【書いてみた】短編|神様のキモチ

『お金持ちになれますように!』
『彼氏欲しい!』
『働かなくてもいい様になりたい!』

ぐぅぅぬぅぅぅぅ⋯
どいっつもこいっつも抽象的すぎな願い方しかしない⋯
もういい加減!我だって『テキトーに叶えてしんぜよーう。』に、なるぜよ!?
もっと具体的に願ってよ!言ってよ!
そうじゃないと分っかんないし!
叶えて叶えてのギブばっかりも、もうイヤぁぁぁだし!
テイク!テ・イ・ク!は!?
叶えてあげる代わりにあんた達は何を頑張るのよ!?
テイクをどうするのか!示してよぉぉぉ!

⋯ん?

『もう我慢の限界です。憎いあいつに神様の天罰を与えて下さい!憎いあいつの名前は⋯』

⋯ふーん、察するに、めちゃくちゃ酷い事あったんだよな。
じゃあ⋯そうだな⋯
お願いしてきた参拝者の方を消すか。
そうすりゃもう二度と嫌な事に遭わないだろ。

⋯ん?

『⋯失恋してツライです。でも彼を忘れられない自分もツライです⋯だったら、私も別れた元彼も幸せにして下さい⋯』

⋯ううっ、なんて、なんって健気なぁぁぁ⋯
まだ現代にもこんな子いたんだな⋯
⋯でもそうだなぁ。
あんまり健気過ぎても自分が傷つくだけだし、それを自分で分からないとダメだろうから。
まずはその元彼とやらを幸せにしとくね。
半年後に、二股かけてた本命と結婚。
でいいかな。

「⋯りがとう、ございます⋯」

ん?今のこの声は⋯あの子?

「⋯お父さんの手術が上手く行って、病気との縁が切れました。健康で過ごせる縁が結ばれて嬉しいです。感謝します。ありがとうございます⋯私の名前は⋯」

⋯ぁぁぁああ!そう!パー!フェックッ!トぉぉぉぉ!
そう!こんな感じぃぃ!
こうやって具体的にお願いして自分の名前も住所も教えてくれる子ぉぉぉぉ!

こうやって叶ったつもりでお願いしてくれてるとこも分かりやすいし!
ありがとうって感謝を伝えてるとこも好感度上がるぅ!

コーン⋯コーン⋯

ん?
あぁ、もうそんな時間なのね。

草木も眠る丑三つ時。
本来なら、良縁を願う儀式のハズなのに⋯

人間って愚かだよなぁ。
いつの間にか、鬼と契約を交わして恨み辛みを晴らす儀式になってしまったなんて⋯

でもこの人、大丈夫かな?
誰にも見られずにやらないといけないのに。
この神社、最近監視カメラ設置したの、知らないのかなぁ。

まぁ7日間はやらないといけないし、スグ見つかっちゃうだろうから。
我が直接手を下すまでもないか。

この世はすでに地獄。
生きてるだけで地獄。
悲しくて、醜い。

⋯ガランガランガランガラン!

うわっびっくりした!
ちょっと誰よこんな朝っぱらから!

「おはようございます。ご挨拶だけ失礼します。神様いつもありがとう!私の名前は⋯」

あ、あぁ、いつもランニングのついでにここに来る子ね。
こんな朝から似つかわしくないクソデカボイスで参拝すんのだけはやめてくんないかな⋯
風邪でノドつぶしてやろうか⋯
そんな大声出さなくても、今は誰もいない時間帯だし、十分聞こえてるし届いてるから、さ。

「⋯あ、風が吹いた!歓迎されてるって事でいいよね!今日もいい日になりそう!神様行ってきまーす!」

⋯あんな子達も、この世にはいる。
だからまだ、この時代捨てたもんじゃないよね。

さぁ。
今日はどんな願いが我の元へ届く?

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