◇後輩社員の料理① ~ お見舞いの目的 ~
後輩のゆり様は2人きりになると小悪魔になって挑発。それ以外の時は素直で一生懸命。という態度を取り、私はそれに翻弄されるという奇妙な関係が続いていた。
ある日、私は高熱を出して会社を休んでしまった。滅多に体調を崩さないため、ゆり様との関係性に疲れが出ているのかな。そんなことを思いながらベッドで横になっていた。
今は何時だろう?誰かからの着信で目が覚めた。スマホの画面を見ると18時12分だった。こんな時間まで眠っていたことにも驚いたが、ゆり様からの着信ということに衝撃を受けた。
「先輩、お身体大丈夫ですか?」
彼女からの第一声は敬語だった。ということは課長から指示を受けて電話をしているのだろう。病気で休むことのない私を心配してくれているのかもしれない。
「ありがとう。まだ熱が下がらなくて…」
「あら、そうなんですね。熱が下がらないのは辛いですよね。食事はできていますか?」
そういえば、朝からベッドで横になっていたため、何も口にしていなかった。
「何も食べてないです…」
なぜか申し訳ない気持ちがして、敬語で答えてしまった。
「それは大変じゃないですか!私がご飯作りに行ってあげますよ」
彼女の言葉にびっくりした。確かに冷蔵庫にまともな食料は入っていないため、食事の準備をしてもらえることは助かる。だが、病気であるとはいえ男性の自宅に女性一人で来るのはどうなのだろうか?
「いや、会社休んで負担もかけたし、仕事終わりまで面倒かけられないよ」
「私が家に来るのが嫌なの?」
急にため口に変わったことは全然気にならなかったが、彼女が自ら自宅に来てくれようとしていることに驚いた。働いていない頭を必死に回して考えた。そして少しの間を置いた後、
「うーん。それではお願いします」
「分かりました。それじゃあ食べやすそうなものを買ってお伺いしますね」
この後、軽く雑談をした後電話を切った。切る直前によく聞こえなかったが、囁き声で
「たくさん〇〇でかわいがってあげるね」
と言ったような気がした。〇〇の部分はなんと言っていたのだろうか?彼女はかわいがってと言ったのだろうか?電話を切った後もそんなことが気になって、全然休めなかった。
しばらくしてインターフォンが鳴り、彼女の元気な声に返事をした。この後普通に食事をして終わるとはとても思えず、体がさらに熱くなってきた。
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