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事業戦略における未来予測

予知能力の優れた人や、タイムマシンで現在にきたひと以外は、未来を正確に予測できる人は存在しません。
ですが、完璧に予測することはできなくとも、未来に起こり得る可能性を見出すことができれば、事業に役立てることができます。

ビジネスの本質は、人々が困っていることを解決することです。現状がそのまま継続するのであれば、生活(法人であれば事業活動)を変える必要がありません。何らかの不具合が生じるときに新たな商品やサービスの必要性が生じてくるのです。
不具合は、人々(企業)を巡る環境が大きく変化したときに生じます。
ですからマーケティングは、将来の予測から始まり、その環境の中でどのような不具合が生じるのか考えていくことで、「あっこんな商品欲しかった!」、「まさに私のための商品だ!」と感じてもらえるような商品や事業の企画が可能となるのです。

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最初にお話した通り、予知能力(もしくは未来からきたひと)がない限り未来を正確に予測することはできません。ですから正確に予測を目指すというより、精度を高める、確率を高めるといった方向性で検討することが望ましい姿です。
ではどのように、予測の精度を高めていけばいいのでしょうか?
まずは将来環境の変化に与える要素として、どのようなものがあるか考えてみましょう。
まず考えられるのは、法律や規制によって環境が大きく変わってきます。世界各国は政府や中央機関の統制によって成り立っていますから、法律や規制は大きな変化をもたらします。例えば、10%への消費増税は、消費意欲を減衰させ、買い控えという生活行動を促します。

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また、技術の進展によっても生活は変化します。例えばスマホは現在世帯保有率で8割を超えていますが(令和2年通信利用動向調査、86.8%)、スマホによってキャッシュレスの購買行動という大きな環境変化をもたらしました。
このように影響を与える要素を整理して、自社に関連のある(大きな影響を及ぼす)変化要因を探索するためのフレームワークとして活用できるのが、PESTです。
Pは、「Politics」の略で、政治法律的要因です。法律・規制の強化や緩和による変化です。例えば緊急事態宣言が該当します。
Eは、「Economics」の略で、経済的要因です。好景気不景気、内外需要の増減などによる変化です。コロナ禍による消費支出の減衰などが該当します。
Sは、「Society」の略で、社会文化的要因です。人口構造的な変化や、人々のライフスタイル・生活意識の変化です。高齢化や、少子化、自宅での家族との食事習慣などが該当します。
Tは「Technology」の略で、 技術科学的要因です。インターネットの普及や新素材の開発による製造方法の変化などです。SNSによるコミュニケーションの変化が該当します。

PESTによって変化の兆しを探索していくのですが、大事なのは、フレームワークに当てはめて1つの変化に着目するのではなく、「どのような時代になるのか?」ということを複合的に想像していくということです。
生産年齢人口の減少というSocietyの問題に対して、定年延長や同一労働同一賃金などの政策(P)でバックアップしています。そしてパワースーツや組み立てロボット(T)が高齢者や女性といった非労働力人口の就業意欲を高めていると言った具合です。

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物事は複合的に進行しています。そのことをしっかりと捉えて大きな幹となる変化を掴むことです。
そう考えると変化の肝は、国内市場では生産年齢人口の減少(高齢化)による働き手の減少ということになるでしょう。

大きな幹を探す際に参考になるのは、日本政策投資銀行(DBJ)産業調査部の提唱しているDAISというフレームワークが役立ちます。

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DはDigital(デジタル)、Aは Aging(高齢社会への対応)、IはInternational(国際化)、SはSustainability(社会価値)です。
コロナ禍によってデジタル技術の一般生活への浸透は加速されました。zoomなどのビデオ会議システムや、スマホ決済のキャッシュレス化はデジタル化による変化の最たるものです。

先般の報道で中国も高齢化社会へ突入したというものがありました。高齢社会は人類全体における大きな課題と言えます。デジタル化進展によって、地理的な障壁を解消しよりグローバルなビジネス環境が整備されると考えられます。また最近の翻訳機の高度化は言語による壁も取り払われるでしょう。社会価値は、「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」という菅首相の演説もあり、脱炭素社会に様々な業界での関心を集めています。

このようなフレームワークをベースにすると、短期的な変化としてリモートワークの定着を発端とする生活様式の変化が挙げられると私は、考えています。
コロナ禍でリモートを経験したビジネスパーソンは、その業務効率の良さや、移動時間がなくなることによる生活時間の創出といったベネフィットを享受しました。アフターコロナにもリモートワークを希望することが予想されます。企業の体制整備状況にも依りますが、優秀な人材ほどリモートワークを希望することは想像に難くないでしょう。リモートワークによる生活時間の創出は、様々な変化をもたらします。衣食住に留まらず、働き方や生き方にも大きな影響を与えると考えます。

長期的には、自動運転技術の進展によるロボタクシーの普及が大きな変化のきっかけになると思います。
無人運転の自動車が普及すると、生活者は移動のための自動車運転から解放されます。スマホ経由でドライバーと顧客をマッチングさせるライドシェアのビジネスモデルをベースに、いつでもどこでも移動手段としてのタクシーを安価に利用できるという世界です。そうなると自家用車という概念がなくなり、自動車産業に大きな影響を及ぼします。働き手としてタクシーやトラックのドライバーもロボタクシーに代用される可能性があります。ただネットを検索すると、10年先になるのか、20年先になるのか様々な意見があり、不確実性は残りますが、未来を思い浮かべるとワクワクしてきます。

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ビジネスで検討すべき課題は、数学のように唯一の正解はありません。ご自身の考えを深めるのにやりやすいフレームワークを自分なりにアレンジしてみることが良いかと思います。


以上

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