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AI時代のビジネススキル(シンギュラリティはやってくるのか?)

シンギュラリティSingularity(技術的特異点)は、人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイル博士(アメリカ)らが示した未来予測の概念です。テクノロジーの指数関数的な進化によって、コンピュータが、人間の知能を超える「超知能」を獲得するようになります。人間にはその「超知能」がどのように振る舞うか予測も制御もできない状態となり、社会や人類の生活に決定的な変化が起こるということです。ひらたく言えば、人類がコンピュータに支配される社会がやってくるということです。博士によると、「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年に技術的特異点が来る」と提唱しています。20数年後には現在から予想がつかない社会が到来するということです。

このシンギュラリティ論争には、様々な見解があります。「現場力」ちくま新書の中で中沢孝夫氏は次のように考えを述べています。以下原文を引用します。


データを集め、データを処理する「目的意識」あるいは判断モデルはAIが担うわけではない。ロボットの開発は、それを必要とする人間が発意するものである。つまり、誰が何を必要とするか、という「価値観」と「目的意識」によって決定される。ロボットがロボットをつくりたいと発意することはない。すべてのロボットが単機能であるのは、それゆえである。たとえば、「お掃除ロボ」に「今日は部屋の掃除はいいから庭の草むしりをせよ」と言っても無理である。囲碁や将棋にはルールもデータもあるが、「むしるべき雑草」というデータはない。大切なのは目的の設定なのである。~中略~
仮に「複合機」が発達しても、それが「自ら新規の開発を考える」ことはない。つまり、AIが人間を超えるシンギュラリティなどやってこないのは当たり前である。

~以上引用終わり~

そもそもAIとは、artificial intelligence(人工知能)という意味です。AIについてGoogleは、「Google と AI : 私たちの基本理念(2018年6月11日月曜日)」で次のように述べています。
AIの本質とは、学習し適応するコンピュータプログラムです。AI はすべての問題を解決することはできませんが、一方で、私たちの生活を向上させる計り知れない可能性を持っています。
ここで気になるのは「学習」という表現です。学習とは過去の事象から教訓を見出し将来に備えることです。ということはベースが過去になります。過去経験したことのない突発的な事項については対応が難しいということです。ゼロベースで画期的な物事を創造することはできません。

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AIは過去のデータを瞬時に計算することによって、社会的課題をスピーディーに解決する答えを出す素晴らしいツールです。ただ現実に起こっている出来事は、過去の経験を活かすことができない不確実性の高いものも数多く含まれています。2019年に誰が全世界的なコロナ禍を予想できたでしょうか?恐らく先進的なAIであっても予測することはできなかったのではないでしょうか。
本文は書籍やネットによる文献から情報を収集していますので、乱暴な整理かもしれませんが、文系人間の私なりに整理すると以下のようになります。
AIは大量データを分析することによって人間よりも短時間に答えを出すことができる道具である。過去データを活かすことができない突発的な将来の事柄については、的確な答えを出すことができず、人間の知能を超える超知能を獲得する事はない。すなわちシンギュラリティはこない。

とは言え、目的意識を持つことができるAIも期待されています。AIには、強いAI(汎用型人工知能)と弱いAI(特化型人工知能)があります。現在様々な分野で活躍しているのは弱いAIですが、目的意識を持つことができるのは未開発の汎用型人工知能です。レイ・カーツワイル博士は著書「The singularity is near」にて、2028年までに、汎用型AIが誕生すると述べています。一方でロボット研究者として有名なロドニー・ブルックスは、未来学者のマーティン・フォードの著書「Architects of Intelligence」のインタビューで「2200年までに、汎用型AIが50%の確率で実現される」と述べています。要するに現時点では開発の確証はないと考えられます。たとえ汎用型人工知能が誕生するとしても、何年先になるかは分かりません。そうした懸念をするよりも、人類の特権として与えられた価値観と目的意識を研ぎ澄ませて、目の前の業務に臨むことが肝要と考えます。

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近年のビックデータの収集速度や、解析速度は急速に進展しています。複雑で多様な現状を瞬時に把握することも可能になるでしょう。そうした恩恵を享受し、何をすべきか考える力に磨きをかけることが大事なことだと思います。


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