デジタルヘルス設計のPdM経験を語り尽くす
食品科学の研究者である私ですが、最近リアルな世界のお仕事としては、むしろ食品科学の知識を活かして、ヘルスケア、特にデジタルヘルスに関する仕事をしています。
そんな中研究部門発の新規事業としてデジタルヘルスのサービスを実際に市場に出すという、かなり珍しい成果を昨年出すことができました。
しかもそれがイノベーターに贈られるとある賞(後述)を受賞することになりまして、そのおかげで2023年は私個人として様々な講演に呼ばれたり、ネット記事や雑誌、テレビに取り上げられたり、技術誌に寄稿をしたりと、Xも頑張ってますがリアルでもそれなりに頑張っております。
で、そのとある寄稿を執筆した際に筆を取り始めたら止まらなくなり、オーダーとしていただいていた文字数制限の何倍も書いてしまいまして、そのままお蔵入りも勿体無いので、noteのネタにしよう!というのが、今回の趣旨でございます。
今回はいつもと違い、私のリアルのお仕事の内容も含まれますので、初めて有料設定とさせてもらうことにしました。
デジタルヘルスに興味があって取り組んでみようと思われている方、企業内での新規事業開発に興味のある方、こいつがリアルでどんなことをしているのか気になってやまない奇特な方はぜひ読んでみてください。
まず最初に断っておきますが、当然社外秘になるようなことは書いていないのと、すでにオープンになっている内容、私の頭の中で出来上がっている成功体験の話がメインになるので、その点ご承知おきください。
デジタルヘルスとは
デジタルヘルスとは何か?
デジタルヘルスとは、人工知能(AI)やIoTを駆使して、人々の健康・ヘルスケアに寄与するものの総称です。
よくイメージされるのは、AIを活用した画像認識やリコメンド機能を有した医療機器やアプリなどでしょうか。他にもIoTのウェアラブル機器でライフログを常時測定したり、さらにはコロナ禍における遠隔治療の始まったりと多くの製品やサービスが提供され始めています。そんな最先端なイメージ以外にも、これまでもあった測定機器(体重計や血圧計など)のデータ管理を自動化するなど、アクセスを改善させたものもデジタルヘルスと言えるでしょう。その市場規模は高齢者の増加などが要因となり2016年で25兆円、2025年には33兆円に成長すると推計されています。
これらのデータ統合・標準化を目的としたPHRの利活用によるデータの一括管理やライフログといった新たなデータと関連を解析が盛んになされるようになってきました。こういったデータの解析によって、生活者の行動変容をどのように起こすことができるか、ということにも着目され始めています。
デジタルヘルスには何が必要か?
・・・とここまでお堅く論じてきていますが、少し立ち止まって考えたい。
よくビッグデータの解析だとか、AIが進歩しているとか言いますが、その前提として一つ重要なことがあります。
それは、デジタルヘルスにはそもそもデータが必要であるということです。当たり前です。
例えば、Googleは数多くの「検索」というデータを、Metaは「繋がり」というデータを、Amazonは「購買」というデータを持っています。
それは消費者に求めを乞うて入手しているのでしょうか?違いますよね。
人は検索したくてするし、繋がりたくてフォローするし、買い物したくてカートに入れます。
今世の中にあるデジタルヘルスは果たしてその構造になっているでしょうか?
デジタルヘルスには一方通行の提示ではなく、データを取得することによって可視化や解析を行うことによって、双方向かつ持続した状態を作り出すことも必要です。したがって、ユーザーがこのサービスを使い続けることが肝要です。
ユーザー中心のデジタルヘルス設計
すなわち、そもそもユーザーがデータを入力し続けなければデジタルヘルスに関するすべての取組は回り始めることはありません。そこに大きな課題があると私は考えています。
つまりデジタルヘルスにおける成功の定義は以下二点であると考えます。
・ユーザーにとって魅力的なデータであること
・ユーザーが入力し続けられるデータであること
技術の進歩は目覚ましく活用できるはずのデータの種類も増えており、それらを社会実装して起動しているサービスはどんどん増え続けています。にもかかわらず実際の行動変容に繋げられることができず、結果その後の運用や拡張まで結びつけることができない事例が多いのは、上記のいずれかの観点が抜けているから。
そこで今回はそのようなデジタルヘルス分野全体の課題を解決するため、ユーザーの行動変容に特に着目した「ユーザー中心のデジタル設計」を取り扱います。今回は研究開発者としての私自身の視点から、まずはそのコンセプトやモデルフレームワークを整理したデザイン思考について論じ、後半ではその具体事例として開発のスキームとしてのデジタル設計事例を論じます。
ここからは私の仕事に直接関わる内容も含むので、有料設定とさせてください。
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