【音楽の話】インストルメンタルを楽しめるようになった②

前回、「楽器の音もロクに聞き分けられない人間だけど、インストルメンタルを楽しめるようになってきた」という話をした。
そのきっかけが2つあって、今回は2つ目のきっかけの話。

2つ目のきっかけは、Nesoraさんというヴァイオリン奏者の方の動画である。

私は音楽ならヴィジュアル系と呼ばれるバンドの曲が好きで、家族の影響もあって幼少期からヴィジュアル系バンドの曲に親しんできた。
(なにをもってして「ヴィジュアル系」とするかはいろいろと議論があるし、個人的な考えもあるにはあるが、面倒くさいのでここでは一般的に「そう」だと思われているものを指すことにする。)
特に90年代~00年代の、ヴィジュアル系が大いに盛り上がった時期からネオ・ヴィジュアル系と呼ばれるバンドが出てきたくらいのヴィジュアル系バンドを好んでいる。

話は変わるが、今年になってから「金色のコルダ」というゲームに突如ドハマりし、Twitterでその様をよく呟いていた。基本がオタクなので、ハマるときは急転直下でハマるのだ。
「金色のコルダ」はコーエー(現コーエーテクモゲームス)が出している乙女ゲームのシリーズで、ナンバリングによって多少設定は異なるが、主人公がヴァイオリン奏者として登場し、ゲーム中でも様々なクラシック曲が採用されている。
前回の記事の通り、私はインストルメンタルの楽しみ方が分からない人間であったので、ゲーム中のクラシック曲は全然覚えられずにいた。なんならゲーム攻略に関わらない部分ではスキップしていた……。
しかしこのゲーム、出てくるキャラクターほぼ全員が(当り前なんだが)管弦楽を嗜んでおり、主人公だけでなく私の好きなキャラはみんなヴァイオリンやチェロを弾いている。必然的にヴァイオリンに興味を持つようになり、無駄にヴァイオリンの構造なんかを知りたくなっていた。当然、つぶやきもそういう話が増えたり、そうじゃなくてもコルダの話ばっかりしていた。
そんな私を見かけた(むしろ見かねた?)ヴィジュアル系がお好きなフォロワーさんが「ヴィジュアル系の曲をヴァイオリンでカバーしている方が何人かいますよ」と教えてくれた。

そのなかで知ったのがNesoraさんだった。Nesoraさん以外のヴァイオリン奏者の方も何人か教えてもらっていたのだが、継続して聞き続けられたのはNesoraさんの演奏だった。
NesoraさんはYouTubeチャンネルでBUCK-TICK、Janne Da Arcといった私が好きなヴィジュアル系バンドの曲をヴァイオリンでカバーした動画で上げていた。
最初は「好きな曲を弾いてくれているから」という理由で聴き始めたし、私には(申し訳ないが)技術的なことは一切分からない。なにせ楽器を弾いたのは小学校のリコーダー程度、音楽的素養はゼロのジャイアン歌唱力の人間だ。
それでもだんだん、「カバーしている曲の原曲が好きだから聴こうかな」から「この人の演奏が好きだからもっと聴きたいな」と思うようになった。
YouTubeで定期的に生配信で演奏してくれているのも、毎回聴きに行くようになった。TVドラマとか固定の時間で放送しているものを追いかけるのがめちゃくちゃ苦手なくせに。でもそれでも聴きたいと思うようになった。

Nesoraさんはご自身でオリジナル曲の作曲もされている方だった。
オリジナル曲ということは当然「知らないインストルメンタル曲」である。
それも聴きたいなという気持ちになった。インストルメンタルの楽しみ方が分からないとずっと思っていたのに、自ら進んで原曲を知らないインストルメンタルのオリジナル曲まで聴こうと思うなんて……我ながら驚いた。
聴いてみると不思議なことに、今まで親しんできた「歌声のある楽曲」と同じように楽しめた。それまでインストルメンタル曲を「楽しいな」と思ったり聴き続けたりすることはなかったのに。コルダでクラシック曲をスキップしていた人間なのに!
個人製作されたCDも販売されていたので、これ幸いと購入した。以来、飽きずにずっと聴いている。
(1stアルバムの「絶弦」「A drop of tear」と2ndアルバムの「mayoigo」、あと「マズルカ」と「雨人形」が特に好きだ。)

なんでなのかは正直分からない。「好きだな」と思うものに明確な理由を見つけるのは困難だ。
なんとか理由らしきものをひねり出すと、なんとなくだが、私の耳にはNesoraさんの弾くヴァイオリンの音は人の歌声のように聴こえているように感じる。
ヴァイオリンの音と人の歌声は全然違うと頭では分かっているが、「このヴォーカルの歌声が好き」と同じような感覚で、Nesoraさんのヴァイオリンの音を好きだなと思っているような気がする。……どうにも曖昧なことしか言えないのだが。
単に「感情がこもった演奏」というのともちょっと違う気がする。もちろん感情は込められていると思うが、それはどの楽器だって、どの奏者だってそうだと思うから。難しい話ではなく、私の耳と相性がいいってだけかもしれない。
この感想がヴァイオリン奏者の方にとっていい感想なのかどうかは分からないが、ともあれ私にとってはとても嬉しい出来事だった。

前回のきっかけに続き、こうして少しずつだがインストルメンタルを楽しめるようになってきた。まだまだ狭い範囲の楽しみ方かもしれないが、「楽しい」と思える一歩を踏み出し、現在も継続して楽しめるものがあるということがまず嬉しい。
何かを新しく好きになったり楽しむことができるようになるのはとても気持ちがいい。
そのきっかけを与えてくれた人には深く深く感謝し、今後も良き創作活動を続けていってもらえたら本当に嬉しいなと思っている。できることはあまりないが、とりあえず音源が出たら欠かさず買い、ごく狭い交友範囲しか持っていないが地味に布教している。どうか末永く活動し続けてもらいたいものだなぁ……。

(NesoraさんのYouTubeチャンネルで公開されているNesoraさんオリジナル曲「マズルカ」)

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