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マリーを見に行って、フジタが気になって、野見山がどんっと

  2023.12.9-2024.3.3で開催中のアーティゾン美術館「マリー・ローランサン展」。本当はローランサンの画像でトップを飾るべきですが、最後にあったこの藤田嗣治の鉛筆画がお気に入りになってしまったので・・・目が、口ほどに物を言うのはこれ!鉛筆だけでこんな繊細な表現が・・・次の藤田の絵も、少女の何も映していないような目と、逆に物言いたげな人形と猫の視線が好きです。

藤田嗣治「人形を抱く少女」

  と、いうことで全然違うところからスタートしましたが、今回はとてもローランサンらしい絵がたくさん揃っていて、柔らかい雰囲気の展覧会でした。まずは、自画像を・・・

「帽子をかぶった自画像」

  そして、今回私がいいな、と思ったのは、「椿姫」の小品の水彩シリーズ。悲劇のヒロインとローランサンの絵のタッチがマッチしていました。

「椿姫」より
「椿姫」より
「椿姫」より
「椿姫」より

  ローランサン。日本では好まれるのでしょうか、2023年2-4月にはBunkamuraでもやっていましたね。

  同じローランサンでも、テーマの切り方が違って面白いです。Bunkamuraは、「マリー・ローランサンとモード」ということで、同時代のココ・シャネルを絡ませていました。Bunkamuraらしい構成。確かにシャネルの締め付けのない緩やかなラインのモードの雰囲気は、ローランサンが描く女性にも表されています。言われて気付く同時代性。

画家として、女性として、時代に煌めいた寵児にして先駆者、マリー・ローランサンを再発見する

「マリー・ローランサンとモード」パンフレットより

  一方、アーティゾン美術館のはもう少し正統派。「ローランサンの活動を多角的に紹介」とあり、初期から晩年までが揃っています。でもやはりタイトルに「マリー・ローランサンー時代をうつす眼」ということで、あの時代の雰囲気を醸し出しているんだろうな、と。

ピンク・ブルー・グレーのザ・ ローランサン、という感じの「二人の少女」
こちらは晩年でイエローと濃いめの赤も使えるようになったと語っている「三人の若い女」。
たぶん「五人の奏者」。こちらも晩年の作品でイエローが入っている。

  こんな有名な画家でも、自分で「使いこなせている」という色に限りがあり、生涯をかけて新たなことに挑戦している、ということにちょっと感動。ピカソみたいに一生の間に全く違うスタイルを何度も会得する人もいますが、それぞれが自分なりの挑戦と変革を繰り返しているのかー(解説してもらわないとローランサンの挑戦はちょっと想定外でわからなかった!)

  ところで、ローランサンと言えば、詩人アポリネールとの恋愛が彼の残した詩とセットで有名ですが、そのアポリネールを描いた絵は、国立西洋美術館で開催中の「キュビズム展」でローランサンがピカソ達の影響を受けて挑戦したキュビズムとして展示されていました。うーん、惜しい!偶然両方見られたから良いが、それ、こっちじゃないか?とつい、思ってしまった。アポリネールの話題はローランサンの生涯に必須・・・

「アポリネールとその友人たち」真ん中がアポリネール。その右がピカソ。一番右がローランサン。中央に小さくあるのが、アポリネールも詩でうたったミラボー橋。

  そして、ローランサンはキュビズムが合わなかったようで・・・ご本人的にも、納得いく作品ができなかったようです。うん、そっちにいかないで大正解だと思います・・・

  アーティゾン美術館は、企画展にプラスして、コレクションを使った企画も同時に開催していますが、今回は野見山暁治でした。2023年に102歳で亡くなられたということで、TV特集を見て興味があったので、ありがたく鑑賞しました。生前のインタビューで、「野見山暁治美術館は作らない。それよりも、色んな美術館にあれば、誰もがどこかで見られる。」として、ご自身の作品を日本中の美術館に寄贈していたのが印象的でした。

野見山暁治「振り返るな」。ものすごいエネルギーの籠もった作品!2019年となっていたから90歳後半でこの大作(すごい大きいです)描いちゃうのか!タイトルも強い!
「タヒチ」1974年の作品。若い頃のは画風がちょっと違う?

タヒチというタイトル、なんでつけたんだろうか。地名をつけるのは稀なんです。何か魔性のものが覗き込んでいるような。

野見山暁治、2023年5月9非、糸島のアトリエにて

  「振り返るな」は、パンフレットによると東京メトロ青山一丁目駅に設置されたステンドグラス壁画の制作にあたり描かれた3点のうちの1点だそうです。この間、青山一丁目駅で乗り換えしたばっかりなのに全く気付かず・・・次回探してみよう。よし。

  締め括りはコレクション展にあった藤田嗣治で・・・この藤田の作品は初めて見られたので、藤田ファンとしてはとてもラッキーでした。

この猫、絶品。コレクション展にあった「猫のいる静物」。うーん、小鳥と猫がいることですでに静物画ではないような・・・?でもいいんです。


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