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【長年腑に落ちない】オーストラリアに輸入される昆布のヨウ素含有量基準値のナゾ


昆布に含まれるヨウ素が原因で輸入が難しいオーストラリア。

「なんでヨウ素が入っているとダメなのか?」
栄養学を勉強している私にとってはかなり疑問です。

なぜなら、昆布など海藻をよく食べる日本人であれば、ヨウ素過剰が問題になることもあるが、基本海外ではそこまで海藻類を食べられていないので、逆にヨウ素不足が原因で甲状腺機能低下症などを引き起こすことが多いからです。

さらに、オーストラリアは2009年にヨウ素強化の義務化が実施されています。オーストラリア・ニュージーランド食品基準法第1条では、パンを作る際に、非ヨウ素添加塩をヨウ素添加塩に置き換えることを義務付けています。

このように、ヨウ素不足が懸念されているのにこの矛盾はなんなのか?
なぜ昆布の輸入はヨウ素によって制限されるのかは私にとってはナゾです。

「ヨウ素過剰で輸入できない」と言われると、いかにもヨウ素が体に良くないものだと勘違いしがちですが、全くそんなことはないです。

ですので、ここではヨウ素について詳しくお伝えします。

ヨウ素とは?

ヨウ素は五大栄養素であるミネラルの中の一つです。「ヨード」とも呼ばれます。
原子番号53で元素記号は「I」。英語でIodine(アイォダイン)と言います。

ヨウ素は、ビタミンAや鉄と並んで、世界三大欠乏・微量栄養素として知られています。

昆布やわかめなど海藻類に含まれているヨウ素には、甲状腺ホルモンの働きを活発化して糖質や脂肪を良く燃やすので、ダイエット効果が期待できます。またアドレナリンの分泌を抑制します。

そしてヨウ素と深い関わりがある症状の一つに、甲状腺機能低下症があります。
ヨウ素を語るうえで、甲状腺機能低下症について知っておいた方が良いので、ここからは甲状腺機能低下症について簡単に説明します。

甲状腺とは?

ちょうど喉のあたりにある蝶々のような形をした臓器です。
ここでホルモンを分泌し、エネルギーや熱を生み出し、体温を保ちます。

筋肉や臓器、細胞それぞれが最大限に働くには、甲状腺ホルモンが十分に分泌される必要があります。とても大事な器官です。

甲状腺機能低下症

一般に甲状腺機能低下症というと、橋本病を思い浮かべるかもしれませんが、潜在性の軽い甲状腺機能低下が起きている人も多いです。

この隠れ甲状腺機能低下症は、簡易チェックでわかります。

以下の項目にいくつか当てはまるのであれば可能性があります。

・疲れやすい
・いつも眠い
・冷えがある
・肌のあれ、乾燥がある
・無気力、倦怠感が強い
・浮腫みやすい
・物忘れがひどい
・抜け毛がある
・便秘がち
・体重が増え出した
・月経異常が起きやすい
・関節痛がある
・鬱っぽい
*女性に起こりやすく、更年期障害と間違われやすい。

潜在性の甲状腺機能低下症

以下特徴を挙げます。

■一般的に重度の場合でないと「甲状腺機能低下症」とは診断されない。
軽度、中程度の場合は病院で問題ないと判断されることも多い。

■甲状腺ホルモンの分泌量が少し足りないだけでも甲状腺機能低下症になりやすい。

■LDLコレステロール値が高くなることや、日本人の場合は胃腸機能が低下することもある。

■アメリカ人の5%が甲状腺機能低下症であるという報告がある。

■基礎体温が36.4℃以下の人は隠れ甲状腺機能低下症の可能性が高い。

甲状腺機能低下症の原因

・ストレスがあるとコルチゾール過多になり甲状腺がやられてしまう。

・カロリー制限、糖質制限食により、体が省エネになりホルモン分泌量が低下する。

・海外の場合は、ヨウ素欠乏が原因になることも多いが、逆に日本人はヨウ素過剰で低下することがある。(*毎日昆布だしを取って、さらにその昆布も刻んだりして食べたりしていると過剰になるかもしれません。)

・栄養不足、運動不足

栄養対策

・研究では、甲状腺機能低下症の女性は、ビタミンD欠乏または鉄欠乏と報告されているのでそれらの栄養をしっかり摂る。

・甲状腺ホルモンの正常な代謝には鉄が関わっているため、同じく鉄不足を解消する。

・甲状腺ホルモンのFT4が活性型のFT3になるときにセレンが必要となる。

・ヨウ素も重要だが、日本人は海藻類を食べるのでヨウ素が欠乏することは基本的になく、むしろ過剰に気を付ける。

このように、ヨウ素は少なくても、過剰でも甲状腺機能低下症になりえます。ただ、昆布を多く摂取する日本人は過剰はあっても、オーストラリアなどの海外でヨウ素欠乏というのは考えられにくいです。

それもあり、オーストラリアでは2009年にヨウ素強化の義務化が実施されているほどです。なのにオーストラリアでは、ヨウ素含有量が多いのが原因で昆布の輸入を禁止しています。*ヨウ素含有量の少ない昆布だけ輸入可能。

補足:ビーガンの人は注意

ビーガンの人などで大豆を多く摂取する人は、大豆に含まれる抗栄養素(毒性物質)に気を付ける必要があります。

というのも大豆には、ゴイトロゲンという甲状腺ホルモンの代謝に影響与える可能性のある成分があるからです。*大豆だけでなくアブラナ科の野菜やナッツ類など、色々なものに含まれています。

ちなみに大豆には他にも
・酵素インヒビター(酵素阻害剤)
・フィチン酸(ミネラルをキレートする)
・レクチン
などの抗栄養素(毒性物質)が含まれています。

とは言っても大豆は食べたら危ないということではありません。

・タンパク質。
・食物繊維やオリゴ糖により腸内環境を正常化する働き
・マグネシウムなどの豊富なミネラル。

などメリットもたくさんあります。ようするにビーガン食のように偏った食事の人には注意が必要ということです。

ゴイトロゲンの影響は、とくにビーガン食の人や、ヨウ素が欠乏または不足している人(海藻食べず、海藻を分解する酵素遺伝子がない欧米人に多い)
は影響を受けやすいです。

ヨウ素の上位食品ランキング

食品成分表では、ヨウ素の上位ランキングは以下となります。

(成分量 100gあたり)
1位 刻み昆布 230mg
2位 ながこんぶ 210mg
3位 まこんぶ 200mg
4位 ひじき 45mg
5位 昆布茶 26mg

ちなみに海藻類であれば、もずくは栄養価が高いだけでなく、ヨウ素の含有量が少ないため、他の海藻類に比べてミネラルの過剰摂取になりにくいです。

厚生労働省発表の「日本人の食事摂取基準」では、ヨウ素は推定平均必要量が1日0.095mg、推奨量が1日0.13mgとされているので、さきほどのヨウ素の上位食品はいかに含有量が多いのかがわかります。

例えば、
・昆布の佃煮10gで約20㎎
・ひじき5gで約1.5㎎
・わかめ2gで約0.15㎎
・海苔1枚(2g)で約0.12㎎
・昆布だし1gは約3㎎

となります。
ただ、必要量など決められていますが、日本人や欧米人の違い、消化能力、酵素遺伝子の違いなど個体差を見ることが大事です。

おまけ:昆布だしの雑学

ちなみに出汁をとる時、昆布は軟水が良いと言われるのは、硬水では昆布に含まれるたんぱく質と結合してうま味がアクとなってしまい良くないのですが、そもそも昆布が生息するのは軟水の場所にしかありません。
つまり地産地消。適した場所で適した料理が生まれるのはまさにその通りですね。

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