見出し画像

FaY|ラオスの民話 パヤナックの物語


プロジェクト紹介

2021年11月からスタートした、Wisa(日本)&CAF(ラオス・ルアンパバーン県)の協働プロジェクト、「民話と若者」FaY(Folklore and Youth | フォークロア・アンド・ユース)。

本プロジェクト は、Wisa(Wakamono International Support Association)が2021年から開始したラオスの若者とのデジタルユースワークプロジェクトです。ラオス人の子ども・若者たちがお年寄りから聞き取った昔話を文字起こしし、その英語の翻訳をオンラインでつながった日本人の中学・高校・大学生の学生たちがお手伝いします。その後、日本語に翻訳して、イラストをつけていきます。

プロジェクトについての詳細は、こちらのActivo

今回は民話、「パヤナックの物語」を紹介します。

調査者:Laさん(17歳)

イラスト:Then Thoji

下訳翻訳:こっしー、ひとみ、ななこ、さえ、あいこ、めい、りあ、しむしむ

上訳翻訳:たいぞう

作品紹介

これは200年前から言い伝えられている、事実に基づいた物語と言われています。

昔々、人々からタオ・ロ・ロムと呼ばれている村がありました。
この村はウドンサイの都、ラーに位置していました。
ここには、10組のクムの家族が住んでいました。
彼らは畑を耕し、動物を育てて生活していました。
彼らは自然のなかで過ごすことに、とても幸せを感じていました。

ある日、村人たちは自分達の動物が毎月いなくなることに気が付きました。
例えば、今月はめんどりやアヒルたちがいなくなってしまいました。
次の月には犬や豚たちがいなくなりました。
その次の月には牛や水牛がいなくなってしまいました。
この不思議な出来事は、しばらく続きました。
「動物たちは森に迷い込んでしまったんだよ」という人もいました。

ある日、村人たちは一堂に会し、いなくなってしまった動物を見つようと
森の中へ入っていきました。

すると、彼らは川の源の近くにとても大きな巣穴があるのを見つけました。穴の周りには、鶏やアヒルの羽と大きな動物の骨がありました。彼らは鍬を使って穴を掘り返すことにしました。彼らが5メートルほど掘り進めると、大きな空間が姿を現しました。その中には大小様々な大きさの蛇が沢山いました。

彼らは、ロープを使って蛇の首を結び、一匹一匹、穴から引っ張り出そうと思いつきました。

そこにいた蛇の中には20メートルにも達しそうなものもいました。
このヘビはとても長いトサカと、きれいな赤い目を持っていました。
村人たちはその大きな蛇を村に持ち帰りましたが、
「例えこの蛇を殺しても、私たちでは食べ切れない」と思いました。 
それくらい、蛇は巨大だったのです。

そこで、彼らは小さい蛇を殺して切り、それぞれの家に配って回ることにしました。

次の日、村人たちが一度も見たことのない男性が村へ現れました。
彼は村へ入り、いくつかの家族を訪れると「蛇を食べましたか?」と尋ねました。
たいていの家族は「食べた」と答えましたが、まだ蛇を食べていない家が一軒だけありました。その家には未亡人の女性が姪と一緒に住んでいました。

すると、男性は「立ち入り禁止」という標識を作り、その未亡人の家に貼りました。

それから彼は未亡人に言いました。
「もし雷の音が聞こえても怖がらないでください」
そして彼は森の中へと入っていきました。

その夜は、空が晴れ渡っていました。
タオ・ロ・ロム村から、ある男性が恋人に会うためにその村へとやってきました。彼が村に着くと、恋人はちょうど蛇を食べ終わったところでした。

ぼんやりとした月の下で、二人は少しだまって座っていました。
村の中に柱が何本か建っていたのを見て不思議に思ったその男性は、恋人に「新しい家でも建つの?」と聞きました。
「いいえ。私たちはとても貧しいから、そんな余裕はないわ」
と彼女は答えました。

彼が見えている柱を、彼女は見ることができないようでした。
その柱が見えるのは彼だけだったのです。
蛇を食べた村人たちは皆、その柱を見ることができませんでした。

空が暗くなり、雷嵐になってきたころ、突然地震と洪水が起こりました。
実は、男性が見た柱は、あの大きな蛇たちだったのです。
その蛇は洪水をおこし、未亡人の家以外の村中の家を飲み込みました。
蛇を食べた人々の家は洪水に見舞われ、下流の家々も流されました。

男性は彼女を抱えて必死に逃げました。

しかし、蛇を食べた恋人に向かって、水はどんどん流れていきました。
男性は恋人を守ろうとしましたが、さいごには彼女の手を放してしまいました。すると洪水は彼女を飲み込み、男性は命からがら逃げ走りました。
こうして男性は生き延びることができたのです。

このお話しのすべては、ウドンサイの都、ラーのタオ・ロ・ロム村で起きたことでした。
現在、パヤナックが引き起こした洪水はウドンサイの都ラー(muang la)からパーク川(Nam Phak river)下流へそしてガー川と交じり、やがてはメナムコン川へと流れていきます。

メコンは、もともと「メー・クム」(“Me Kham”、クムの川)と呼ばれていました。「クム」はクム語で「人間」を意味します。それは、この物語で描かれているように、たくさんのクム族の人々の悲しい洪水の物語があったからなのかもしれません。
しかし、現在はたくさんの魚が採れる川としてとても有名になっています。

現在もこの物語を讃えてか、毎年10月にルアンパバーンでは恒例のライトアップフェスティバルが行われています。

ルアンパバーン 10月の灯篭祭りの様子

そこでは、たくさんの学校や村、地元企業や自治団体が、それぞれ自慢のパヤナックのカタチをした大きな紙提灯を作り、そこに火を灯してメコン川へと流すお祭りが今も開催れています。



おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?