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フードスコープ レポート#3(アイスクリーム)

こんにちは。フードスコーレのインターン生であり、フードスコープにはメイトとして参加している山﨑です。6月から始まったフードスコープのアイスクリームづくりもいよいよゴールが見えてきました。夏の終わりには間に合いませんでしたが、その分納得のいくアイスクリームが完成しそうです。全3回にわたった活動の振り返りも最後の回となりました。今回の振り返りでは、最後の製造ミーティングの様子と、フードスコープ第1弾「アイスクリームのトレーサビリティ」を通して私が感じたことをお伝えしていきます。

前回までの活動の振り返りはこちらをご覧ください。

試作品第2弾を食べて

試作品第2弾で使用した材料

・なかほら牧場の牛乳
・なかほら牧場の生クリーム
・素焚糖(すだきとう)
・「Co・En corporation」のバニラ (パウダー状にしたものをあとがけ)

試作品第1弾との違い

・乳脂肪分が4倍に!
バニラの香りをもっと強く引き出す役割として、無脂肪ヨーグルトではなく脂肪分の多い生クリームを使用した。

・砂糖は1.7倍!
上白糖をサトウキビ由来の「素焚糖」という砂糖に変えたことで、優しい甘さと砂糖の風味が加わった。砂糖の量も多くしたことで、第1弾よりも甘さが強い印象に。

・パウダー状のバニラをあとがけ
バニラの鞘を粉砕しアイスクリームに入れていた第1弾は、その粒の大きさと舌触りが気になってしまった。このことから、試作品第2弾ではパウダー状に加工し、食べるときに加えることでさらに香りを感じやすくした。

〜私の感想〜

試作品第2弾の第一印象は「このつぶつぶはなんだろう…?」。そして、一口食べて最初に感じたのは、甘さでした。

第1弾の試作品と比べて圧倒的に感じた甘さのおかげで、カップひとつを食べ終わったときの満足感も増したように感じました。最初は何か分からなかったつぶつぶはそれを少しよけて食べたり、それだけで食べたりしているうちに、脂肪分だということに気が付きました。

同時に、さらさらとしているアイスクリームにもこんなに脂肪分が含まれているんだと分かり、普段何気なく食べているアイスクリームの脂肪分を想像するとぞっとしてしまいました。きっと脂肪分を見ながら食べるアイスはいつも以上に罪悪感たっぷりですね(笑) 食べ過ぎ予防にはよいかもしれませんが、スプーンに残るほどの固形感ではアイスクリームらしい食感が損なわれると思いました。

また、後からかけたパウダー状のバニラは、第1弾の試作品に比べて食べやすくスパイシーな香りを感じることができました。脂肪分が加わったことで舌に牛乳の風味が長く残り、なかほら牧場さんのおいしい牛乳をより感じられた点が試作品第2弾の一番好きなところです。今回のしっかりとした甘さとサクサクとした食感はそのままで、最終調整では口当たりのなめらかさを追求したいと感じました。

~メイトの皆さんの感想~

①「率直に言うと、前回よりもおいしい!!!」
甘さと脂肪分がアップしたことがすごく分かった。アイスクリンのようなさっくりした食感は好きなので残したい。

②「脂肪っておいしい!」
試作品第1弾と第2弾と同時に食べ比べることで違いを感じることができた。脂肪分のつぶつぶはあまり気にならない。脂肪分だけで食べた時に感じた砂糖ではない甘さを感じられて、脂肪がおいしさには欠かせないものだと実感した。しかし、せっかくおいしい味でも「なんか嫌な感じ」を一度感じてしまうとその人の感想からおいしいが消えてしまうかもしれない…?食事って難しい!

③「甘さを少しおさえたい。」
味は試作品第2弾の方がよい!バニラも前回よりバニラ特有のスパイス感を味わうことができた。個人的にはもう少し甘さを控えめにして、脂肪分の粒感をなくしたい。

④「素焚糖いいね!」
上白糖から砂糖の持つ風味が強い素焚糖に変えて正解だった!優しい甘さのおかげでなかほら牧場さんの牛乳の甘さや風味、バニラの香りを邪魔していなかった。

最終調整に向けて

つぶつぶの正体

試食した全員が気になっていたつぶつぶ。その正体はバターの赤ちゃん!このつぶをなくし、なめらかにするためにはホモジナイズする必要があるそうです。ホモジナイズとは、ホモジナイザーという機械を通して乳脂肪の大きさを均一化する加工のこと。なかほら牧場さんのアイスクリームの一部もこの加工をしているそうで、脂肪分が高い材料を使用しながらなめらかな舌触りを実現するには欠かせないのだとか。

★脂肪分の量は変えずに、牛乳と生クリームをホモジナイズすることでアイスクリームのなめらかな口当たりにしていくことに。

甘さの調節

★かなり控えめだった第1弾の甘さ(上白糖9.61%)と第2弾の甘さ(すだきとう16.63%)の中間を目指して、最終製造品ではすだきとうで13.56%にすることに。

試作第1弾と第2弾の成分表

フードスコープ第1弾「アイスクリームのトレーサビリティ」を終えて

アイスクリームを食べる頻度は多いけれど、もっとおいしくするためには、という視点を持ったことがなかった私にとって、今回の活動は楽しくもありとても難しく感じていました。その中でも面白かった発見は他の人の好みを知ると、自分の好みが見えてくることです。みんなで感想を言い合うことでおいしさの輪郭がはっきりし、自分がどの部分に対しておいしいと感じたかを気付くことができました。

それと同時に、「おいしいアイスクリーム」は沢山の要素がとても微妙なバランスで積み重なってできていると感じました。牛乳、生クリーム、砂糖、バニラという比較的シンプルに構成されているアイスクリームでさえ「おいしい」を作りだす要素は多く、そのバランスをとることはとても難しかったです。

しかし、牛乳のプロフェッショナルとしていつも新しい提案をしてくださった「なかほら牧場」の牧原さんや岡田さん、バニラの香りの抽出方法を一緒に模索してくださった「Co・En corporation」の武末さん、難しい条件の中で私達の理想をカタチにしてくださったWAT Inc.の「Marked」樋口さんと萩原さん、異なる3つの業界から集まった案内人の皆さんのおかげでフードスコープのアイスクリームは完成が見えてきました。この場をお借りして心から感謝をお伝えします。ありがとうございました。

 「おいしいアイスクリーム」を求めて思考する中でいつのまにか考え始めた「おいしいってなんだろう?」。4か月間この問いに向き合い、今の私なりに答えを出しました。それは「愛着」です。その食べ物に対する情報やその味をもっと感じたいと思うことが「おいしい」のではないでしょうか? そう感じたのは、個人的に、製造の背景や知識を得たことによりどんどんとアイスクリームに愛着が増し、それに比例するように「おいしい」と強く感じるようになったから。もちろんこれはアイスクリームに限ったことではなく、すべての食事のシーンに共通していると思います。”風邪をひいたときに食べるうどん”、”お祭りの屋台の焼きそば”などその食べ物にまつわる文脈が「愛着」となったとき、「おいしい」は生まれるのだと思います。

フードスコープ第1弾「アイスクリームのトレーサビリティ」を通して、「母子の時間を守る牛舎を持たない山地酪農」「マダガスカルのバニラ農家が目指す持続可能な農業」「素材へのリスペクトを持ったものづくり」という3つの新しい世界に出逢い、自分の嗜好も知ることができました。何よりアイスクリームがもっと好きになりました。パソコンの画面の中の交流ではありましたが、私達はアイスクリームで繋がっていると思います。さわやかな牛乳の香りになかほら牧場で自由に暮らす牛さんを思い出し、アイスクリンのような歯触りにこの食感を推していたあの人の顔を思い出す。カップの蓋を開けた時から一口ずつ味わうたびに、この4か月で出会った人がよぎるんだと思います。これは今までで一番食べ終わるのが惜しいアイスクリームになりそうです。メイト全員の理想が詰まったアイスクリーム。これを味わえる日はもうすぐそこまで来ています。

(書き手:フードスコーレインターン生 山﨑柊果)


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