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コロナ禍で、医療現場に真に役立つフェイスガードを届けよう!③: PROTECT医療現場探索チーム

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【承】 医療現場探索チームの取り組み

医療資源の不足について情報収集を行い
医療現場のニーズを探索しよう!

 今回は東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラム・PROTECTプロジェクトにおいて、医療現場探索チームがプロジェクト開始からどのような役割を担い、具体的にどのような活動を行ってきたのかについてご紹介します。

■チームの発足と役割について

 医療現場探索チームは、医療現場におけるニーズを探索する目的で発足しました。東北大学病院や宮城県内の病院・行政と連絡を取り合うことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によってフェイスガードをはじめとした医療資源の不足が起きているかについて情報収集し、プロジェクト全体の活動に必要な情報を共有する役割を担います。

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 当初は広範囲でのニーズ探索を行っていくことがチームの役割でしたが、プロジェクトが進むにつれてターゲットが明確になっていき、重症治療の最前線の集中治療室(ICU)においてどのようなフェイスガードが必要なのか、ニーズ探索を行っていく役割に変わっていきました。

第1回チームミーティング(5月6日)
 第1回チームミーティング(オンライン)では、フェイスガードなどの医療資源に関するニーズ探索について話し合い、役割分担・現状の問題点とニーズ探索方法の検討・定期的なニーズ探索の必要性・現状でのニーズの洗い出し・ゴール設定について話し合いました。

■ニーズをどのように探るか?現状の問題は何か?

 我々は、実際に医療現場を訪問してのニーズ探索を行いたいと考えていましたが、新型コロナウイルスへの感染が宮城県でも発生していたため、病院での診療を行っている大学院生を除き、学生が医療機関に立ち入ることが難しい状況でした。そのため、病院の立入が可能な医療者が中心となり、まずは個人のコネクションによる聞き取りベースでのフェイスガードのニーズ調査を行っていく方針となり、ニーズ探索先の案を検討しました。

<実際に出たフェイスガード提供先の候補>
・宮城県医師会
・東北大学病院の関連病院
・仙台市内の薬局や薬剤師

■日々状況が変わる中、定期的なニーズ探索が必要だ!

 医療現場での物資の不足は、感染の拡大状況によって日々変わります。ニーズ探索は単発の調査ではなく、定期的な情報収集が必要になるという意見が出ました。

 そこで、救急医療に携わる学生から、災害時の患者情報や避難所情報管理のノウハウを各病院のニーズ調査に応用することで、人材・物資在庫の最適化ができるデータベースができないかという提案があり、東日本大震災の経験から各病院、県庁ともコネクションのある東北大学病院総合医療教育支援部の石井正先生にご相談させていただくことになりました。

■明らかになった真のニーズ

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 医療現場で勤務している先生や学生を中心にフェイスガードについてのニーズを洗い出したところ、以下の様な意見が出ました。

・現在流通している既製品のフェイスガードは、着け心地などの面で医療従事者の使用が配慮されていないため、改善の余地がある。
・使用する場所によってニーズが異なり、製品を変える必要がある

■目指すべき明確なゴールを決めよう!

第1回のチームミーティングの中で、プロジェクト全体・医療現場探索班のめざすゴール設定について話し合いました。

<プロジェクト全体のめざすゴール>
 医療従事者に対して、物資を不足させないことで医療従事者の感染リスクと精神的負担を軽減する。

<医療現場探索チームのめざすゴール>
 最も重要な現場(重症患者対応?)に物資を不足させないための方法を模索する。

■「ニーズのブレスト」チャンネルの作成と活用

 PROTECTプロジェクトはSlackを活用して情報の共有を行っています。Sla第1回チームミーティングの後、Slackのチャンネルの中に「ニーズのブレスト(ブレインストーミング)」チャンネルを作成し、得られた情報やネットで見つけた記事、実際に働いていて感じる疑問など、自由に思いついたことを書きあえる活発なブレーンストーミングの場を作成しました。

* * Slack(スラック):アメリカのSlack Technology社によって開発されたチームコミュニケーションツール。チーム内のコミュニケーションと作業を集約でき、プロジェクトマネージメントにおいて作業効率を高める有用なオンラインツール。

■ニーズ探索の開始

 医療系の学生は、医療現場の状況について関係者に聞くなどして情報収集することができました。医療系以外の学生もSNSでの医療者の発言や知人の意見をまとめました。

この時点で、

・今はフェイスガードや個人防護具(PPE)の在庫を確保できているものの、今後納入の見込みが立っていない病院があること
・本来は使い捨てのものを、アルコール消毒などで繰り返し使用するなど節約しているところがあること

などが明らかになりました。

■ニーズ探索のターゲットを絞る!

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 医療現場探索チームによる医療現場の情報収集が進み、様々な方向性について検討した結果、フェイスガードを届けるターゲットを明確にしたいという議論が起きます。

フェイスガードを使用する現場としては、
① 多人数に対し短時間使用する場所
 (ドライブスルーPCR検査場、感染疑い患者の外来診療など)
② 少人数に対し長時間使用する場所
 (重症者を受け入れている集中治療室など)
の2つの場面が考えられます。一方で、

3Dプリンターによるフェイスガード製作の利点を改めて考えるてみると
 3Dプリンターの強みは一つずつ形状を変えられることであり、医療者個人の頭の形に合わせた造形ができます。それによって、長時間使用の際に問題となる、ズレや締め付けを解消することができると考えました。このような理由で、3Dプリンターを用いたフェイスガード製作では②のような場所で働く医療者向けのフェイスガードを製作することが向いているのではないか、と意見がまとまりました。

以上を踏まえて、医療現場におけるニーズ探索のターゲットを
「重症感染者を受け入れ治療を行っている東北大学病院の集中治療室」
に絞ることになりました。

■医療現場とのつながりを生かし連携体制の構築を!

 東北大学病院のニーズ探索を行うにあたり、東北大学病院(院内各部署とやり取りをしている病院総務課、集中治療室)との連絡体制を構築が重要です。

まずは総務課に以下の内容を問い合わせました。

・フェイスガードの在庫状況と必要補充数
・既存のフェイスガードへのフィードバック

 東北大学病院全体としては、すでに総務課で各部署に必要なフェイスガードの個数についてアンケートを行っており、合計800個を東北大学内で製作し供給していました。しかし、着用感やシールド部分の反射や曇りについて様々な意見が出ていることがわかりました。

■医療現場ニーズを製作ラボへ!

 この時点で、製作ラボとの合同ミーティングを行い、すでに東北大学病院内で使用されているフェイスガードをベースとして改良し、個別化を図っていく方針の検討や、ニーズ探索をするうえで製作ラボとして聞いてほしいことの確認を行いました。

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個別化の方法について以下の2つの案が出ました。
・個人に合わせた形でオーダーメイドする
・まずはサイズを何種類か用意して使ってもらいフィードバックを得ていく

また、製作ラボとして聞いて欲しいこととしては、以下が挙げられました。
・必要な個数と緊急性
・現在配布しているフェイスガードのフィードバック
・シールド部分の透明度
・カチューシャ型フェイスガードへの要望や意見

■フィードバックセンターと連携し現場の声を課題に!

 また、院内で使用されているフェイスガードのフィードバックに関しては、医療現場探索班でも受けていたこともあり、フィードバックセンターとの連携をより綿密に行っていく必要性を感じました。

まとめ

 以上が、医療現場探索チームが、PROTECTプロジェクトで行ってきた、起承転結の「承」の取り組みです。

 世の中の様々なニーズを探索していく中で、問題となっていることと、自分たちが解決できることを話し合い、少しずつターゲットとニーズを明確にしていきました。明確になったニーズ/プロジェクトのゴールに対して、他のチームと連携しながら対応策を練っていきたいと思います。

 重症患者治療を行う医療現場にターゲットを絞った、東北大学病院集中治療室でのニーズ探索については、「転」をご覧下さい。

我々が収集した医療現場のニーズを受けた製作ラボのとりくみはこちら↓


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メンバー紹介

<学生>
・横川 裕大 (医学系研究科) リーダー
・松本 勇貴 (医学系研究科) サブリーダー 総務課・歯科技工室担当
・山本 理雄 (薬学研究科)  Slack係 総務課・歯科技工室担当
・徳増 平  (文学研究科)  連携係    総務課・歯科技工室担当
・平山 英幸 (医学系研究科) 連携係    ICU担当
<ファシリテーター教員>
・平塚真弘 (薬学研究科)
・真柳 弦 (歯学研究科)
・大田英揮 (医学系研究科)

「東北大学未来型医療創造卓越大学院プログラム」詳細は↓をクリック

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PROTECT:PROactive To Emerging COVID-19 in Takuetsu

文章作成:FM卓越プログラム2期生 平山 英幸
文責:FM卓越ファシリテーター教員 植田 琢也(プロジェクトリーダー)

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本プロジェクトにご興味のある皆様からご連絡をお待ちしております。

【ボランティア】
・本プロジェクトの活動に賛同していただける方
【プロジェクト運営者】
・新型コロナウイルス感染症関連のプロジェクトを立ち上げており、本プロジェクトと連携・協力して活動していただける方 (新型コロナウイルス感染症関連のプロジェクトではないが、本プロジェクトに賛同いただきご協力いただける方のご連絡もお待ちしております)
【資金援助】
・本プロジェクトの活動に賛同し、プロジェクト運営の資金援助をしていただける方 (企業・個人問わずご連絡お待ちしております)
【企業】
・本プロジェクトの活動に賛同していただける企業の方 (我々が現場探索・製作を行う上で得たノウハウや情報などをご提供いたします。まずはご連絡ください)

【お問合せ先】
PROTECT (PROactive To Emerging COVID-19 in Takuetsu)
E-mail: protect19_fmhc*grp.tohoku.ac.jp 
(「*」を「@」に変換してください)
代表:プロジェクトリーダー 植田琢也
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