見出し画像

スイーツ専門のりんご農家への転換!―水木たけるさん―

FOODBOX(フードボックス)株式会社が主宰するオンラインサロン#FOODlab(フードラボ)

食・農業に興味がある方のための月額会員制オンラインコミュニティで、
現在約100名の方にご参加いただいており、noteではメンバーの皆さんの活動や素顔も紹介していきたいと思います。

記念すべきお1人目は、青森県でりんご農家を営む水木たけるさん。
20数年間、常に人より五歩先、十歩先を見据えて歩んできたプロりんご農家が、今この時代に目指すものとは?じっくりと伺いました!

おいしいりんごを、もっと世の中に広めたい

―水木さん、はじめまして。自己紹介をお願いします。
青森県弘前市のりんご農家の水木です。おいしいりんご作りにこだわる両親を見て育ち、このりんごをもっと世の中に広めたいという想いから、約25年前に家業を継ぎました。現在、農園では生食用のりんごも栽培していますが、私自身は加工用のりんご生産と商品開発にシフトしたいと考え、さまざまな取り組みを行っています。

画像4

―加工用というと、ジュースやジャムに使うりんごでしょうか?
はい。当園で採れたりんごを使用したりんごジュース作りは、10年以上前から行っており、インターネットのお取り寄せサイトで日本一も獲得しました。現在はそこからさらに発展させ、スイーツの原料など、りんごを使用した加工品の開発に力を入れているところです。

―加工用のりんご作りは、生食用のりんごとは違うのですか?
まず、品種が違います。例えば、昔は主流だった紅玉という種類のりんご。小さくて甘さが足りず、柔らかく変色しやすいなどの理由から、現在生食用にはほぼ流通していません。しかしジュースに加工するには適している品種です。

生産過程においても大きな違いがあります。生食用のりんごは、とにかくスーパーに並べたときに一般消費者に訴える「見た目」が評価されます。棚に並べやすい形、鮮やかな赤み…規格に合わなければ、はじかれる。本当のことをいうと、見た目がすべてで味すらも関係ないんです(笑)。しかも規格に従って選ぶプロセスに相当のコストがかかっているため、収益性は悪くなります。その上、選ばれなかったものはいわゆるB級品扱いで、フードロスとなります。農家からすると、なおさら収益性が悪化します。

一方、収穫したりんごを加工品にして売れば、こうした見た目による選別を受ける必要がなくなります。それによるロスや、無駄なコストの部分も減らせますので、農家にとってはとてもありがたいんです。

小規模農家の勝負どころとは?

―なるほど。それで加工用のりんごにシフトしているんですね。素晴らしい先見の銘ですね。
ところがこれ、うまい話ばかりではないんです。私たちのような小規模農家が、農作物加工をするということは。
私がこういったことに目をつけたのはもう今から25年も前のことです。その頃は産直EC、農家が自分たちの想いを伝えて売るような手法はまだまだ目新しいものでした。しかし今、農家さんの名前を冠して売っているりんごジュースなんて、山のようにあるでしょう。

―確かに、たくさんの商品があるように思います。
りんごの加工には4、50年の歴史があります。絞り専門の業者もあるほどで、私たち小規模農家はそうした加工業者に持ち込んで自分たちの銘柄のジュースを生産するのですが、結局やってみてわかるのは、私たちができるようなことは既に資本力の大きな大手がすべてやっていることなんです。小規模農家のジュースは、製造設備や広報宣伝の規模をスケールダウンさせた、大手の〝劣化コピー〟にすぎません。勝てる要素が一つもないんです。

―そうなんですか…。でもやっぱり、大手の大量生産品より、農家さんの産直の味を選びたい消費者もいるのではないかと思うのですが。
仮に素晴らしい商品が出来たとしても、農家は販売先を見つけることも不得意です。スーパーの棚を見てください。大手による廉価でおいしいジュースで、すべて埋まっていますよね。そこに、物としての違いもそこまで打ち出せていない、かつ値段も高いものを持っていっても、太刀打ちできるわけがない(笑)。

おそらく農家さんで6次産業化をやってみた人は、みんなこの問題にぶつかっているんじゃないかなと思います。補助金をもらい、借金して設備投資して、物を作るところまではうまくいく。でもその先の販売の部分で、コストの回収ができないのが現実なんです。

水木さんのこれからの「ドリーム」

―厳しい世界なんですね…。25年間、こだわりのりんご作りとりんご農家の生き残りに取り組み続けた水木さんの答えは何なのでしょう?
やはりまずは生産者だからこそできる「味」であり圧倒的な「品質」です。その上で、勝負できる商品と販路開拓を考えなければいけません。

例えば、うちのりんごジュースも、日本一の評価をいただきはしましたが、toCの販売のみでは、やはり生産量のキャパや、事務作業量などとの兼ね合いもあり、採算をとることが難しい。結果的に、今はフェイスブックで連絡をいただいた希望者に直販するのみにしています。つまり本当に商売として成り立たせるためには、toCではなくtoBに移行しないと難しいのが現状です。ある程度まとまったロットで、販売も代行してもらえるようなところに卸す。それが農家にとっての理想形だと思います。

画像4

―それで、今toB向けの新商品開発と販路開拓に取り組まれているんですね。
そうです。まだ詳しいことはお話しできないのですが、当園のりんごの加工品を、あるスイーツへ活用する道を模索しています。

ちなみにこの加工品、これまでにない新しいタイプのものなのですが、とある菓子製造者さんに、製菓素材として「神レベル」という評価をいただくことができました。

―神レベル!!!それは早く商品化されたものを食べてみたいです!
元々おいしさにこだわり抜いて作ってきたりんごです。生で食べてももちろん良いのですが、私の戦略はいつも〝逆張り〟です。農家の強みは、りんごが余るほどたくさんあること。でも余っているものではなく、一番おいしいりんごをあえて「潰す」ことで、神レベルの加工品が作れると思っています。…こんな阿呆なことやっている人いないですよ。でもここまで振り切って、リスクをとってでもやっていかないといけません。

画像4

―最後に、これからの目標や展望をお聞かせください。
一昔前、ガラケーが全盛期だった頃がありました。すると作り手もガラケーという枠組みの中で、より値段が安いとか、より充実したサービスを、とか、同じようなことを競ってやっていたんです。でもその中でたった一人の人が、スマートフォンという全く新しい価値のものを生み出した。

今の農業って、ガラケーやそれに付随するサービスをみんなで一生懸命作っているような状況です。私は農業の将来形を作りたい。次の時代をイメージして、ガラケーに対するスマホのような、新たな価値を創造する仕事をしたいんです。

―これからの農業界を変えていこうとする存在が、#FOODlabサロンに入ってくださっていることを、とても頼もしく思います。
農業を従来型の最低賃金の労働の上にしか成り立たない産業ではなく、加工と掛けあわせるのはもちろん、食産業など、別の産業のフレームに切り替えること。世界中から引き合いがくるような、高い価値の商品を作り出せるような産業に変革していくことをイメージしています。

ともかく、働く人がしっかりと人生設計ができるような仕事にしないといけない。私はたまたまりんご農家として試行錯誤する中で、果物はこれでいけるというイメージは出来たので、あとはそれをどうやって広げようかなと考えているところです。一緒にやれる仲間を探して、この業界をおもしろくしていきたいですね。

―ありがとうございました。

お話を伺ったのは…

画像4

りんご農家
水木たけるさん / Takeru Mizuki
青森県弘前市出身。「あっぷりんご園」でさまざまなりんごを栽培するなかで、りんごのジュースや加工品の開発生産に関わる。りんごジュースはお取り寄せの食品を扱うインターネットサイトで、3年連続で大賞受賞。また『世界農業ドリームプラン・プレゼンテーション 2013』では「SEFA―スモール・エクセレント・ファーマーズ・アライアンス」を発表し、共感大賞を受賞した。有限会社エイアイエム 取締役。

水木さんのfacebookhttps://www.facebook.com/tmizuki

インタビュー・編集
FOODBOX広報部O

~私たちFOODBOXについて~
下記サイト、SNSを日々更新中!ぜひご覧ください!
■ 食・農業系オンライン コミュニティ #FOODlab

Instagramでは、日々の活動や業務の様子を発信しています。
■ FOODBOX 公式 Instagram


次に読むなら、この記事!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?