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QPR vs. Hull 〜結果がすべて?〜

EFL Championshipは第20節。早々と20節までやってきました。そろそろ前半戦も終了と時の速さを実感します。

今節のDAZN放映カードの内の一つのQPR vs. Hullの一戦を見ていきます。今季も下位に沈み苦しいシーズンになっているQPRだが、前節で連勝という良い流れを持ってきています。それを支えるのはChairです。今試合でも魅せるか。
一方のHullは今シーズンはプレーオフ圏内を争う形に。なかなか上々の滑り出しから良い流れを継続できている。今節も下位相手に勝ち点3は必須である。

今節のハイライトはこちらから(やっぱりネタバレしている…)↓


前半

スタメンから覗いてみると、QPRはChairがスタメンに復帰。良い流れをもたらすチームの核をスタートからぶつける。Hullは前節からCBとSHの2枚をチェンジし挑む。


コンセプトの現れ(15~20分程度の中で)

Hullは今シーズンもポゼッションサッカーの継続で主導権を握りながら試合を進める形をとっている。今節もそれが現れる。
序盤のビルドアップは2+4での入り口で開始し繋ぎ始める。この序盤ではリスクを負ってでも繋ぐという意識が出ており、無理しながらも繋ぐことをやめない。しかし、それ故に今節では相手のプレスに食われ始めミスが多くなる。8分ごろのミスはあまりにもいただけない。苦しい。

HULのビルドアップ開始時
橙:HUL 青:QPR


しかも、ビルドアップの出口になるSBのところで数的優位を作られて囲まれロストするという流れになる。SBの受ける位置も低いのでパス1本で前進することもできない。高い位置(敵陣内)をとっていれば前進がスムーズになり、前線のプレイヤーへの距離感も短くなりアタックの開始位置にもなる。が、それができていない。どうしても自陣で繋ぐ意識を持つために低い位置に留まってしまっているのか。さらに、SHとのタテ関係において同じレーンで被ってしまうこともあり、ボールを受けた際に良いサポートが受けられない。なので、ロストするかバックパスだけになってしまう。折角、出口になったのにまたやり直す羽目になる。これは、SBかSHがどちらかが内側に入ることで解決できそう。

SBのところでハマってしまう


CBの保持に対しCHとトップ下もパスを引き出そうと関わり降りてくるも、相手の陣形的にハマってしまい打開策にはならない。QPRは中盤に枚数をさき固く守る。

ただ、QPRは4-1-4-1の守備陣形できているため、3列目の1(アンカー)のエリアに差し込むとチャンスの雰囲気がある。ここにタテパスを供給し前進を可能にする。プラスしてタテパス1本DFラインを2列一気に剥がすこともできるので有効的。

4-1-4-1のライン間への差し込み


前進に成功するとサイドアタックに展開し、左サイドのFhilogeneに預けて1v1を仕掛けさせるか、FhilogeneにSB等が絡んで厚みのあるサイドアタックからシュートまで持っていく。
とりあえずサイドに預ければシュートまではいけるという感じか。2,3枚での関わりでフィニッシュまで到達する。

攻撃がシュートで終わればCKか相手のゴールキックからリスタートになる。CKなら得点のチャンスであり(HullにはCKのデザインもある)、相手のゴールキックでは相手が繋ぐなら前プレを開始し高い位置で奪取し再び攻撃に移ることができる。しかし、この試合全体を通してだが、Hullはシュートを決めきれない。ボックス前からのシュートは多いものの枠に飛ばなかったりGKのセーブに遭ったりとネットを揺らせない。


というHullのコンセプトに対して、QPRの方も見ていく。
Hullが攻撃の主導権を握っているので、それに対するQPRの守備のコンセプトから見る。

QPRは守備時は前述にもあるように、4-1-4-1のミドルブロックでラインを高めに設定しコンパクトにする。プレスの開始は、ワントップのDykesのワンサイドカットで限定する形。そして、Hullの2+4のビルドアップに対して2枚のCHへは2枚のIHを当ててコースを警戒する。+アンカーの設置(4-1-4-1の中盤の1)もあり中を閉める意識。サイドへ促しSBへ出た時にはスライドし囲い込んで前進のきっかけにさせない。

とにかく敵陣での守備時は前進するためのコースを遮断し、警戒することで相手を停滞させることが最初の目的。すると、ミスを発生させることができたり奪うチャンスがやってくる。相手が繋ぐことをやめないという”固執”に漬け込む。

しかし、必ずしも前進を止められるわけではなく、自陣に侵入されることもある。そういう時にはブロックを敷いて堅く守ることにする。この時には4-4-2のブロックでピッチ内にバランス良く配置し守る。崩されないことを重視し、速いアタックを喰らうことにはならないのでしっかり対応するだけ。


QPRの攻撃を見るとストロングのあるプレイヤーへの依存が大きい。
中心となるのは左SHのChair。チームいちのチャンスメイカーでありアタックにおいては彼に集めておけば解決するといった感じか。とにかくボールがよく収まり扱いがうまい。収めてからはキレのあるドリブルで仕掛けシュートやクロスまで持っていく。相手を翻弄しゴールまで迫ることができる。
右SHのSmythも同じようなタイプだ。Smythも同じようにチャンスメイカーとしての素質がかなり高い。Chairがいない時には彼が輝く。前節のPreston戦では前半は彼がチャンスメイクしようと試みるプレーがあり、Chairの代わりになるプレイヤーだなと感じた。

このようにストロングのあるプレイヤーになんとかボールを集めて周りはゴールを決めれるように合わせにいくなどをする。両翼にこの2枚がいるのは大きい。この試合でも何度も敵陣でDFを翻弄しチャンスメイクできていた。Hullはこの2枚のキーマンを捕まえきれずに自由にやられていた。

しかし、組み立ての部分ではかなりの不安がある。
ゴールキックからのビルドアップはハイプレスをかけられるとすぐにロストしてしまう。GKからCBに渡してSBに預けてそこから前線へつけようとするのだが、SBに向けてHullはプレスをかける。サイドを狙い所として設定しプレスを強める。SBは慌てて蹴り出せば相手の回収にあう。ミスやイチバチのロングでロストなど前線へ渡ることは難しいことのように感じられる。Hullは前プレ時はほぼマンツーでついていてマークに自由を与えないようにしている。=保持側のQPRは次のパスコースは全てDFがついているので地上でのパスは出せない。

QPRのビルドアップ開始時
橙:HUL 青:QPR


ワントップのDykesがポジショニングを下げてボールを引き出し、少し長めのボールを収めたり、SBへのサポートを強める。さらに、両SHがタッチラインギリギリまで開いてボールを受けることもある。前線の選手も工夫しながらアタックに繋げようとしてはいる。ビルドアップの脱出口兼攻撃の入り口になる。そうなればコースを見出せるのでなんとか前進は可能。中盤で入れ替わってカウンターのような形になることもある。

SBから脱出するには


自分らが相手の保持時に前プレをかけているが、それを逆にやられると苦しくなる。Hullはビルドアップの仕方を構築しているようで慣れはあるようだが、QPRはビルドアップの構築ができていない印象で最終的にロングを放るしかなくなる。しかし、その中で前線に預けさえすればチャンスを作ってくれるプレイヤーがいるというオプションがあるのは救いだ。


という形で試合は進んでいく。
コンセプトは5~15分あれば大体わかる。15分あれば試合の展開も予想はつく。


Hullの変化

スコアは動かないまま30分が近づく。

すると、Hullに変化が生まれる。
ここまでビルドアップの苦戦またはブロックを崩すことに苦戦していた。という中で、シンプルなアタックを行うことになる。シンプルさとは手数をかけずにロングボールも使用しながら相手のDFラインのは背後を積極的に狙うことだ。いわゆる擬似カウンターの開始。

序盤は保持時のウラへの狙いはなかったが30分以降から増加した。これまでのゲームでもあったように序盤は無理にでも保持してペースを握る。そしてある程度時間が経てばウラを狙うというシンプルさを見せ始める。保持していると相手は食いついてくる(停滞してもしょうがない)中でウラ返す。
普通のビルドアップを序盤は行い繋ぐことを優先し、ビルドアップ(を見せて)で引き付けておく。ここでロングボールの使用をしない。時間が経てば、擬似カウンターへの移行を見せてタテへ速いスピード感のあるアタックを自陣から開始する。

HULの擬似カウンター 例1
例2
※これはだたのウラ返しでもある


30分くらいまでくると相手も前に出て戻る体力も減るのでタテへ速くスペースを突く攻撃でチャンスになる。苦戦しているように見えてもそれは成功するためのエサである。シンプルに仕掛けるというウラの目的を達成するためにある取り組みであるように感じる。

「シンプルに仕掛ける」ことがウラの目的であると書いたが、それはプランBという可能性もある。プランAはポゼッションから綺麗に剥がしてゴールまで行くということで、試合序盤に取り組んでいたようなこと。今節や他の試合のように、プランAで点が取れないという状況に陥ってしまい、それを打開するためにプランBが存在している。ひとつの策だけでは勝てないのがサッカーというスポーツなので、複数の戦術を持つことは重要になる。しかし、その根底にある戦略は普遍で確固たるものでなくてはならない。

Hullはこれでブロックを崩す時間を省いて仕掛けようと試みたが、結局シュートまで至らないかった。ウラへ通っても供給するボールが長かったりDFにカットされたり。
イメージの共有ができていても、その質が悪ければ何にもならない。そして、放り込んだ後のセカンド回収などである程度押し込めてもまたブロックを崩すフェーズにも逆戻りしてしまう。停滞感からの脱出にはならなかった。

対して守るQPRは背後へのケアとプレスのかけ方に注意が必要になる。相手はウラ返しを狙っているので、簡単に飛び込んではウラを取られるだけになる。今までのように、プレスに行けば相手は保持したまんまで奪うチャンスがあると思わずに、ロングボールというウラ返しの武器の存在を気にしないといけない。なので、状況を見ながらリスクがどこにあるのかを把握し対応しなければならない。リスクを顧みずに飛び込むと危険なのだ。状況判断をし戦術を変えるという頭を使う行為がサッカーには必要なことを改めて感じる。

QPRの対策


前半は終盤へ

保持時間が多いが得点を奪えないHullと粘り強く守り一発のアタックに備えるQPR。均衡する展開が続く。

すると、迎えた46分。
QPRはゴールキックからプレーを再開し敵陣へ放り込む。敵陣で相手のパスミスからのセカンドを繋ぎ、ボックス左前で受けたWillockがカットインからファーへ突き刺した。

見事なゴールが決まり先制はQPR。
自陣で守りを固めて、相手のミスや不用意なプレーを狙っていた中でそれがようやく実を結んだ。狙いとしてミスを逃さないことは重要であり、自分らの力だけでは崩せない(ゴールへは到達できない)なら相手の非を突いてやってやった。しかし、それを拾ってからは持ち前の質的優位を活かして決定機を作り出す。押し込まれるような展開の中で割り切り、やることをシンプルなものにし、単純な形であったが結果を手に入れた。

前半は1-0でホームのQPRがリードして折り返す。


後半

QPRはリードを保ち残りの45分で守りきれるか。Hullは絶対に勝たなくてはならないゲーム。今季ここまで5ゴールのConollyを投入し、まずは1点を返したい。


不運とは…

後半早々からHullには不運が立ち込める。
サイドアタックの中心を担っていたFhilogeneがまさかの負傷交代。再三チャンスを創出していたアタッカーが不在になるのは大きいか。

押し込む展開になるが、サイドで仕掛けられるプレイヤーがいなくなり、攻撃の始点が見つからなくなる。1v1の場面を作り出せていたFhilogeneがいなくなり、チャンスメイクできる機会を作れない。サイドで仕掛けるプレーがあると、敵陣で時間を作ることにもなり全体の押し上げと攻撃の枚数(選択肢)を持つことができるのだがそれもできなくなる…。やはり、Fhilogeneがいないのはまずい。


リードの死守

リードのあるQPRは同点にされないことを最優先に守りに徹する。
守備時は前半中盤以降同様に、ブロックを敷いて堅守を継続する。攻撃においてもコンセプトはシンプルさを意識する。自陣での保持時はGKからリスクを負わずに放り込む形に。前半終盤からこの形にシフトしており、リスクを負って無理なことをしない。追加点を取れればラッキーくらいの感覚。

前半中盤ごろまでは繋いでロストする回数が多くピンチに直接繋がってしまっていたので、それを改善するためのものであると考えられる。また、敵陣にボールを送り込みなるべく自分たちのゴールからボールを遠ざけて時間を潰したいということもある。

ロングボールの供給回数が増加したということに伴い、ウラへ走るプレイヤーの存在も重要になる。サイドのプレイヤーは特にウラに走って狙っておかないと、出し手は適当な放り込みを実施してしまう。出し手に少しでもパスコースを見出しためのサポートをする必要がある。また、ウラへ走れば相手の最終ラインも押し下がり、より敵陣の深い位置までボールを送れるという効果もあるので有効的なプレーになる。
併せて、トップはポストプレーの準備(ボールを収める)をしなくてはならない。収めれば前線の起点になり敵陣内でのマイボールの時間を少しでも長くできる。

ロングボールを放ってロストしたとしても、そこから前プレを再開し再びマイボールにすることもできる。これがネガトラの目標になり目指すべき姿だ。しかし、シンプルにウラ返される可能性もあるので無闇にプレスに行くことはしないようにすべきか。こういう時こそ慎重に。セットしてブロックを構築することを優先することもあり。


流れゆく時間

Hullはブロックを崩せない時間が続き決定機の作り出しが難しい。ただ、何度かボックス内やその直前でシュートを放つまで至るシーンもある。しかし、これを決めきれない。QPRのGK Begovicのビッグセーブもありネットを揺らせない。

これほどゴールに近い位置まで入り込んでいるが決めきれない。さらなるシュートの易化が必要なのかと思ってしまう。確実にゴールを奪うには、GKを交わす・交わすパスことが挙げられる。しかしながら、相手もブロックを組んでいるが故にボックス内のDFの枚数も多くそんなパスをしてはカットされることになる。というか「撃てよ!」と言われる。そもそもシュートを撃たなければゴールにはならないのでね。あとは運が絡んでいるのかもしれない。

そんなゴールを奪えないHullを横目にQPRは73分。ロングボールを敵陣に供給し相手がGKへバックパス。このパスが弾みGKが処理に苦戦しクリアしきれず。右ペナ内で拾ったWillockはすかさずゴール前へラストパス。これをChairが流し込んで2点目。QPRに大きな2点目が入りリードが広がる。
ワンチャンスをものにするとはこのことである。運はQPRにあったのか。

Hullにとっては、何度の決定機を決めきれない中でポロッと相手に2点目が入るという最悪ながらも典型的な展開に。ブロックを崩しきれないと(ゴールを奪えない)逆にやられがちなのがサッカー。しかし、これはブロックを組んでいる側の狙いが遂行されただけでもある。


終盤へ

意地でも1点を返したいHullはTufanを投入しさらに攻撃の火力を上げようとする。

堅さを増すブロックに対し、パスの出し方やチャンネルランなどの工夫でボックス内・ポケットへ侵入する。工夫のある仕掛けを見せるもあと一歩のところの精度は上がらず。(最後の最後のフィニッシュワークがねぇ…)

ここで、ブロックを組まれているなら前半途中からやろうとしていた擬似カウンターを発揮すれば良いではないか。と思うのだが、ウラを狙うのはゾーン2に入ってからやっとである。早い段階でウラを狙う動きや供給がないので、相手がセットし構えている状況から放っても相手は対応しやすい。前半のように相手がプレスをかけてくるタイミングでスイッチを入れるなどの工夫が求められる。しかし、受け手は皆、足元でも要求が増えてパスワークでブロックを崩そうとする。ボールが自陣にあっても敵陣にあってもそれは変わらなかった。

そんなこんなで最後までHullはブロックを崩しきれなかった。
一方のQPRは目的を明確にしリードを守り切った。
試合は2-0でQPRがホームで勝利。なんと、3連勝で降格圏からの脱出も見えてきた。


総括

ホームQPRは見事な試合運びで3連勝。乗りに乗っていますね。これを継続できるかで来季のディビジョンは決まってきそうです。

ブロックの統制と堅さ。攻撃の鋭さ、ストロングプレイヤーのChair・Smythの健在。攻守においてのやることが本当にはっきりしていて選手もやりやすそうです。守って守ってからのカウンターは下位のチームにとっては強力な戦術で、上位喰いができた試合はこのようなコンセプトである時が多い。しかし、戦術の幅がなくストロングプレイヤーがいるというオプションが亡くなった時の代替策がないのが懸念点。例えば、ChairとSmythまたはWillockがいなくなったら。その時の攻撃の中心は誰になるのか、誰がチャンスメイクするのかどう攻めるのか。最悪の事態に陥った際の恐怖は計り知れなさそうです。

敗れたHullはコンセプトを十分に発揮できていたが結果が伴わなかった。ポゼッションの固執からの擬似カウンターの発動は予想通りでしたが決定機につながるシーンは少なかった。自分らの狙いを達成できてもそれは内容である以上、ゴール・勝利という結果から遠ざかってはなりません。プロスポーツである以上結果が出ないといけません。確かに、スタイルを確立して貫くという哲学はとても面白いですが、ゴールを奪えないサッカーは見ていても面白くなくなります。ましてや、Hullは今季はプレーオフに参加できるチャンスなのでひとつでも多くのゴールを勝利を手に入れなければならない。これからのゲームがどうなるのか。

互いの今後に注目しましょう。

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