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【アパレルとCG】〜品質を左右する『テクスチャ』〜

3DCGは、物体の形状を表すジオメトリデータ(メッシュ)と物体の質感や色柄などを表すマテリアルから出来ています。それはアパレルの3DCGも同じです。そして、布の微細な凹凸や細かなシワまで全てをジオメトリで作ろうとすると、そのデータ量は莫大なものになってしまいます。実用性を考えると、ジオメトリはドレープやギャザーなどの形状を表せる最低限のメッシュで構成したいところです。そこで重要になってくるのがマテリアルです。

■マテリアル

通常、3DCGで言うところのマテリアルとは、陰影の付け方を制御する『シェーダー』と、表面の色や柄などの画像である『テクスチャ』によって作られています。そしてこの『テクスチャ』と言われる画像データの中に、単純な色や柄を表すものだけでなく、物体表面の凹凸や光沢、反射率や不透明度などを疑似的に再現するものが含まれています。これが『テクスチャマップ』と呼ばれるもので、ジオメトリで実際に凹凸をつけるのではなく、「3DCGで表現する時にはこの部分はこれくらい飛び出させてね」であったり、「この部分は透明にしてね」というような指示をするデータです。
このテクスチャ及びテクスチャマップの精度が高ければ、3DCGは飛躍的に完成度が高くなります。

■CGのテクスチャ

この、精度の高いテクスチャデータの作成というのが3DCGの品質を上げることはわかっているのですが、ことアパレルでのCGにおいてはこれがなかなか曲者で、石や金属などのマテリアルアセットであればQuixcelの『Megascans』などで見ても分かる通り、その物質のサンプルテクスチャを一度取得してしまえば他でも流用できるものが多いのですが、糸から産み出される生地は、素材から糸の種類、撚り方、織り方、編み方、その他加工がそれぞれ何通りもあり、その掛け合わせは無限に近いと言えます。さらに言えば、アパレル製品は布以外の素材も使われています。そのような多彩なテクスチャを、効率よく作成し、3Dモデルのメッシュに適用することが必要になるのです。

■生地のテクスチャ

大量の生地のテクスチャデータをどれだけ効率よくストックできるかは、それぞれの生地をどれくらいよく理解しているか、どのくらい細かく観察しているかにかかっています。生地の性質や見た目がそれぞれ異なるように、最適なデータ作成方法も生地によって変わってきます。複数の機材、ソフトウェアを使い分けることも必要です。また、作成したデータをどのようなアウトプットで使うかによっても、その後のデータ処理が変わってきます。ハイエンドなPCでレンダリングするのか、スマートフォンで見るWEB上のコンテンツに使用するのか、そうした違いによって最適解は変わってくるのです。

そこに必要なさまざまな見識は、『アパレル』や『CG』といった、これまで接点がないと思われていた分野の領域を跨いだところに存在しています。複数の分野を横断し、異なる分野の技術をつなぎ合わせる柔軟な発想力が、新たなノウハウを産んでいくのです。

■ファッションと3DCGの可能性

実はこれまでも、ファッションは音楽や映像など別の分野とその裾を擦り合わせながら、カルチャーという大きな流れを作ってきました。その広がりはいまやフィジカルとバーチャルの境界をも越え、デジタルと融合しようとしています。この先のファッション、アパレルはどのように進化していくのでしょう。この変化に対応し、進化を楽しむためにも、ぜひデジタルやCGのこと、それ以外の森羅万象にも興味を持って観察し、想いを巡らせてください。きっとその先には、まだ見たことのない絶景が広がっているはずです。

文責:木内 潤一(東京ファッションテクノロジーラボ)


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