デザイン思考批判の理由を探る

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Exploring the Reasons for Design Thinking Criticism

デザイン思考は、「失敗した試み」の革命家でありバズワードだと言われてきました。これらの意見は否定的で、デザイン思考に対する批判の高まりに光を当てています。

デザイン思考

デザインコンサルティング会社であるIDEOのCEO、ティム・ブラウンは、デザイン思考を「デザイナーのツールキットから人々のニーズのまとめ上げ、さらにテクノロジーの可能性とビジネスを成功させるための条件を引き出す、イノベーションのための人間中心アプローチ」であると定義しています。
本来、デザイン思考は、デザイナーがこれまでに車から電気製品やデジタル機器を創る時や、ビジネス戦略や他の大規模システムが持つ問題に利用してきたプロセスと同じプロセスの応用です。
「デザイン思考」と検索すると、ホワイトボードに散在するポストイットの画像か、デザイン思考のプロセスに含まれる5つのステップが検索結果として表示されるでしょう。

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デザイン思考におけるアイデア創出のフェーズでは、アイデアを共有するためポストイットなどのテクニックを利用したブレインストーミングが含まれる。


・共感(Empathize) - リサーチとインタビューを通じて、ユーザーに関しての知見を得る。
・定義 (Define) - ユーザーのニーズを基にした観点を構築する。
・アイデア創出 (Ideate) - ブレインストーム(壁にポストイットを貼る)。
・プロトタイプ (Prototype) - アイデアの再現(representation)を創る。
・検証 (Test) - プロトタイプを検証する。

包括的で、探索的で、反復的なこのプロセスは、デザイナーが未来の顧客が本当に欲しいものに関して意思決定を行う手助けになることを期待されています。

新しい顧客から、自転車のパーツの再設計を要求されたときを例に挙げます。営業は、新しいデザインは新たに興味を誘発し、競合他社より優位に立つ手助けをするものだと信じています。
デザイン思考が無ければ、特定の自転車のパーツを、新しく巧妙にデザインするでしょう。
しかし、デザイン思考のプロセスを用いると、劇的に異なる結果を得られるかもしれません。デザイン思考の5つのステップは、新しくデザインされた自転車のパーツでは解決できない問題を明らかにします。
実際の問題はこうです。市場の成長している部分は、新しい自転車の複雑さに恐れを感じ、ユーザーと共に育ったシンプルで使いやすい自転車を待ち焦がれている、ということです。
解決策としては、シンプルで基本に立ちかえった自転車の市場の、満たされていないニーズに響く、まったく新しいカテゴリの自転車を造ることです。デザイン思考の価値は、より大きな問題を特定することにあり、デザイン思考の理論に関連した解決策につながります。

新しい顧客から、自転車のパーツの再設計を要求されたときを例に挙げます。多くの人は、売り上げは落ち、新しいデザインは新たに興味を誘発し、競合他社より優位に立つ手助けをするものだと信じています。
デザイン思考が無ければ、特定の自転車のパーツを、新しく巧妙にデザインするでしょう。
しかし、デザイン思考のプロセスを用いると、劇的に異なる結果を得られるかもしれません。デザイン思考の5つのステップは、新しくデザインされた自転車のパーツでは解決できない問題を明らかにします。
実際の問題はこうです。市場の成長している部分は、新しい自転車の複雑さに恐れを感じ、ユーザーと共に育ったシンプルで使いやすい自転車を待ち焦がれている、ということです。
解決策としては、シンプルで基本に立ちかえった自転車の市場の、満たされていないニーズに響く、まったく新しいカテゴリの自転車を造ることです。デザイン思考の価値は、より大きな問題を特定することにあり、デザイン思考の理論に関連した解決策につながります。

デザイン思考:略史

過去15年以上、デザイン思考は大きな問題にアプローチし、解決する方法に一変しました。それにより、形式的で意味のある感情的なつながりを発展させるために、ユーザーは共同デザイナーのような存在になります。
・1969年 - ハーバート・サイモンとロバートマッキムが、科学と工学に応用可能である、基礎的な「デザインプロセス」の一種を説明します。
・1980年 - ブライアン・ローソンがデザインを建築学で扱います。おそらく初めて、参加型で民主主義的な環境で、今まで見落とされがちであったデザイナーのアイデアを紹介します。
・1982年 - ナイジェル・クロスが、教育関係者にデザイン思考をひろめ、その結果、デザイン思考のより広く、多方面に受け入れられた見方をもたらします。
・1991年 - デザイン思考は、デザインコンサルティング会社のIDEO創業者であるデビッド・M・ケリーによって、ビジネスの問題に応用されます。デザイン思考という用語は、IDEOのマスコミ報道の成功と注目を集めたケーススタディによって、商業化されます。

残念ながら、デザイン思考は産業的なアプローチから浅薄なものへと進化してきました。 1991年以降、デザイン思考の人気も最大の弱点になります。

デザイン思考の価値

デザイン思考は、ただのメソッドではありません。組織やビジネスの構造を、根本的に変えるものです。ーデビッド・M・ケリー(IDEO創業者/スタンフォードd.school)

デザイン思考は、異なる意見が併存する思慮深い環境を創りだすことです。共感を構築し、問題を調査し、プロトタイプを作成し、テストするプロセスにより、デザイナーは知的研究に携わることができます。
デザイン思考プロセスの利点は次のとおりです。

・インクルーシブデザイン

デザイン思考のプロセスは、ブレーンストーミングセッションとグループの関与を通じて、創造的なエネルギーを解き放ちます。このアプローチは、多くの場合、「デザイナー」と「ユーザー」の間のギャップが縮まり、トップダウン思考を破壊し、多様な解決策を生み出すのに役立つ、民主的なプロセスとして説明されます。

・問題合成

デザイン思考は、論理的で直線的な思考の融合でアプローチされる、ユーザードリブンの基準を採用しています。真の問題を見つけるために、デザイナーはこれらの基準を使用して因果関係を発見します。

・多様な意見

デザイン思考のアイデア創出段階では、さまざまなバックグラウンドの人が招待され、ブレインストーミングセッションに参加します。これにより、さまざまなアイデアが支持され、創造的なプロセスが強化されます。

・低リスク
デザイン思考はリスクの低いプロセスです。唯一の投資は、一連のアイデアです。何も構築されておらず、現金とリソースの支出を必要とする解決策の開発にお金が費やされていません。

・デザイン思考批判

デザイン思考をオンラインで検索すると、2つの分岐経路が明らかになります。デザイン思考の成功が、自らの犠牲者になったことに気付くのに、時間はかかりません。しかし、なぜでしょう?

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アラン・クーパーは、デザイン思考についてTwitterで彼の考えを述べています。

いくつかの観点で、人気のあるものを攻撃することが人気または流行になります。
デザイン思考に対する一般的な議論は、構造化された直線的でクリーンなプロセスにデザインが薄弱化することです。批評家は、実際のデザインは乱雑で複雑で非直線的であり、ポストイットやほんの数回のブレインストーミングセッションから引き出されたものではないと主張します。

デザイン思考はデザインではない

Pentagramのデザインパートナーであるナターシャ・ジェンは、デザインコミュニティ内で激しい討論と長い議論を引き起こしたデザイン思考に対する批判を、酷評された動画で共有しました。

スピーチの誇張表現を抜きにすると、彼女がデザイン思考に対するいくつかの健全な議論を持ち出したことがわかります。

・デザインは人間の直感

小児用の治療室が、風変わりな色とより愉快な環境を持つべきであることを理解するには、高価で徹底的なデザイン思考プロセスが本当に必要でしょうか?彼女は、この結論に到達するためにお金を使うことはナンセンスだと主張します。

・批評の欠如

デザイン思考は批評が欠如した流行語になっています。 「批評」、つまり他人の創作物を批判することは、面倒なプロセスです。このプロセスは、デザイナーが創作物を良いかどうか、直線的ではないかを評価するのに役立ちます。彼女は、批評がなければ、デザイン思考は反知性主義であると主張します。
デザイン思考を混乱のない直線的なプロセスであり、順序にはまっていると考えると、彼女の主張がどこから生まれたのか簡単にわかります。真のデザインは直線的ではなく、クリーンでもありません。カオスの中から解決策が生まれるものです。

バズワードとしてのデザイン思考

企業はシステムやフレームワーク、流行語が大好きです。 1980年代、米国にTotal Quality Management(TQM)が導入されました。継続的な改善のアイデアに基づいたコンセプトは、製造コア全体を変えました。TQMはどこにでもありました。一晩で急成長し、経営陣は数百万ドルを費やしました。企業がTQMを実装していない場合、何かが間違っているに違いなかったでしょう。
TQMは最終的に、その人気の犠牲になりました。すぐさま、TQMに対する攻撃が流行ったのです。Forbesは、デザイン思考が同じ軌道に乗っていると仮定しています。

コーポレートチェックボックスとしてのデザイン思考

デザイン思考の批評家は、デザイン思考が集合的なチェックボックスになったと信じています。 「そのボックスにチェックマークをつけることを覚えていますか?」という考え方になると、思考は刺激的ではなくなり、創造性の火を掻き立てません。
企業は、イノベーションの新しい方法を見つけることに切迫感を持っているため、人気のあるフレームワークに飛びついて、自分たちがしていることに満足しています。しかし、それは本当に良いことなのでしょうか?
システム化されたプロセスへの設計のこの薄弱化は、攻撃に値します。デザイナーは、解決策に到達するには、思慮深く、複雑で、反復的で乱雑なプロセスが必要であることを知っています。 2日間のワークショップやTEDの講演から学ぶことはできません。共感について学ぶことは、突然共感するということではありません。

デザイン思考SWOT

古典的なマーケティングツールである SWOT (Strengths:強み, Weaknesses:弱み, Opportunities:機会, Threats:脅威)は、組織の外部環境や内部環境を評価することに使われます。このモデルは、マーケティング以外のコンセプトにも適応できます。こちらがデザイン思考の「SWOT」です。

強み

・創造的な方法で問題を解決することに役立つ
・低リスクなエクササイズ
・異なる意見をもたらす
・アイディアの創出を促進する
・インクルーシブ
・ビジネスの問題を分解することに役立つ

弱み

・直線的で構造化したプロセス
・デザインプロセスを思考を含むプロセスに変える
・集合的なチェックボックス
・批判的思考(批評)が失われる

機会

・人を集めてアイデアを創出するのに役立つ
・直線的なプロセスにある問題を解決することに役立つ
・ユーザーのニーズをより理解することに役立つ
・乱雑なプロセスを構造化する

脅威

・バズワードになったこと
・人気になったことによって攻撃を受けやすくなる
・ボックスになった際に、関連性が失われる
・正体を明確に理解できない

結論

過去50年の時を経て、デザイン思考は形になりつつあります。 90年代前半までの、コンサルティング会社IDEOが大企業の問題を​​解決するためにデザイン思考を利用し始めたときは、デザイン思考は主に科学と工学に関連していました。産業では、システム化とフレームワークが称賛されているため、デザイン思考が最新のトレンドになるのはそう長くはかかりませんでした。
ある意味で、デザインコミュニティからの批判が増えていることからもわかるように、デザイン思考はそれ自体の人気の犠牲になっています。正当なものであるか、流行に反するものと見なされるかに関わらず、古典的なデザインプロセスの乱雑で非直線的的な要素の多くが欠けているという事実が、デザイン思考を区別し際立たせています。
これら両方の観点から、いくつかの結論を検討できます。
・デザイン思考はビジネスの問題の解決に役立ちます。これは、工業デザイン、製品デザイン、デジタルデザインなどの、古典的もしくは従来のデザインの代わりになると考えるべきではありません。
・デザイン思考は、デザインに関連するプロセスの一種ですが、デザインではありません。
・デザイン思考は、問題を解決するための人間中心アプローチです。乱雑で、非直線的で、批評指向のデザインプロセスと置き換えようとはしていません。
・「デザイン思考」という用語は、「デザイン」という言葉のせいで、誤称になり得るかもしれません。問題を解決するために人々を結びつけるビジネス・エクササイズと考えるべきです。
・その人気と性質に対抗したいという願望のせいで、攻撃の犠牲者になりました。

デザイン思考は、適切に利用すれば定着します。問題の解決に役立ち、異なる意見をもたらし、さらに低リスクです。一方、古典的なデザインプロセスは、デザイン思考のプロセスとは異なります。デザイン思考のプロセスは、独立したままである必要があります。







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