Food Packaging論_001        -ナッツチョコ(Meiji)-

<図1>Meiji マカダミアナッツとアーモンドチョコのPackage解剖
(筆者が購入、撮影、分析した)

 初めての投稿です。von Sigと申します。 本業は、とある化学メーカーで各種フィルムの開発を行っています。 副業で、とある大学の「Food Packaging論」という講義の非常勤講師をしています。パッケージには思想があります。普段何気なく買い、何気なく開け、何気なく捨てているパッケージ達が、本当は食べて下さった皆さんに「こんなに努力しているのに」と言いたいことを、少しでも代わりに話せたらと思い、筆をとることとしました。どうぞ宜しくお願いします。

 なお、Packagingとは包装技術的なニュアンス、パッケージとは包装そのものを表しますので、御承知置き下さい。文章中に種々考察を行っていますが、何の分析装置もない自宅で行ったものであり、100%科学的分根拠に基づいたものではないことを予め申し上げておきます。 色々な御意見をお待ち申しあげます。

 初回は個人的に大好きなMeijiさんのチョコレートです。チョコのなかでもパッケージに特徴があるナッツチョコを取り上げます。写真上がマカダミアチョコ、下がアーモンドチョコです。

【デザイン】


どちらも白に赤というfaceをしています。日本人に愛着があり、安心感と清潔感をもたらします。
【外装】
マカダミアは紙箱が露出しています。一方でアーモンドは紙箱の上にPP(ポリプロピレン)フィルムの外装が掛かっています。
【紙箱】
マカダミアは長方形の長辺にあけ口があり、親指のOne Actionでマカデミアが入っているトレイ全体が見える構造、一方アーモンドは外箱の中に内箱があり、引き出しのように長辺方向へ引張り出す構造です。

【トレイ】


マカダミアはPS(ポリスチレン)系の真空成型トレイに入っています。トレイにはキャビティというナッツ大の大きさをした「凹み」がついており、9個のナッツがそれぞれ独立したキャビティに入れられています。トレイにはトップフィルムがフランジに熱シールされています。角に指が引っ掛かる部分があり、そこを基点に剥がします。イージーピールという技術を使っており、引き始めは少し抵抗感がありますが、それを過ぎると楽にすーっと剥がせる工夫がなされています。トップフィルムは綺麗な赤インクで印刷されたOPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)若しくはOPET(二軸延伸ポリエステルフィルム)にVM-CPP(キャストポリプロピレンにアルミニウムを蒸着したフィルム)をラミネート(接着)したフィルムです。アルミニウムを使う目的は主に二つ。 一つはガスバリア(酸素や水蒸気の遮断)、もう一つは光バリア(光遮断)です。この場合はトレイがPS系でで全くガスバリア性がありませんので、アルミを使う理由は光遮断だと考えます。当然ですが、アルミフィルムは上を向いています。
一方アーモンドはトレイがありません。引き出しのような箱自体がトレイになっています。但し、紙をコルゲート加工(段ボールのような構造)した台紙が貼られていて、チョコの上下でクッション材となっています。コルゲート紙は焦げ茶色になっており、これがなにがしかの光バリアになっていると考えます。

【機能とまとめ】


さて外観はどちらも紅白の紙箱だったマカダミアとアーモンド。 しかしパッケージの構造は全くと言って良いほど違っていることを確認しました。 では、それは何故なのでしょう? Meijiさんに聞くのが早いですが、ここはvon Sigなりの解釈をしてみます。 
 二種類のチョコで決定的な違いはその形状です。アーモンドは楕円形でコロコロ転がります。マカダミアは底面が平らで、転がりません。これは食感や製造方法等の理由があると思いますが、「転がるか、転がらないか」というのはKeyになると思います。転がるが、転がっても欠けたりしづらいアーモンドはひとつひとつを固定するキャビティが不要。たださすがに多少のクッションは必要なので紙クッションを大部屋の上下に敷き詰めた。 マカダミアは底面が平らなので自由にさせておくと角が欠けやすい。欠けたチョコに商品価値は無い。従ってキャビティに入れ、絶対に欠けない構造とした。この「物理的理由」がまずスタートだったのではと。 
 次に化学的な考察を入れます。本商品で何が痛みやすいか? 原料はチョコ、アーモンド、マカダミア。 アーモンドの栄養成分を調べると、脂肪分(脂質)が多いことが分かります。脂質は「自動酸化」という酸化・分解反応から逃れることが出来ません。従って自動酸化による劣化を如何に抑えるかがPackagingの戦略となります。 一方チョコレートは糖分があり、水分活性が低く、たちまち劣化が起こる食品ではない。 構造的にもマカダミア、アーモンド共に、チョコレート層に包まれており、直接酸素や光に触れることはない。つまりチョコがバリア材となっています。 そう考えると、マカダミアだけがアルミニウムを上側に使っている理由は、「光バリア」によるナッツの酸化防止ではないかと考えます。コーティングされているチョコの厚みを詳細に調べれば、アーモンドとマカダミアの違いが一層明らかになるかも知れません。

<表1>アーモンド栄養成分表(100g中)、七訂食品成分表(2015)より
<表2>マカダミアナッツ 栄養成分表(100g中)七訂食品成分表(2015)より

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