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#130_はたしてGitHubにソースコードを上げて意味があったのか

最近、年収判定サイトに利用するために、GitHubに三井住友銀行その他の会社に関連する業務上のソースコードをアップロードして、そのコードが流出した件が話題になりました。

GitHubといえば、プログラムのソースコードなどに関するバージョン管理システムであるGit(ギット)を、ネット上で共有したり公開したりできるサービスで、米GitHub社が運営していますが、私は、システム開発に関する訴訟をやったときに初めて知りました。

そのときいろいろ調べたのですが、すごく便利そうですね。複数のヒトがそれぞれのローカルで作業しても、リモートリポジトリにプッシュしたりプルしたりして反映させることができます。そして、ブランチを作って作業を分岐できるので、後で機能をマージすることも簡単です。

で、そのGitHubですが、アカウントを作って登録するので、そのアカウントを人に教えれば、自分の作成したソースコードを公表することもできるわけです。そして、見る人が見れば、その実力がわかってしまうので、転職の際にGitHubのアカウントの記載を求めたり求められたりすることがあるとのこと。さらに、上記のとおり、そのソースコードから、年収を予測して判定してくれるサイトもあるとのこと。おもしろいですね。

ただ、冷静に考えると、これはどうなんでしょう。

というのも、このソースコードって、ある(日常言語とは異なる)言語によってできる限り一義的な意味を伝達するという点で、弁護士における契約書の条文ととても似ていると思います。

では、弁護士の面接の際に、その人の作成した契約書を見せてもらえさえすれば実力がわかるかといえば、正直そんなことはありません。

そもそも性悪説に立てば、その人がほんとうに書いたものかわかりません。また、仮にその人が書いたものであったとしても、その契約書が、その案件においてほんとうに優れた内容のものであるかは、その案件の中身がわからなければ判断できません。たとえば、M&AのSPA(Share Purchase Agreement)の表明保証に何を入れるかはDDの中身次第なので、細かくてよさげに見えても、実は的外れだったりし得るのです。

それよりもむしろ、会話の中で、ディールを回す際の勘所などが自然と出てくるようであれば、その種の案件については経験があるのだな、ということがすぐわかります。たとえば、TOBの話をしていて、「関東財務局のAさんは~だけど、Bさんは~ですよね」のようなこと。

もしこれとパラレルにいえるのであれば、ソースコードを上げたところで、その人の実力について、ほんとうの意味で深いところまでは判断できないのではないでしょうか。SEさんたちの転職市場で、GitHubがどこまで重視されているのかはよくわからないのですが、リスクを冒してまで(というか、とってはいけないリスクと思いますが)コードを流出させるほどの意味はないのではないかな、と思います。

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