見出し画像

新米CTOになってから4年、社員3人から80人を超えるまでのロールの変遷

こんにちは、ミツモアCTOの柄澤(@fmy)です。

この記事は CTOA Advent Calendar の19日目の記事です。 前日のエアークローゼット辻さんの記事では技術選定について書かれていますので、是非御覧ください。

はじめに

弊社ミツモアは、創業してからもうすぐ4年のスタートアップです。この4年でシードとシリーズAの調達を行い、社員数は3人から80を超えるまで成長しました。創業からCTOとして過ごした4年で、どのような壁にぶつかり、何をし何を考えてきたのかを今回振り返りたいと思います。これから起業する方、スタートアップ初期のエンジニアの方などにとって、少しでも参考になれば幸いです。

CTOAのアドカレ初日にDMMの松本さんが、より俯瞰的視点でレーターステージも含めた素晴らしい記事を書いてくださっています。自分が創業当時にこの記事に出会えていたらと感じますが、私は特にアーリーフェーズでCTOに求められるロールについて自身の体験談を多く交えつつ紹介できたらと思います。

自身のキャリアや価値観などについてインタビューしていただいた記事があるので、こちらもぜひ併せてご覧ください。

創業〜最初の資金調達〜半年経過

ミツモアは2017年の2月に創業をし、6月ごろにシードの調達をしたので、その間の2-4月ごろにVCやエンジェルの方々を訪問していました。ビジネスモデルを語るにしても動くモノがあるとないとでは伝わり方が大分違うだろうと考え、ひたすら初期プロダクトを開発していました。2週間ぐらいでだいたいベースとなるものが出来て、VCのオフィスで紹介したのを覚えています。

それからも半年ぐらいはひたすらコードを書いてプロダクト開発をすることに時間を使っていました。この時期はとにかく最速でプロダクトに改善を加え、いかにユーザーを獲得しグロースさせるかばかり考えており、CTOといっても実際にやっていることはエンジニア兼デザイナー兼PdMといった様子です。

またサーバ運用なども基本一人でやる必要がありました。AWSのセットアップをして最低限の監視設定を行います。私は運用の経験が少なかったので思いの外苦労しました。今現在、運用経験できる環境にいる方は多少でも良いので学んでおくと良いんじゃないかなと思います。

開発運用以外にも、手狭なオフィスにWi-Fiや電話を引いたり、PCを購入したり、様々な業務ツールを導入・管理したりもしました。いわゆる情シス的なロールもCTOがやることが多いかと思います。どこもこのフェーズでは他にやる人がいないと思われます。そしてこれはその後も意外と長く続きました。

このようにごく初期のフェーズは、技術に関することは全て、関係しないことも含めてなんでも行いつつ、多くの時間は開発にあてて、最速でプロダクト改善を進めることが求められます。

組織化〜5人程度の開発チーム

創業してすぐに「採用」という言葉が出始めるでしょう。そしてこれは会社が続く限り終わりません。特に人数が少ないスタートアップにとって一番大事なのは採用といっても過言ではないと思います。

このタイミングでのエンジニア採用は基本的にリファラルでの採用がメインになると思います。特に頼りになる知り合いに声をかけたり、大学のサークルに顔を出して後輩をインターンに誘ったりしていました。なる前にはそこまで気付かないものですが、CTOは技術力があれば良いだけではなく、広い交友関係を持ち良いエンジニアを組織に連れてくることが肝要です。もっと多くの人と親交を深めておけば、と思いつつ採用の難しさを実感しました。

採用に苦戦しつつも、学生インターンや初の正社員エンジニアなど少しずつエンジニアが増えていきました。開発組織としての第一歩を踏み出し、組織マネージメントが少しずつ始まりました。ただ組織といっても評価制度がある訳でもはっきりとした上下関係がある訳でもありません。実際にしたマネージメントと呼べるようなものは1on1ぐらいです。前職で1on1を大事にする会社に所属していたこともあり、週1回の頻度で実施していました。狭いオフィスだったので会議スペースもろくになく、外を散歩しながら1on1することが多かったです。

1on1の内容に関しては専門の本や記事に譲りますが、定期的にちゃんと実施すること自体に意味があると思っています。忙殺されるスタートアップにおいて、自由なコミュニケーションの時間を確保し、信頼関係を醸成する役割を担ってくれるはずです。

このフェーズでも依然として一番時間を使っているのは開発作業です。リードエンジニアとして開発方針の決定や設計を行いつつ、誰よりも多くコードを書き、チームを引っ張っていきます。Pull Requestのフォーマット整備、障害時の対応手順書、障害の再発防止ドキュメントのテンプレなどといった開発チーム内での取り決めも順次作成していきました。

またKGIとそれをブレークダウンしたKPIを継続的にトラックするために、BIツールのセットアップやダッシュボード作成も行いました。ミツモアではredashを利用しBigQueryなどに接続して事業進捗を可視化しています。のちに、データ分析基盤を整備していくのですが、データ分析基盤に関してはもっと早めの時期から推し進めていくべきでした。データ分析基盤は一朝一夕にできるものではなく、思いのほか改善の繰り返しです。特にミツモアは事業性質上、KPIを細かく見ていく必要があるので、事業要求に対して満足のいくところまで出来上がるのにかなり時間がかかりました。BIツールがない or 解像度が低い状態で事業を進めていくのは、暗闇で森を進むようなものです。どの事業ドメインでも早めの可視化をオススメしたいです。

PMFに至るまで

PMFに至るとよく言いますが、ミツモアにとっても3年経った頃にブレークスルーがあり、今後の方向性がはっきりとしたタイミングがありました。その前の半年から1年は、事業進捗的にもプロダクト開発的にも苦戦を強いられていた時期でした。ある程度の成長はできたもののその後成長が鈍化し、なかなかプロダクトの方向性が定まらずにもがき苦しむ時期が続きました。

このタイミングではエンジニアは7-10人程度で、複数プロジェクトが同時進行していました。コミュニケーションの量が増えて考えるべきこともどんどん増えていき、次第にCTOの自分がボトルネックになりました。うまく仕事を任せることができずにスケールしない組織になっていたと思います。事業進捗が悪い時期も重なり、任せた仕事を巻き取ってしまったり、コミュニケーションが欠落して意図しないものが出来上がったりしました。

この時期を振り返ると様々な反省点が思い浮かびます。1つ目は少人数の時の開発フローを特に定めないやり方を引きずってしまった点です。自分1人の時は全て自分で完結しますし、少人数の時でも密なコミュニケーションでカバーできていました。人が増えてやや大きめの開発をするとなった場合でも、実施すべきステップを飛ばしてプロジェクトを進めてしまい、時間を無駄にしたり方針が何度も変わったりすることが発生しました。

2つ目は忙しいことを理由に採用にかける時間を十分に取らなかった点です。副業で手伝ってくれるメンバーや業務委託のメンバーは増えるものの正社員エンジニアが増えずに、一人一人の負荷が増えて、効率が下がっていきました。

3つ目はプロダクトに対するソリッドな思想を定められずに、方針が異なる様々なことにトライしすぎた点です。様々なトライアンドエラーを繰り返したからこそ今現在の成果があるとも言えますが、迷いながら作ったプロダクトはやはり一貫性のないものでした。

組織拡大

ブレークスルーの後は、今までよりも中長期の事業計画を考えられるようになり、プロダクトのロードマップや採用計画もはっきりしていきました。1−2年先までのプロダクトプランに自信が持てるようになり、視野がひらけたと感じています。エンジニア採用も組織として行うようになっていき、エンジニアメンバーが現在では15人と増えていっています。

CTOのロールとしては、プロジェクト方針決定と推進、組織マネージメントや実装の設計を主に行い、コードを書く量はかなり減りました。方針決定と調整を行い、残りはメンバーに任せるというパターンが増えています。社内各所から相談を受けることが増えているので、どうやって各々ベストな返答をするかを意識するようになりました。エンジニア組織についても考える時間が増えて、どのようなチーム構成が良いのかなどを試行錯誤しています。コードを書く時間は減りましたが、それでも時折、差し込みタスクやバグ修正などでコードを書いてプログラミング欲を発散させています。

また会社全体のDX (Digital Transformation) についても考えるようになりました。直近の取り組みとして、会社のアジリティを高めるためにボトルネックとなりうるワークフローをエンジニアの視点で把握し、順次見直しをしはじめています。改善案は様々ですが、シンプルに外部サービスを導入し効率化する場合もあれば、内製の社内ツールやデータ基盤に修正を加えて完全自動化する場合もあります。プロダクトに密接に関係している業務の場合、プロダクト自体にフィードバックして根本から解決するパターンもあります。まだやり始めたばかりなので模索しつつですが、一定の成果が出たら追って記事にしたいと思います。

まとめ

4年を振り返り、どのような行動がうまくいったか、もう一度やり直せるならどうしたいか、といった視点で書き殴ってみました。これからも日々、昨日の自分を超えることを意識して、プロダクトの成長と事業の成功にコミットしていきたいと考えています。

現在、ミツモアは事業拡大を進めておりエンジニア・デザイナー・PdMを積極採用中です。ぜひWantedlyのリンクからカジュアル面談をしましょう。TwitterのDMでもお待ちしております。


明日の CTOA Advent Calendar は協会の理事もされているグリー CTOの藤本さんです!お楽しみに!これまでも素晴らしい記事が沢山出ていますのでぜひチェックしてみてください。