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大人の事情

 幼い頃、3つ離れていた妹とケンカをすると、よく母親に叱られた。
 私は母親に私の正義を訴えたが、私の訴えは全く通じず、母は「おまえはお兄ちゃんでしょ」の一言で私に全責任を被せて終わるのが常であった。

 恐らく、それには理不尽だが母親にとって簡便合理的な様々な理由が存在していたのであろうが、だからこそ大人の事情なのであって、決して純真な幼子に理解できるものではなかった。

 例外的に積極的に相手を怒らせ揉め事を楽しむような人もいるにはいるが、基本的に争い事というのは互いに言い分があり、相手の言い分に納得がいかず、結果として諍うということであろう。
 お互いに相手の非を主張する。争いごとには双方に争うだけの理由があるのだ。

 こどものケンカでは一方のこどもにその全責が負わされる事が多い。
 私の妹との兄妹ゲンカもそうであったが、友達同士のケンカでもだいたい「○○ちゃんが悪い」と一方の当事者だけが悪くなることが圧倒的に多かったように思う。

 これはそのケンカが大人によって裁かれる場合だけではなく、そのケンカがこどもによって裁かれる場合も同様であった。
 当然である。なによりも絶対的な正義である自分の親の裁き方を知っているこどもは、それが正しい裁き方だと経験上認知しているからに他ならない。
 こどもは親の鏡である。こども世界の争いごとは大人の事情によって裁かれることになる。

 ところが、大人の世界はこうはいかない。
 自動車事故では互いの過失の割合を算定し、事故の損害を金額に換算し、それぞれ過失に応じた分を相手に支払うことで事の解決を図っている。
 相手が100%悪いと思うような事故でも、4:6で相手の過失の方が少しだけ多い、なんて裁き方がされる。
 納得のいかない「前方不注意」なんてのが過失割合の計算に組み込まれていたりすると、これはこれで争いの原因になりそうだが、そこは大人である。争いを続けるよりいかに早く事態の収拾を図るかが経済的にも精神的にも得策であると知っているのである。
 かくして、不満は残るが示談書に押印し一見落着ということになる。

 裁判もしかりである。
 「情状酌量」なんてこどもの世界では有り得なかった言い分がまかり通っているのである。
 大人の世界に大人の事情は適用されない。
 それも大人の事情からだと言ってしまえばそれまでなのだが……。

 さて、世界は争いに満ちてきた。
 ロシアvsウクライナ。イスラエルvsハマス。米英withその子分vsフーシ派。韓国vs北朝鮮。中国なんてのはフィリピン、インド、ベトナムそして台湾ついでに日本といろいろなところにちょっかいを出している。
 イランもアメリカにちょっかいを出したくてウズウズしているに違いない。

 で、である!
 世界の争いごとはこどもの世界、つまり大人の事情で裁かれるのである。
 先の大戦で日本が真珠湾のアメリカ艦隊に奇襲攻撃をかけたのも言い分があり、アメリカが広島と長崎に原爆を落としたことにも言い分があった。
 結果は日本が降伏し破れた。

 しかし、戦争に過失割合はない。
 第二次世界大戦も日本とドイツとイタリアが全部悪いということで一件落着させられた。だから言い分や理由は重要視されない。
 大人の事情で裁かれるのである。

 イラク戦争では、イラクは大量破壊兵器保持嫌疑がかけられ、国連の決議もないままアメリカを中心とした有志同盟が軍事進攻を開始した。しかし、大量破壊兵器は存在せず開発計画すらなかったことが明らかになる。
 それでアメリカは謝ったかというと然に非ず。
 大人の事情で裁かれたのである。

 日本に於いてロシアとウクライナの戦争で、ロシアのウクライナ侵攻の理由を事細かに報道するメディアはあまりない。同じようにロシア側からの視点で戦争を報道する記事もほぼ見ない。
 結果、日本人はウクライナシンパとなる、というようなことはないだろうか。
 これも大人の政治的事情なのであろう。

 争いごとをなくすにはどうしたらよいか? 私なりに考えてみた。
 何故この結論に達したかは詳らかには書かない。
 書いたところで反論されるのがオチだし、少なくとも政治的な意見に正解はないというのが私の考えだ。第一書くのが面倒だし、そもそもこれが政治的な意見だと書いている自分がとってもとっても恥ずかしい。
 だから、これも私の大人的事情だと思って理解してくれ。

 さて、結論はこうだ。
 アメリカと中国とロシアとイスラエル、ついでに二度手間になると面倒だからイランもこの地球上から消し去ればよい。
 世界中の国々が一斉蜂起しこれら5カ国に攻撃を仕掛ける。原爆だろうが水爆だろうが手段は選ばない。
 世界には240以上の国と地域があるのだ。流石のアメリカでもこれだけの国々と戦う力は持ち合わせてはいまい。

 批判はもちろんあろう。
 だが、これら5カ国を地上から抹殺すれば、国際的な紛争は確実に数を減らすだろう。
 そんなことをしても次のアメリカや中国、ロシア、イスラエル、イランとなるような国々が必ず台頭してくる?

 そんなことは百も承知だ。
 そうなればまた世界中の国々が協力してそれらの国々を滅ぼせばいい。

 どんなに正義のない戦いだって、裁くのは勝ち残った方だ。
 「勝てば官軍」という言葉がある。
 大人の事情では、自動的に勝った方に「錦の御旗」が翻るようになっている。
 つまり、どのような理由であれ勝者の言い分がまかり通るってことになる。そして、それが正義ってことになる。

 とりあえず、次の国連総会へは、日本としてアソコとその手前のソコの国を「亡ぼすべき国リスト」として提出しなければならないだろう。
 ところで、日本が「亡ぼすべき国リスト」に載せられるというリスクはないのかという声も聞こえるが、そんな心配はいらない。
 世界中はアソコとソコ以外は親日国で溢れている。
 試しに「反日国ランキング」でググってみればいい。

 いいかい、こうやってググると………………。

 あー、嘘嘘。今まで書いてきたこと、全部嘘。
 全世界がアメリカや中国を攻め滅ぼすなんて冗談に決まっているじゃない。そんなことしちゃいけないよ。第一、そこには正義がないね。

 大人の事情?!
 何だよ、それ? こどもみたいなこと言ってんじゃないよ。

 今、日本がすべきことは、世界中の国々ともっともっと仲良くしなくてはならないということだと確信を持って言えるね。
 特に、北朝鮮、中国、韓国、ロシア、インド、スペイン、トルコ、オランダ、ドイツ、 オーストラリアあたりとは仲良くすべきだ。

 インド、スペイン、トルコ、オランダ、ドイツ、 オーストラリア……?!
 知らなかった……。
 私は北朝鮮、中国、韓国、ロシア、インド、スペイン、トルコ、オランダ、ドイツ、 オーストラリアが大好きです。
 でも、冷麺と北京ダックとキムチとボルシチとインドカリーとパエリヤとケバブとチューリップとメルセデス・ベンツとコアラは何故かあまり好きではなくなりました。 

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