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読まずに学ぶ! Z世代の医学学習法

医療系の学生さんは、どんな勉強してるのか?

生物学・医学の分野の一般書からテーマごとにセレクトしてレビューしているDr. Fontanaです。そもそも私が医師向けの医学書ではなく、少し噛み砕いたものを読もうと考えたのは、看護師や介護士の卵に医学の基礎を教える機会があったからでした。

イマドキの学生はスマホで学ぶ―YouTubeの人気講師とは

そのときは与えられたテキストに沿って味気ない講義をしてしまいましたが、書店で探してみると、パラメディカル教育用の書籍も昔とはすっかり様変わりしていました。今回はその変貌ぶりを紹介します。

我々還暦世代が大学生だった頃、パソコンが世の中に広がり始めました。私も当時、初期型のMacintoshを、今から考えると法外な値段で買ったものです。40歳頃からネットが日常となり、50歳くらいのときにスマホ出現。

子供たちは今30歳前後ですが、いわゆるデジタルネイティブです。そしてイマドキの20歳前後の医学生・看護学生はスマホネイティブ!生活のかなりの部分をスマホとともに生きています。

いっぽうで、不安定な社会を反映してか、医学部に限らず医療系の学校は人気があり、中高で理系科目がさっぱりダメだった、あるいは生物はまったく履修していないという看護学生も増えています……そんな、「理系科目がさっぱりダメ」という人に人気なのが「玉先生」です。

以前から、医学教育のために役立つ動画がないかなとYouTubeを探ったりしていました。そんな中で出会ったのが「玉先生」の連続講座でした。ぜひ、YouTubeで「玉先生+解剖生理学」で検索してみてください。基礎講座「玉先生の解剖生理学」にたどりつくはずです。ずらずらっと42話のアニメ版医学がでてきます。

「解剖生理学」って何?と思うかもしれません。看護学生が医学の基礎を学ぶために、医学部でいう「解剖学」と「生理学」、それに「病理学」のエッセンスをまとめたものを「解剖生理学」と呼ぶらしいです。

「WEB玉塾」を見ると、この玉先生の講座は、看護学生が苦労している「解剖生理学」をスムーズに学ぶ手助けをしたいという目的で作られたもののようです。

玉先生のYouTubeの動画を見ると、確かに、高校で生物をとらなかった人が医学の基礎知識を身につけるのにぴったりです。動画の登場人物や臓器のちょっとデフォルメされたタッチが合わない人がいるかもしれませんが、たぶんこのタッチがいまどきの看護学生にはフィットするのでしょうね。通勤・通学の電車の中で、スマホで学ぶことができるのですから、時代は変わりました。

動画と書籍のメディアミックスが「令和的」

「動画だけでは不安」という声もあったのでしょう。動画より若干詳しく、しかし読みやすさは動画なみの書籍が2016年に刊行されて売れています。それがのほほん解剖生理学(永岡書店)。この本もすばらしい。内容ももちろんですが、玉先生がなぜボランティア的にこんな講座をやっているのかという理念が書かれており、その熱血に感動です。がんばれ!玉先生

「動画だけ」あるいは「本だけ」というのではなく、動画と本をうまく組みわせてメディアミックスで勉強すれば、すごく効果がありそうです。この本の各章に、対応する動画のQRコードがついていますので、本で勉強し、QRコードを読み取ってYouTubeの動画で復習するのも簡単です。スマホで勉強する時代……これもまた令和的なのかもしれませんね。

医学マンガといえば猫山…いや茨木保先生も

書店で看護学生向けの棚を覗くと、他にもマンガやイラストを駆使した参考書がたくさんあり、昔とは様変わりしています。他の講師に尋ねると、現在、スタンダードなのは「病気がみえる」シリーズ(メディックメディア)らしいのですが、分野別で12巻(2019年10月現在)刊行されており、続刊予定もありますので、個人向けではありません。1冊にまとまっていて使いやすいのはビジュアルノート(メディックメディア)でしょう。「ビジュアルノート」のイラストはすべて医師 茨木保先生 が描いています。

茨木先生といえば「日本医事新報」(日本医事新報社)にシュールな4コママンガ「がんばれ!猫山先生」を連載中ですので、マンガを見れば「知ってる!」ひとも多いでしょう。

現役医師でこれだけたくさんのマンガやイラストを描けるのは、すごいことです。茨木先生の公式サイト「医学を描く」 を見ると、その作品の数にびっくりします。どの本も、茨木先生ならではの絶妙な語り口で、うんちくを交えながら医療の現場を描いており、医師が読んでも十分楽しめる内容になっています。

医学生の国験対策も様変わり、でも紙の教科書も捨てがたい

世の中の医学の知識が2倍になる、いわゆるダブリング・タイムは、なんとたったの70日くらいらしいですね。その増加スピードの中にあって、看護学生も医学生も教える側も教科書作る側も大変です。医師国家試験の合格率のニュースが毎年発表されますが、旧帝大のような伝統校の中にも、合格率の低下に悩んでいるところが多数。国家試験対策の授業をしている大学も多いようです。

そんな中で、毎年出版される「イヤーノート」(メディックメディア)という大部の(分厚い)本が、国試受験生のバイブルになっています。アプリ版もあるので、「イヤーノート」をスマホやiPadに入れてポリクリ(臨床実習)やベッドサイド・ティーチングへ。医学生もそんな時代です。

時代はこのように様変わりしましたが、私はネット検索に頼りきりにならず、できるだけ紙の教科書も読むようにしています。文字通りの「座右」の棚には「ハリソン内科学」や医学書院系の教科書を揃えて、改版ごとに買い替えています。

座右に置くことで意外に読むことが増え、何かと誘惑の多いネット検索よりも結局は時短になります。まあ使い分けでしょうが、ネットとは適切な距離を置くことで、より良い関係を保ちたい。なんと言っても医療の対象は生身の人間ですものね。

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