Missing

繋がりを求めるのは、掴めなくなるのが怖いのは、記憶を保管したいからではないか。その時、その瞬間、人生の中のたった数秒を共に流れた誰かと繋がっておくことで、忘れることを阻止しようと。だから離れるのが怖い。旧友と会う度に、あの頃の感覚まだ忘れてない、って安心する。私はずっと私だと思える。過去も今もちゃんとあって私はそこに生きていて記憶は関わった全ての人々の体内に閉じ込められている。会えば蘇る、私が生きていたということを誰か一人でも覚えている限り。一体いつどのようにして現れたか、なぜ消えてしまったか、何処へ向かうのか、過去になるということは失うということか。
いつか全部懐かしくなってしまったら?
喪失の彼方へ駆け抜けて、きっと怖くない。
身体全体に張り付いた夜が皮膚を溶かして自分なんてもう形も何も無くなって何がなんだか分からなくなるような。曇り空の合間を縫って空を飛びたい。あの真っ暗な夜の上へ。太陽は一日中光っているはずなのに、何処までも続く空は毎日必ず闇の中へ誘ってくる。けれど毎日必ず光へ導いてくれる。だから眠る。光へと向かうために。怯えていた、空っぽなことがとてつもなく怖かったあの夜を越えて、たくさんの愛しさに巡り逢える。大人になる前に死にたくない。どうせ2100年くらいにはみんな死んでる。春の匂いで呼吸して、些細なことに救われる。失われているものすらも忘れていく。けれど、星の爆発音のような衝撃が起こる時、きっと全てが戻ってくる。手放したそれはきっと今も近くを漂っているから。

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