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この絵を見ると、「ポーの一族」が浮かんでくる(のは私だけ?)

  東京上野の国立西洋美術館。開催中のキュビズム展もとっても良かったのですが、行く機会があったら常設展も楽しんでもらいたい!

  ここは常設展の展示が安定していて(変化が少ないのが良いのか悪いのか意見は分かれそう)、企画展で頭がふやふやと一杯になったら、好きな絵だけをチラ見していきます。表題のはその1枚でジョン・エヴァレット・ミレイ「狼の巣穴」。子供達が、グランドピアノの下を巣穴に見立てて遊んでいる絵。真ん中の少年がイギリスの小公子という感じでお気に入り。

  ミレイは「オフェーリア」がとっても有名ですよね。一度日本に来て感動したので、ロンドンのテート・ブリテンまで見に行ったら貸し出し中だった・・・その後に日本でまた見たという、本場では見られないというナゾの巡り合わせ。ということで、日本で見られるミレイの絵の中ではこの絵がお気に入り。ここには「あひるの子」という超美少女の絵もあります。

  次はルーベンスの「眠る二人の子供」。ルーベンスというと、フランダースの犬でネロがどうしても見たかった絵(あまりに可哀想で私は苦手な話なんですが)を描いた人、ということで、ドラマティックな絵をイメージしますが、この絵はずいぶん違う・・・と思ったら習作らしい。でも子供のほっぺたのふくふくとした感じが幸せな気持ちにしてくれます。

ルーベンス「眠る二人の子供」右はクララ、左はフィリップという画家の姪っ子と甥っ子

 そして、この絵。狐の悲痛な叫び声が聞こえそう・・・辛いが凄い。生き物の命の叫びがこもっている感じ。クールベは海の「波」の連作が有名(ここにも1枚ある)ですが、どの絵も荒々しい、生々しいものがあります。

ギュスターヴ・クールベ「罠にかかった狐」
ギュスターヴ・クールベ「波」

  2021年にパナソニック汐留美術館で「クールベと海」展があったのですが、その時パンフレットに書かれたクールベの言葉がとても印象的で、未知のものだった海というものを見た素直な気持ちをよく表していました。

ついに海を見た。地平線のない海を。それはとても奇妙なものであった。

「クールベと海」展

  モネも色々あります。睡蓮やポプラなどメジャーなものも揃っていますが、私はこの雪景色も好きです。素人写真では色が出ませんが、微かにモーブ色がかかったような白い雪景色はフランスの冬っぽくて好きな絵です。

クロード・モネ「雪のアルジャントゥイユ」
モネの王道。初夏の風が吹きそうな・・・清々しい

  紹介したいものは色々ありますが、最後にこの不気味で可笑しな絵を。隅々まで見て欲しい。もう気になるアイテムが画面にいっぱい・・・

「聖アントニウスの誘惑」
左上の変な飛んでいるヤツの拡大。コウモリに混ざって妙なものが闘っている
人間かと思ったらゴブリン?小鬼?爬虫類?悪魔も混ざって禍々しいこと限りなし・・・
真ん中右側。とにかくヘンなもの大集合。

  宗教画って敬虔で崇高なものがある一方で、こういう戒め?的な世俗の醜悪さを盛り込んだような絵があって面白い。しかし聖アントニウスさん、こんなものに囲まれて信仰を試されて大変・・・説明文に「角のはえた遣り手婆」とありますが、西洋絵画にはなぜか時々出てくる「遣り手婆」。そんなによくいるものだったんだろうか?

鳥、魚、人体、動物の骨などを自由に合成して創造された魔物たちに取り囲まれた聖人は、白い服で着飾った女性を緊張の面持ちで見つめている。この女性は愛欲の象徴であり、聖人を誘惑しようとグラスを差し出しているのである。よく見ると彼女の足は鳥の鉤爪をしている。聖人の左背後では、悪魔の化身である角のはえた遣り手婆が彼女を指さしている。

国立西洋美術館解説文より

  2024年1月28日まで開催しているキュビズム展を見に行くことがあったら、常設展にも寄って是非、この絵を探してみてください(たまたま下げられていたらごめんなさい・・・)。


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