後の鳥取戦で敗れ今シーズン初の3連勝とはならなかった宮崎。
今節はホームに福島を迎えての一戦。ホーム4連勝で連敗を避け、福島相手にシーズンダブルを狙う。

※中の人の都合上、2週間ぶりの投稿となりますがご了承ください。


前半

意気揚々な立ち上がり…が

宮崎は入りからアグレッシブな守備を見せる。攻撃もスタートからチャンスになりかけるなど、まずは良い入り方。にも見えたが5分、福島は右サイドから仕掛けるとポケット侵入し中へボールが送られる。こぼれを柴田が押し込み先制は福島。相手のファーストチャンスでゴールを許してしまった。
しかし、早い段階での失点だったが時間は十分にある。どうやり返すか。

守備に関しては、いつものゾーンディフェンスを徹底し球際も厳しく行っている印象。また、1stプレスがかかった時の連動性ははっきりしている。回収位置自体も高い位置が多い。
良い守備から良い攻撃(ショートカウンター)への移行はスタイルとしてあるが、それを体現することはしっかりできている。奪ってからはやり直し(組み立て直し)することもあり、そこは状況に応じて使い分けている感じか。
前プレ時は2トップ+SHの3枚でかけることが多く、これは相手のビルドアップが3枚で回していることに対応している。

ただ、段々と奪う回数が少なくなってきたり取りきれずに剥がされたりするシーンが目立ってくる。ゾーンで守っているがその代わりに相手のパーソナルスペースに入り込めない・潰せないということが関係していると考えられる。ここでのパーソナルスペースとは、ボロノイ図で使用される選手ひとりひとりのボールを触れる空間のこと。

ボロノイ図の例

・色の付いたスペースが各選手(チーム)のパーソナルスペース
・赤色のスペースなら赤チームの選手が先に触ることができる
※目安なのでこの状態がずっと続くわけではない。試合の中で変化していく


プレスが遅れたりすると、その空間で自由に持たれてしまうことや新たに空間ができたり、空間の拡大により相手の方が自由にボールを繋ぐ・運ぶことができてしまう。マークとの距離があるからである。マンツーのように厳しく寄せることは難しい面も多いため、チームで限定や追い込みからとりどころの狙いを定めることが重要。個人はその決定した目標(次のホルダー)に向かってプレスやインターセプトを決行するべき。またはコースを消したりカバーをつけるなど。それでも難しいところがあるなら、撤退しセットするという手もある。
という感じで対処をしていくのが大事になる。守備の仕方にはメリットデメリットがあるが、その両方を考慮しメリットを活かしデメリットを消すことが必要になる。

ビルドアップ〜攻撃に関すること

ビルドアップは2-5-3のイメージ。状況や時によって変化するので暫定的なものであるが…。
今節のビルドアップでは、中盤に5枚いるがその枚数が活かせておらず停滞ぎみな印象を抱いてしまう。流動性というかしなやかさというか…というのも、実際に関わるのはGK,CB,アンカーだけであり他は動きが全くと言っていいほどない。結局、ラインの高い相手に対して2トップのウラをめがけて放ることになる。これでは相手も構えて前ではめるか放ってきたところを対処するかでやることがはっきりし守りやすい。

中盤に複数枚いるのなら、スペースを空けたり入ったりでマークを外して受けることもできるのでは。同じ空間を異なるプレイヤーが使い共有していくようなイメージ。そうして、新たなコースの開拓と提供で前進を促進することもできてくる。ホルダーに対する選択肢を増加させると同時に、相手を撹乱させるという動きが欲しい。
また、ドライブでの前進というプレーも必要。海外ではこれができるプレイヤーはたくさんいるが、日本では少ないと思う。これができるだけでも前進の仕方に変化が生まれたり、相手を1,2枚引きつけることができたり、新しい刺激を相手に対して入れることができる。相手も想定外のことが起きると守り方に変化が生まれると考えられる。後半では、CBが持った時にベンチから「仕掛けろ」(運べという意味だと思う)という声も出ていたので、松田監督自身もそういうプレーを欲しているのかも。

ミドルサードへなんとか移動したor高い位置で回収できた ところからのアタックはサイドからの切り崩しがメインとなっており、そのために中・外の使いわけが有効。中央レーンでの出し入れから開始し揺さぶって空いたサイドへ展開する…というのを繰り返して崩れる瞬間を作り出す。狭い空間でのグループの崩しやコンビネーションが大事になる。テンポとそれに伴う連動性、人とボールが同時に動く感覚。相手を剥がすために必要な要素。
この出し入れやグループでの崩しの際には(ブロックを崩す時にも)、受け手が中間ポジションを取って相手をピン止めすることも有効で、相手のプレスが少しでも遅れれば攻撃側は優勢。ピン止めするとマークが曖昧でフリーぎみになり、守備側は誰がプレスに行くのかはっきりしない。そうしてプレスは遅れ始め、連なるようにして守備全体が遅れ始める。守備はやはり狙いを定めることとどこかでストップすることが大事になる。

ミドルサード以降での動きや引き出しからの前進(崩し)はしっかりできているなら、ビルドアップ時にも取り組んでみてほしい。前線でのプレーに気が行ってしまっているのかもしれないが、まずは組み立てを円滑にしてみるのはどうだろうか。

そして、ポケットやサイドの深い位置に侵入しえぐってクロスへ。このシーンが多くみられ崩し方・仕掛け方のひとつとなっている。特に左サイドからの仕掛けが多く、永田がボックス内へ仕掛けるシーンが多く見られる。
攻撃の重心は左に偏っているように感じられる。後半も左からのアタックが多かったという事実もある。

福島の戦い方

福島は攻撃についてはタテへ入れてスピード感を持って押し込むことが多い。枚数はかけすぎずにシンプルにつなぐ・運ぶ。先制点も押し込んでから2,3枚で崩してからだった。
先制後はカウンター中心になっていくことははっきり決めているような。

守備に関しては、宮崎のビルドアップに対して前プレではっきり限定しサイドへ追い込む。カバーもしっかりいる、準備できている。5-4-1(大外繰り出して4-4-2になる時もあり)でコンパクトにし、ワントップが規制する方向を決めてそれに周りが連動する形。コース消しも徹底している印象。
統制がしっかり取れているので奪取位置も高いようだ。押されたとしても元からブロックを組んでいるので、全体を下げるだけで勝手に堅くなる。
しかし、ライン間に入れられるとピンチになる。宮崎はここに入れることを狙って出し入れしてくる。ここは守備側が上手になるか保持側が上手になるか、状況によるか選手の質によるか…。


福島の守備を前に宮崎の攻撃は全体的になんか重苦しいというか、停滞ぎみでスピード感がなかった。暑さや前半だからという理由で仕掛けるタイミングをわざと遅らせているのかもしれないが。ただ、前進が遅いことや前プレでも奪うことができないことからファイナルサードでの攻撃が苦しくなっているのかなと思った。ささっとミドルサードやファイナルサードに入り込めず(保持できず)に相手のブロックを剥がそうと回し続けるシーンがほとんどだった。勝負をかける時間を増やして前半から取りに行くことも考えていかなくてはならない。

一方で、回し続けているうちに相手が疲弊し始め、ブロックが脆くなったり焦れてプレスに来て組織が壊れ始めるという現象も多々ある。そうなれば、回し続けていた時間は意味を持ち必要な作業であったと体験できる。特に、前半は回していて後半に相手が崩れ始めるというケースが多い。
さて、この試合ではどうだったのか…後半を振り返る。


後半

リードするのは福島。0-1のビハインドで宮崎は逆転を狙うのみ。

開放的な攻撃への変化

後半開始から変化が見られた。
左サイドを中心にロングボールを多用し押し込む展開を見せる。そしてタテへの速さの意識も感じられる。

速攻の意識でチャンスが一気に増えてきた。前半とは違ったスピード感で攻めに行っているようだ。さらに、オーバーラップもあったりと活発なアタックになる。アタックの割合は前半部分でも書いたように左サイドが多い。
また、タテへの速さだけに頼らず中と外の使い分けで揺さぶる形も継続。出し入れを繰り返し空いたところで楔のパス、タテに差し込んでからは素早く仕掛けるというように。タテパスがアタックを始めるためのトリガーとして存在している。前半で行なっていた出し入れ等の”回し”の部分はここで意味を見出す。

しかし、サイドの深い位置まで入り込めているもののそこからシュートまでは至らない。ブロックを崩せず、仕掛けるタイミングの喪失、クロスが中と合わない…ともうひと工夫欲しい。特に、クロスに関しては本数が増えてきているので、ボックス内の動きとボールの入れる位置や動かし方に工夫を入れていきたい。


ここでビルドアップの話になるが、後半はビルドアップをするという概念はないようで、CBやGKが自陣の高い位置で持ってサイドにつけていくという形で前進する。それは相手の対応によるもの。

福島は完全にローブロックで引いて堅く守る感じになった。
自陣での守りはボールサイドへのスライドとチャレカバをはっきりさせて、外で遅らせる感じで。それでOK。
攻撃に関しては以下の3点で。
・自陣での保持を割り切り敵陣へボールを送る
・運んで時間作ることもあり
・前線では枚数かけないカウンターへ

その中で宮崎は、深い位置まで入るために中央(CBやGK)から大外のプレイヤーへ差し込むようなボールが有効的になり、サイドのプレイヤーは受けてから運んでファイナルサードへという形に持っていく。この一連の流れが円滑な前進をもたらす。
サイドが運ぶというプレーは、全体的に運ぶ回数が少ない中で大事になること。相手守備を崩すために必要な刺激であることに変わりはない。

こうして活力が増えてくると、78分にクロスから永田がファーでヘッドと惜しいシーン。さらに81分、サイドから再びチャンスを作りポケットから崩して…というシーンも。どちらも攻撃的な速さを見せてから。段々とゴールの匂いがしてくる。

守り方と懸念

守備は前からかけて未然に防ごうと試みる。ストップしきるシーンもあり。
その中で押されそうならセットしブロックする形へ。
ただ、プレスが2,3個剥がされてしまう時もあり、自陣への侵入を簡単に許してしまうこともある。前プレが剥がされるから一枚一枚繰り出して、自陣でも取りきれない。どこかで止めきれないとピンチはスッとやってきてしまう。前半同様に軽い守備対応が見られてしまっている。
Twitter(X)でよく登場する「お気持ち守備」とはこのようなことだろうか…。

最終盤

スコアは動かず0-1福島リードでいよいよ最終盤へ差し掛かる。
宮崎は攻め込むも跳ね返され自陣からやり直しという展開が続き、失ってからの前プレも効力を果たせず。そして時間も無くなってきてしまったので、長身FWの青戸を投入しパワープレーへ。前線への放り込みに願いを込める。

しかし得点が遠いままでまさかの展開に…
94分、前がかりになり自陣の枚数は薄い。自陣で一度は跳ね返すもそれをさらに跳ね返され、ペナ内に送られると1vs1を決められ0-2。最悪の展開となってしまった。福島にとっては最高の展開、試合の最初と最後で点をとり勝負強さを発揮した。守りの時間を我慢し続け最後はカウンターでダメ押し点。

宮崎の押し込む時間は長く、後半はチャンスも作れていた中でダメージのでかい追加点。崩しきれなかった牙城に跳ね返され、今まで空振ってきた仕掛けは思わぬ形で自分たちにかえってきてしまった…。

総括

前半最初の失点と最後の失点。この二つ、10分がなければタイか勝ち越せたか。たらればを言っても仕方がないのですがね。それ以上に得点を奪えなかった、シュートが撃てなかったというのが失態とも考えられる。ビルドアップ〜攻撃に関する工夫や勢いをもっと持っていかなくては。少ないチャンスしかないならそれを決め切る力の勝負強さ。それを追い求めて。
守備に関してはもう一度確認する、やり方をはっきりしていくべきか。無闇なプレスや破綻してしまう守備に取り憑かれる前にもう一度リセットしたい。長い集中と安定感を継続できれば理想だが、まずははっきりしたプレーをして失点に繋げない。点を取られないことを優先に、ボールと敵を監視する、シュート撃たせないためにコース切るなど。基本的なことを当たり前にやりながら、その中でスタイルを磨きながら。

ここでひとつデータを紹介。
試験的ではあるが、今節では宮崎の回収位置を集計してみた。視覚的なデータの収集を最近は行なっているので、その一環で新たに取り組んでみた。

攻撃方向は下から上に向かってです

前半は高い位置での回収が目立っていたが、後半はクリアされることが増えてきたりして自陣でようやく回収できたということが多い。
それだけ後半は前プレが効果的にかけられなかったということがわかってしまう。
という感じでデータをとって、印象と事実の答え合わせをすることができるのでは。所属している部活でも活用していきたい。

話をチームに戻すと、連敗となってしまったがまだシーズンは続く。そろそろラスト10試合というところに迫ってきており、佳境を迎えようというところ。ひとつでも多くのチャンスをゴールを、勝ち点を勝利を。


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