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EURO2024 Grp.A ~Hungary vs. Switzerland〜

グループAもうひとつのゲームはハンガリー vs. スイス。
2位通過が狙えそうな両チームの激突。


スタメン

両チームのスタートは下図の通り。
お互いにここまでの親善試合からは数名変更した模様。ハンガリーはSzoboszlai、スイスはXhakaに注目が集まるか。


ハンガリーのコンセプト

ベースが3-4-2-1のハンガリーは、守備時は5-2-3でのブロックを構築しラインは低め。2-3の距離感はコンパクトで中盤のスペースを圧縮する。XhakaとFreulerがいる中盤にスペースを与えずビルドの邪魔をしようかというところ。しかし、中盤を圧縮することで2の背後(=ライン間)が空いてしまうという問題が生じる。この問題がのちに響くことになる…。

Hungaryのブロック

ただ、ブロックを組むための帰陣は素早く構築は早い。試合全体をみても、守備意識が高く「まずは守備から」という意思が感じ取られる。となると、攻撃はカウンター的な形が多くなる。端的に前線・敵陣へ放り込み奪った瞬間に崩れている相手の陣形に対してアタックを仕掛けようというところ。しかしながら、ハンガリーの攻撃の精度はそこまで高くなく、かつ左サイドでストロングを持つSzoboszlaiはマークとコース切りで対応されボールを渡せない。そうして、空いている右サイドからの展開が多くなる。右WBのFiolaの背後に入れるシーンが多くあるもチャンスとまではいかず、ボールが流れたり相手に対応されてロストしてしまう。

ビルドアップ時の可変として、親善試合では右CBのLangがワイドに開き、Schäferが最終ラインに入るなどして工夫をかけていたが、今試合ではそんな形は見られなかった。右WBのFiolaを走らすことで押し込むという狙いのなかで、Langがワイドに出る必要がなくなり、かつ最終ラインにSchäferが入りこむスペースもなくなったのでいままでの形は見られなくなった。と考える。


スイスのコンセプト

対するスイスは攻守において3-4-2-1のベースは変化なし。
守備時に関しては3-4-2-1で前線から嵌める意識ながらも、notハイプレスという形で相手を苦しめて回収を試みる。

ビルドアップに関しては、3-4-2-1を変えずにシャドー・トップはウラ狙い(降りて受けるプレイヤーとバランスとる)。前線のアクションと中盤の引き出しで前進し敵陣でのプレー時間を多くする。ブロックを組まれても、それに対してのウラ抜けとワイドから中へのランで中央・サイドをうまく使い分けながら攻め込む。

ビルド時の変化としては、Xhakaが最終ラインに入ることもあり、その際には左CBのRodriguezがワイドに開き高い位置を取る。その前の左WBのAebischerが中に入る形へ。

スイスのビルド時の可変

左CBのRodriguezはドライブの技術が高く、元の位置から敵陣へ向かう斜めのドライブで前進が可能になる。ここから持ち出すことでRodriguez自身がビルドの出口になり、さらにそこから攻撃を開始することができる。高い位置で受けても仕掛けやクロスなどのアタックに力を割くことができる。

アタック時には、右シャドーのNdoyeがペナ外に開いて受けて仕掛けるシーンもあり、ポジションに縛られずに個人の長所を生かすプレーも垣間見られた。Ndoyeの仕掛けにはわくわくする。


ハンガリーのブロックの失態

ブロックを組むことにしたハンガリーであったが、5-2-3のうち2-3の距離感を詰めすぎたことでその背後のライン間が空くことは前述の通りだったが、スイスの先制点はライン間への差し込みからスルーパスをゴール前に供給しDuahが流し込んだ。Akanjiのタテパス・Xhakaのラストパスも素晴らしかったが、ハンガリーのブロックに存在するライン間を埋めれずに修正しきれずの失点であった。

さらに、ハンガリーはこれ以外に守備時の連動は見えなかった。5-2-3の2-3はミドルブロック並みのつもりであったが、後ろはローブロックくらいのラインに留まり前線がプレスに出てもついていけない。これには、スイスの前線陣がウラへの狙いやアクションを試みること、(前線で降りすぎずに)ステイすることで、ハンガリーの最終ラインをピン留めできていたのであった。さらに、全体的にライン間を使われる原因としては、自分のラインを越されてもバックせずに「後ろ頑張って」という流れになってしまっていることだ。最終ラインに跳ね返さえてセカンドを狙おうというシーンはあったが、そこがすべてになると収められて自陣で枚数不足になり決定機を作られ続けてしまう。

守備から試合を作りたいハンガリーだったが、バラバラになってしまう守備陣形では相手に自由に攻め込まれてペースを握られる。

押し込むスイスは前半終了間際に、Aebischerのファインゴールで追加点を奪い完璧な流れで前半を終える。


後半での変化

後半に入り変化したのはスイス。スイスは攻守においてラインを低く設定し、保守的な展開にしようとしリードを確実に守ろうとする。「省エネかな?」と。
前半のようなアタッキング・フットボールはせず、プレスよりもけん制で構えるがベースに。守備時の狙いとしては、プレスラインを下げて引き込ませて中盤でクラッシュして回収する狙い。そして奪ってからはカウンターへという流れか。

構えて守るスイスに対しボールを保持する時間が増えたハンガリーだったが、前半同様に攻め込み方が不安定である。アクションが少ないのでコースやスペースを作り出せない。となると、スイスはポジションやエリアで構えるだけでボールが来たらクラッシュすればよいだけだ。


攻勢に出るハンガリー

攻め方が安定しないハンガリーだったが、徐々にリズムを取り戻し脅威を見せ始める。起点となるのは左サイド。前半は全く機能しないサイドであったが、後半はSzoboszlai・Kerkez・Sallaiが中心となり積極的にサイドから仕掛ける。段々と決定機も増加し始め得点のにおいがしてくる。

すると66分。左で起点を作りSzoboszlaiのクロスにあわせたのはVarga。再三の左サイドからの切り崩しで作ったチャンスを活かしきり1点を返す。

攻め続けられいよいよ危機を感じたスイスは前線のプレイヤーをチェンジ。Amdouni・Emboloを立て続けに投入し、プレスのかかっていなかった前線からの積極的なプレスを敢行し、相手の攻撃のスタートとなる部分(=相手のビルドのスタートである最終ライン)からストップをかけたい。プレイヤーを交代しフレッシュな状態にすることでまた一から立ち戻り守備をスタートする。

そうすると段々とハンガリーの攻撃の威力を低下し始め、逆にスイスのペースになっていく。(下図を参照)

赤がハンガリー・黒がスイス
※得点を境にハンガリーの勢力が低下

ペースを取り返したスイスは前線のプレイヤーがフレッシュになったことで、守備面でのプレスだけでなく攻撃時の勢いも取り返すことに成功する。その結果、前半と同じくらいのアタック頻度になると、93分にEmboloがミスを拾ってダメ押しの3点目。
ペースを取り戻し最後は締めの得点。


総括

結果として3-1でスイスの快勝となった。前半を見れば納得するような結果だが、後半の入りから70分程度にかけてはどちらに転んでもおかしくない展開だった。そういったなかで、スイスはどこを改善すべきかを見つけ戦い方を回帰し同点を許さず、逆にダメ押し点にまでつなげることができた。

スイスは全体的に攻撃の仕方・守備の仕方がある程度明確で、それぞれの役割がはっきりしていた。それぞれの役割が完了されると、合わさり良い展開になっていくのである。そういう運び方で前半のように素晴らしいゲームができた。しかし、前述の通り後半での戦い方はミスがあったように感じられる。そこで”やらない方がいいこと”が見つかったという意味では、ある意味良い後半であったのかもしれない。これからの戦い方にも注目したい。

一方で敗れたハンガリーは見せ場が少なくなってしまった。前半から腰が引けすぎた戦いでチャンスも作れずフラストレーションの溜まる展開だった。そういったなかで、相手のアシスト的な面もあったが後半は良いシーンは見られた。
やはり、Szoboszlai・Kerkez・Sallaiといった面々の力を活かすことが大事になりそうだ。グループリーグ残り2試合でどういった修正をかけることができるだろうか。

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