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故郷に戻って特許事務所を開業するハードル

現在、東京の特許事務所に勤務している弁理士が、故郷で開業する上でのハードルを考えてみます。

故郷だろうが縁もゆかりも無い土地だろうが、その土地で社会人として過ごしていないなら、ビジネス的には縁もゆかりも無いと言えます。

私自身、故郷は香川ですが大学から広島に出てきており、したがって開業地としてビジネス的に縁がある広島を選びました。

■地元の中高時代の友達は当てにならない

美容院や飲食店だと「試しに1回行ってみるかな」という地元の友達からのご祝儀的な来店はあると思います。

一方、特許事務所の業務では「お前、開業したの?じゃあ今度依頼するわ!」というご祝儀知財案件は湧いて出てきません。

すなわち、すぐには集客できないので、耐え忍ぶ必要があります。

現預金を十分に持っているか、東京でのクライアントがそのまま何割か付いてきてくれるかしないと、開業地で十分に集客できるまでに干上がってしまいます。

現預金がどれくらい必要かですが、全くのビジネス的未開の地での開業だと、開業費や生活費を含めると1000万円くらいはすぐに溶けそうです。

■干上がらないために

地方での開業当初、必要な売上げの半分くらいは東京からあればいいですね。そうすると現預金の溶けるスピードが半分で済みます。

今は打ち合わせの多くをオンラインで行っている事務所も少なくないと思います。このような弁理士の場合、地元に帰っても今のクライアントが引き続きオンラインで依頼してくれる可能性も高いでしょう。

私の実感として、特許事務所を探す人はもちろんGoogle検索もするのですが、自分の知人に誰か弁理士を紹介してもらいたがっているというのはひしひしと感じます。

知財に関する依頼は滅多に無いことだから依頼者も損したくないという意識が働くので、誰かに弁理士を紹介してもらい、少しでも失敗する可能性を下げたいんだと思います。

つまり、初回の面談をしても弁理士のいい/悪いを判断できないので、弁理士としての最低限のレベルや人間性をクリアするために知人の紹介が重要になってきます。

したがって、紹介者となり得る人達がたくさん存在することが重要です。ビジネス的未開の地ではこの見込み客ならぬ、見込み紹介者がいないことが痛いわけです。

■結論

以上より、故郷で開業し軌道に乗るまでに干上がらないためには、①干上がってしまわないだけの現預金、②付いてきてくれるクライアント、③開業する地域での見込み紹介者、の少なくともいずれか1つが必要です。

開業することなら今働いている場所ですることがベストなんだけど、どうしても故郷に戻って開業したいなら②は必須。もし②が無いなら地元の特許事務所へ一旦勤務するというクッションを挟むことが現実的かなと思います。

故郷で働きたいのか、それとも故郷で開業したいのか、いずれを希望するのかを自分の中ではっきりさせたほうがいいですね。

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